JRRCマガジンNo.387 中国著作権法及び判例の解説1 中国の著作権保護状況の概要

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JRRCマガジン  No.387 2024/9/26
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◆今回の内容
【1】方先生の中国著作権法及び判例の解説
【2】最終回【10/2開催】官公庁向け著作権セミナー開催のご案内
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皆さま、こんにちは。

今日9月26日は「台風襲来の日」
ある統計によると、9月26日は1年のうちで台風襲来回数が多い日のひとつとされており、台風の影響で毎回大きな被害が出ていることから警戒を呼びかける意味も込めて記念日が制定されております。

今回から中国著作権法の解説をしていただく、中国弁護士、中国弁理士及び方信グローバル知財サービス株式会社代表である方 喜玲先生をご紹介します。方先生は、日中の著作権法、特許法その他の知的財産法に精通しておられ、自社の業務を通じて、日中における知財保護の支援業務を行っておられます。中国著作権法自体は難解な法律ではないようですが、実務に精通しておられる方先生には実務面からの考察についても有意義な見解を書いていただけるものと期待しております。

◆◇◆【1】方先生の中国著作権法及び判例の解説━━━
 中国の著作権保護状況の概要
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                                 方 喜玲

一、中国における著作権侵害行為に対する法的責任について、概要を説明します。
中国において、「著作権法」に基づく著作権侵害に対する法的責任は、民事、行政、刑事の三種類に分類されます。
1.民事責任
 侵害者は、「著作権法」第52条および第53条に基づき、侵害行為の停止、影響の除去、謝罪、および損害賠償という責任が求められます。これらの責任は単独または組み合わせて適用され得ます。影響の除去や謝罪は、主に著作者の人格権が侵害された場合に適用され、侵害の影響範囲に応じた措置が求められます。

2.行政責任(行政による著作権保護)
 「著作権法」第53条に規定する侵害行為について、公共の利益が損なわれた場合、侵害者には民事責任に加えて、警告や罰金、違法所得の没収、侵害品や関連機材の処分などの行政処分が課されることがあります。

 また、以下のような場合にも行政処分が課されることがあります。
・「コンピュータソフトウェアの保護に関する規則」第24条に列挙された侵害行為が行われ、かつ公共の利益が損なわれた場合;
・「情報ネットワーク伝播権の保護に関する規則」第18条に列挙された侵害行為が行われ、かつ公共の利益が損なわれた場合;
・「情報ネットワーク伝播権の保護に関する規則」第19条および第25条に列挙された侵害行為が行われた場合;
・「インターネット著作権行政保護弁法」において、インターネット情報サービス提供者が、インターネットを通じて他人の著作権を侵害する行為を行ったことを知りながら、または知らないが、著作権者から通知を受けた後、当該コンテンツを削除する措置を取らなった場合であって、かつ当該行為により公共の利益が損なわれた場合;
・「著作権集団管理条例」第41条および第44条に規定する行政処罰の対象となる行為が行われた場合。

3.刑事責任
 まず、「著作権法」第53条によりますと、侵害者が同条に規定する著作権侵害行為を行った場合、民事責任のほか、公共の利益を害した場合には行政責任が問われ、犯罪を構成する場合には、法律に基づいて刑事責任を問われます。

 次に、罪刑法定主義の原則により、中国の「刑法」では、著作権に関連する3つの犯罪、すなわち「著作権を侵害する犯罪」、「侵害複製物を販売する犯罪」、「単位(注:会社や政府関連機関等のことをいう。以下同じ。)で行う知的財産権を侵害する犯罪」が規定されています(中華人民共和国刑法第217条、第218条、第220条)。

「著作権を侵害する犯罪」は、営利を目的として著作権を侵害する行為が行われ、違法所得の額が比較的大きい場合、またはその他の重大な事情がある場合、3年以下の有期懲役および罰金の併科、 または罰金が科されます。違法所得の額が巨額である場合、またはその他の特に重大な事情がある場合、3年以上10年以下の有期懲役に処せられ、かつ罰金を科されます。

「侵害複製物を販売する犯罪」は、第217条
(「著作権を侵害する犯罪」)に規定した侵害複製物であることを知りながら、営利を目的として侵害複製物を販売する行為をいい、違法所得が巨額である場合、またはその他の重大な事情がある場合、5年以下の有期懲役および罰金の併科、 または罰金が科されます。

「単位で行う知的財産権を侵害する犯罪」は、単位が第213条から第219条までのいずれかの知的財産権を侵害する犯罪を犯した場合、単位に罰金刑を科し、かつ知的財産権の侵害罪に関連する各条の規定に従って責任者及びその他の直接の責任者の処罰が問われます。

二、中国の著作権保護データについて、司法および行政の両面おいて「2023年中国知的財産権保護状況」から抜粋した統計データを説明します。

1.司法による著作権保護データ
2023年における中国の裁判所で取り扱われた知的財産権民事第一審案件は462,176件のうち、著作権に関する案件は251,687件で、同比1.57%減となりました。
著作権関係の行政裁判としては、知的財産権行政第一審新受20,583件のうち、著作権案件は11件で、前年同期比减少1件となります。
刑事裁判としては、知的財産権刑事第一審新受7,335件のうち、著作権を侵害する刑事案件627件、同比106.25%増となりました。

2、行政による著作権保護データ
2023年における中国の各著作権行政執行部門は、現物市場の店舗を72万回検査し、著作権侵害・海賊版の4,745件を調査し、231件を司法機関に移送し、侵害金額が26億6,400万人民元に達しました。また、2,390件の侵害・海賊版ウェブサイトが閉鎖され、244万以上の侵害・海賊版リンクが削除されました。
 標準著作権についても、 オンライン電子商取引プラットフォームの標準侵害および海賊版の監視を実施し、一年を通じて、侵害の疑いのあるウェブサイト5,743件を監視し、侵害リンク323,467件を削除し、標準侵害・海賊版の疑いのある侵害文書3,000件以上を検出し、削除しました。

三、おわりに
中国は、2010年以降から知的財産権紛争が徐々に増加しています。そのうち、半分以上が著作権に関する紛争となり、2020年からは毎年25万件以上の著作権紛争が行われています。このような紛争規模は、権利者により保護制度が活用され、著作権の保護や侵害の抑止に役に立っていますが、裁判所や行政執行機関への負担も大きくなり、著作権保護の効率にも影響を及ぼしているように思われます。

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【2】最終回【10/2開催】官公庁向け著作権セミナー開催のご案内
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日本複製権センターは主に官公庁の方を対象とした「官公庁向け著作権セミナー」を開催してまいりましたが、今回が最終回となります。第8回のテーマは『新聞等の著作権保護と著作物の適法利用』です。
著作権のより一層の保護を図るために、著作権の基礎知識の普及と複製を行う際に必要となる契約についてご案内させていただきます。
また、一般的な著作権(初級レベル)についての解説や著作物の正しい利用方法についてより詳しくご説明いたします。
なお、本セミナーは官公庁の方に限らずどなた様でもご参加いただけますので、多くの皆様のご応募をお待ちしております。

~開催要項~
日 時 :2024年10月2日(水) 14:00~16:00
会 場 :オンライン (Zoom)
参加費 :無料
主 催 :公益社団法人日本複製権センター
参加協力:西日本新聞社/佐賀新聞社/長崎新聞社/熊本日日新聞社/大分合同新聞社/宮崎日日新聞社/南日本新聞社/沖縄タイムス社/琉球新報社 

~申込受付期間~
2024年9月5日12:00 ~ 10月2日15:30
当選につき1機器での受講となります。複数機器で受講希望される方は、それぞれお申込みください。

お申込サイト→https://jrrc.or.jp/seminar/

~プログラム~
・トピックス1 新聞等の著作権保護と著作物の適法利用
・トピックス2 人が作る新聞 ~取材から宅配・配信まで 記事が読者に届く過程~
・トピックス3 新聞記事を巡る著作権侵害の事例
・トピックス4 著作物の複製利用の許諾取得について

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