JRRCマガジンNo.385 コンプライアンス・企業倫理を考える4 企業倫理実践のための行動規範

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JRRCマガジン  No.385 2024/9/12
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◆今回の内容
【1】板東氏のコンプライアンス・企業倫理を考える
【2】最終回【10/2開催】官公庁向け著作権セミナー開催のご案内
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皆さま、こんにちは。

今日9月12日は「水路記念日」
明治4年7月28日、海上保安庁水路部の前身にあたる兵部省・海軍部水路局が設置されたことにちなんで、運輸省水路部(現:海洋情報部)が記念日に制定したそうです。

さて、今回は板東氏の「コンプライアンス・企業倫理を考える」です。

板東氏の前回までの記事は下記からご覧いただけます。
https://jrrc.or.jp/category/bando/

◆◇◆【1】板東氏のコンプライアンス・企業倫理を考える━━━
④企業倫理実践のための行動規範
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                              日本赤十字社常任理事/雪印メグミルク株式会社社外取締役 板東久美子

 前回は、コンプライアンス・企業倫理を推進する体制づくりのポイントについて取り上げました。そのうち、内部通報制度については、次回以降に2回にわたり詳しく取り上げたいと思います。
 むしろ前回の仕組づくりの前に取り上げるべきであったと思いますが、企業倫理の実践のためには、まさに体幹とも言うべき企業行動基準・指針といった「行動規範」が極めて重要ですので、今回はその行動規範について考えたいと思います。体制づくりや施策もまさにこの行動規範を徹底し、実践していくための手段ということになります。
 企業倫理の実践をはじめとし、企業の行動規範を定める上で参考になる重要な原則はいくつかあります。経済団体が定める代表的なものとしては、例えば、日本経済団体連合会は、会員企業に求める行動原則として定める「企業行動憲章」があります。この「企業行動憲章」は、企業倫理の観点からだけの行動原則を定めるものではありませんが、その相当部分は、企業倫理に広く関わっています。この「企業行動憲章」は、2017年の改訂で、持続可能な社会Society 5.0 for SDGsの実現のための企業の役割を強く打ち出し、2024年の改訂でサプライチェーン全体の共存共栄と適正な取引を強化しています。また、その実践のための「企業行動憲章 実行の手引き」も2022年に最近の大きな国内外の変化を踏まえた改訂を行い、サステナブルな資本主義の確立を目指した「社会性の視座に立脚した企業活動の実践」をさらに強化し、本年の改訂では、取引の適正化に関わる項目を強化しています。
企業行動憲章の柱は、①持続可能な経済成長と社会課題の解決 ②公正な事業慣行 ③公正な情報開示、ステークホルダーとの建設的な対話イノベーション ④人権の尊重 ⑤消費者・顧客との信頼関係 ⑥働き方の改革、職場環境の充実 ⑦環境問題への取組み ⑧社会参画と発展への貢献 ⑨危機管理への徹底 となっており、最後に、⑩経営トップの役割と本憲章の徹底を強調しています。
 また、東京商工会議所も、創立者渋沢栄一の目指した「道徳経済合一」を会員企業の企業行動原理として受け継ぐために、「企業行動規範」を定めています。項目としては、この①法令の遵守 ②人権の尊重 ③環境への対応 ④従業員の就業環境整備 ⑤顧客・消費者からの信頼獲得 ⑥取引先との相互発展 ⑦地域との共存 ⑧出資者・資金提供者の理解と共存 ⑨政治・行政との健全な関係 ⑩反社会勢力への対処 を掲げていますが、「人権の尊重」の項目は最近の改定で新設されたものです。
 多くの企業が、このような経済団体の定める行動規範などを参考として、企業行動の基本となる憲章や綱領を定めたり、さらに役職員の日常的な具体的実践のために基準・指針を定めたりしていますが、当然ながら、各企業の理念や事業領域、特色を踏まえたものとなっています。具体例をお示しする方がご理解いただきやすいと思いますので、消費者庁の推進する「消費者志向経営」の自主宣言をしている企業の中からいくつかの例をご紹介させていただきたいと思います。
 例えば、花王(株)は、企業としての行動規範を定めた「花王ビジネスコンダクトガイドライン」を策定し、さらに各部門の日常業務に即して各分野の行動規範を定めています。このガイドラインでは、まず「基本精神」を掲げ、その中で、「倫理に基づく行動」と「法令遵守」を基本におき、良識ある公正な行動により、誠実で清潔な「徳のある企業」として全てのステークホルダーから支持されること、絶対にガイドラインに反して利益追求をしないこと、法令・ガイドライン・倫理などに反する行為は見逃さないことなどを定めています。そして、行動規範として、商品・サービスの安全性と高い品質の確保、環境と安全への十分な配慮、公正・誠実な取引、社員の多様性と人権の尊重、公正・透明・清潔な事業姿勢、情報と資産の適正な管理などを掲げ、最後に経営者・管理者は自ら率先して遵守し模範となるとともに、メンバーへの周知徹底の責務を徹底させることを求めています。
 また、パナソニックホールディングス(株)では、「パナソニックグループ コンプライアンス行動基準」により、コンプライアンスを実践しながら企業活動を展開していく上で企業・社員が果たすべき約束を定めています。注目されるのは、最初に「私たちの基本的責任」として、「全ての社員の基本的責任」と「全ての責任者の追加的責任」を明らかにするとともに、「私たちの職場」「私たちの経営資源」「私たちの取引活動」「企業の社会的責任」といった各項目にも、「パナソニックの約束」「一人ひとりの約束」というように、企業として、社員としてとるべき行動がそれぞれ明確に定められていることです。
 企業のグローバル展開が進む中、グローバルを視野において行動基準を定めることはますます必要になっています。例えばニッポンハムグループでは、世界中のグループ役職員の行動の在り方を示す「ニッポンハムグループグローバル行動基準」を定め、それに基づき日本における具体的な行動の在り方を示す「ニッポンハムグループ行動基準」を定めています。
 最後の例として、私が社外取締役を務めていることから今まで度々ご紹介させていただいている雪印メグミルクグループにも少し触れさせていただきたいと思います。「雪印メグミルクグループ 企業行動憲章」に基づき、全ての役職員が日々の業務を行う際に守るべき基準として「雪印メグミルク行動基準」を定めています。その行動基準の項目は経団連の行動憲章と共通する部分も多いのですが、やはり企業としての独自性・特色が出ています。例えば、「消費者との信頼関係の構築」は位置づけも高く、「消費者の権利」と「事業者の責務」の認識をベースとすることを謳い、安全で良質な商品の提供、適切な情報の提供、消費者の声の傾聴と誠実な対応、商品事故への迅速かつ適切な対応等を盛り込んでいます。
「公正な事業活動」についても、法令・社会規範の遵守等の一般的なもののみならず、20年前の事件を二度と起こさないとの決意の下で、「食の責任を強く認識し、果たしていくことを誓う日の活動」の継続などを盛り込んでいることが特色です。そして、行動基準の実効性の担保についても力点を置いており、1)行動基準を常に確認し、行動に迷えば行動基準に立ち戻って判断すること、2)役員は実効性ある社内体制の確立と行動基準の徹底へ取組むこと、3)基準を逸脱した場合は、見過ごさず、問題解決に向け行動することが定められています。
 それでは、JRRCが関係する著作権を含む知的財産の保護に関しては、このような行動規範の中でどのように取り上げられているのでしょうか。経団連の「企業行動憲章」自体においては、知的財産という言葉はなく、第一の「持続可能な経済成長と社会課題の解決」の柱において、「イノベーションを通じて社会に有用で安全な商品・サービスを開発、提供し、」と記述されるのみですが、「企業行動憲章 実行の手引き」においては、この柱に関し、「知的財産権の保護の重要性を浸透させると共に、知的財産を適切に活用する」という項目を立て、これについては、知的財産保護の社内に適切な仕組を構築するとともに、「他者の知的財産を不当に侵害しないよう関連法令・規則などの遵守を徹底する」ことを記述しています。具体的なアクションの例としても、他者の知的財産権を不当に侵害しないような社内教育の徹底等を挙げています。各社の行動規範を見ると、この知的財産については、自らの知的財産の保護・活用についてだけ定めているものもしばしば見受けられます。
 しかし、他者の知的財産の保護も重要であることを改めて明確にし、権利侵害リスクを避けていくことは重要です。知的財産保護についても双方向で意識されているか、関係する企業・組織の行動規範をこの機会にご確認いただければ幸いです。

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【2】最終回【10/2開催】官公庁向け著作権セミナー開催のご案内
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日本複製権センターは主に官公庁の方を対象とした「官公庁向け著作権セミナー」を開催してまいりましたが、今回が最終回となります。第8回のテーマは『新聞等の著作権保護と著作物の適法利用』です。
著作権のより一層の保護を図るために、著作権の基礎知識の普及と複製を行う際に必要となる契約についてご案内させていただきます。
また、一般的な著作権(初級レベル)についての解説や著作物の正しい利用方法についてより詳しくご説明いたします。
なお、本セミナーは官公庁の方に限らずどなた様でもご参加いただけますので、多くの皆様のご応募をお待ちしております。

~開催要項~
日 時 :2024年10月2日(水) 14:00~16:00
会 場 :オンライン (Zoom)
参加費 :無料
主 催 :公益社団法人日本複製権センター
参加協力:西日本新聞社/佐賀新聞社/長崎新聞社/熊本日日新聞社/大分合同新聞社/宮崎日日新聞社/南日本新聞社/沖縄タイムス社/琉球新報社 

~申込受付期間~
2024年9月5日12:00 ~ 10月2日15:30
当選につき1機器での受講となります。複数機器で受講希望される方は、それぞれお申込みください。

お申込サイト→https://jrrc.or.jp/seminar/

~プログラム~
・トピックス1 新聞等の著作権保護と著作物の適法利用
・トピックス2 人が作る新聞 ~取材から宅配・配信まで 記事が読者に届く過程~
・トピックス3 新聞記事を巡る著作権侵害の事例
・トピックス4 著作物の複製利用の許諾取得について

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