JRRCマガジンNo.381 コンプライアンス・企業倫理を考える3 企業倫理推進システム作りの7つのポイント

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JRRCマガジン  No.381 2024/8/8
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◆今回の内容
【1】板東氏のコンプライアンス・企業倫理を考える
【2】受付中! 無料オンライン著作権セミナー
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皆さま、こんにちは。

今日8月8日は「世界猫の日」
世界最大の動物愛護団体「国際動物福祉基金IFAW」と世界の愛猫家によって国際デーのひとつとして8月8日に記念日が設けられたそうです。

さて、今回は板東氏の「コンプライアンス・企業倫理を考える」です。

板東氏の前回までの記事は下記からご覧いただけます。
https://jrrc.or.jp/category/bando/

*次回8/15(木)は休載させていただきます。

◆◇◆【1】板東氏のコンプライアンス・企業倫理を考える━━━
③企業倫理推進システム作りの7つのポイント
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                       日本赤十字社常任理事/雪印メグミルク株式会社社外取締役 板東久美子

 今回は、コンプライアンス・企業倫理を重視し、社会的信頼を得ることができる企業であり続けるためのシステム構築において押さえるべきポイントは何かを考えてみたいと思います。この文章を書いている時にも小林製薬の紅麹問題に関する事実検証委員会の報告書の件が報じられておりますが、消費者の安全を最優先で考えるという企業倫理の重要性、企業のサステナビリティの基盤としての重要性について改めて考えずにはいられません。
 企業倫理の推進のための仕組づくりに関して、7つほど、重要なポイントを挙げたいと思います。
 第一は、トップが企業のコンプライアンス・企業倫理を重視し、社会的な責任を強く意識していることは重要であり、そのことを社内外に明確に宣言することです。
 単に法令違反をしないというだけでなく、倫理や社会的信頼を重んじる判断・行動をする必要性は上にいくほど大きく、その影響もまた多大なものとなります。トップのインテグリティに関する姿勢は、企業風土・文化にストレートに反映されます。小林製薬の紅麹問題においても、死亡事例が何件も報告されていたのに関わらず、行政への報告が行われなかったことについて、消費者の安全を優先しなかったトップの経営姿勢・判断軸が、組織全体の行動を狂わせていったことがうかがえます。
 第二は、全社的・全組織的にコンプライアンス・企業倫理の実践を推進するための委員会などの体制の構築です。
 初回では私が社外取締役及び企業倫理委員会委員長を務める雪印メグミルク株式会社の推進体制をご紹介しました。社外委員を中心とする「企業倫理委員会」が、課題の抽出や提言を行っており、委員会の審議結果は取締役会に報告され、経営に反映される仕組ができています。それに加え、コンプライアンス・企業倫理を基盤とするグループ内のサステナビリティ活動の推進については、社長が議長を務める「サステナビリティ委員会」が設置され、グループ全体の活動の総括をし、改善サイクルをまわしており、取締役会にも報告されています。これらは全社的な委員会が設置されているだけでなく、社長をはじめとする経営ラインとの関係が確保されている点が重要であると思います。
 全社的な組織として、コンプライアンスに関しては「コンプライアンス委員会」を設置している会社は多いと思いますが、個別の問題事案への対処だけで終わり、組織的な改善や企業風土の形成において機能している場合は少ないようです。一方、品質向上や消費者・顧客重視を徹底するために設けられた委員会において、インテグリティを含む議論や取組の情報共有が行われている例もしばしば見るところです。組織の在り方にはバリエーションはあると思いますが、コンプライアンス・企業倫理に係る状況分析や取組の在り方を審議する全社的な体制を構築し、審議結果を経営にきちんと反映することが必要であると思います。
 第三は、このような推進体制の事務局ともなり、コンプライアンスや企業倫理の具体的な実践や意識啓発を進めるための担当部局の設置です。やはり雪印メグミルクの例をご紹介しますと、「サステナビリティ推進部(2年前にコンプライアンス推進部から改称)」がコンプライアンス・企業倫理の推進の責任部局を務めており、品質保証や法務、生産、商品開発、営業を始めとする様々な部署と連携して、取組の推進を図っています。CSR、品質保証、法務など、企業によって担当部署にはバリエーションがありますが、担当役員の下、明確な位置づけとミッションを持って、各部署の連携と施策の推進を主導できるものとする必要があります。
 第四は、問題を顕在化させるための仕組み、言わば「内部通報システム」の構築です。
 データや産地の偽装等の様々な不正事件や、労働法規違反・ハラスメントも実際は内部通報で明らかになることが多いのです。企業自らがそのような問題を早く察知し、是正するためには安心して通報できる窓口、ホットラインを整備することは重要であり、通報を行った者に不利益が与えられないような運用が確保される必要があります。「公益通報者保護法」はそのための法律ですが、保護される通報者の範囲が狭く、保護手段も十分ではないことが指摘され、最近の改正で事業者の体制整備の義務づけや通報者保護の実効性向上が図られました。各社でもこの改正に基づき、内部通報システムの整備を行ったことと思います。この公益通報者保護制度については、また号を改めて詳しくご紹介したいと思います。
 第五は、コンプライアンスや企業倫理に照らして問題になる場合はないかを様々な角度から監査するシステムの充実です。
 品質保証においては、工場・店舗など最前線の各拠点においての自主的・日常的なチェック(現場監査)、社内の担当部署によるチェック(社内監査)、外部の専門家や専門組織によるチェック(外部監査)のように、何層ものチェック体制がとられていることもしばしばあります。このように、コンプライアンス・企業倫理上問題となり得ることについて、監査のシステムにおいて様々な角度からチェックしていく必要があります。前回申し上げた理念が「風化」していないか、問題ある状況が「風景化」していないか注意深く見ていくことが重要だと思います。
 また、サプライチェーン全体の点検も必要になります。例えば、輸入資材が児童労働や不適正賃金の問題はないかなどのチェックも必要であり、フェアトレードなどの認証制度の活用も考えられます。
 第六は、研修・教育の充実です。
 コンプライアンス・企業倫理は、推進体制づくりやトップのコミットメントだけでなく、一人ひとりの役職員がその意義を理解し、実践していくことが重要であり、新任から役員に至るまでの様々な研修に盛り込んでいくことは重要です。コンプライアンス・企業倫理の実践のためのテーマは、理念から、労働問題、ハラスメントや人権問題、消費者重視や適正な市場形成の問題、個人情報保護やデータ活用問題、環境問題、知的財産保護など、多岐にわたる内容が考えられますが、ワークショップ・事例研究などを取り入れ、各人が当事者意識をもって考えていくものとすることが望まれます。雪印メグミルクでは、様々な研修の他、毎月全事業所で全社員が参加しているサステナビリティ活動において、例えば、ハラスメントの事例を基にワークショップを行うなど、毎回テーマと方法を工夫しながら、自分事として様々な課題を考える活動を行っています。
 第七は、取組に関する情報の発信・公開です。
 最近では、投資家のESGに関する関心は高く、有価証券報告書にも、サステナビリティに関する考え方や取組の情報を盛り込むこととされました。非財務情報も重視した企業の「統合報告書」は、まさにコンプライアンス・企業倫理に関する理念や取組を発信する重要なツールにもなっています。このような様々なステークホルダーに向けた報告書、ホームページやSNS等の多様な手段を通じ、積極的に企業の取組姿勢に対する発信を行って、社会の理解を深め、社会的信頼・支援を得ていくことは重要です。株主・投資家に対してだけでなく、消費者に対してもこの情報の発信は重要であり、環境・人・社会に寄与する消費を行うという「エシカル消費」などにもつながってくることが期待されます。
 また、知的財産が企業価値にとって重要であることに鑑み、最近のガバナンスコードの改訂により、経営戦略の開示に当たっては、知的財産への投資等についても具体的に情報開示・提供することが求められています。自社の知的財産の積極的な創出・活用だけでなく、他者の権利保護にも十全を期す企業姿勢が伝わる有価証券報告書・統合報告書の記述になることを大いに期待したいと思います。

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この度、日本複製権センターは主に官公庁の方を対象とした、「官公庁向け著作権セミナー」を開催いたします。第7回開催のテーマは『新聞等の著作権保護と著作物の適法利用』です。
著作権のより一層の保護を図るために、著作権の基礎知識の普及と複製を行う際に必要となる契約についてご案内させていただきます。
なお、本セミナーは官公庁の方に限らずどなた様でもご参加いただけますので、多くの皆様のご応募をお待ちしております。
※第6回開催の官公庁向け著作権セミナー(南関東・北海道地方)の内容と一部重複いたしますので、予めご了承ください。 

★開催要項★
日 時 :2024年8月22日(金) 14:00~16:00
会 場 :オンライン (Zoom)
参加費 :無料
主 催 :公益社団法人日本複製権センター
参加協力:朝日新聞社/毎日新聞社/読売新聞社/産経新聞社/日本経済新聞社/中日新聞社(北陸中日・日刊県民福井)/北日本新聞社/北國新聞社/福井新聞社/神戸新聞社/紀伊民報社/京都新聞社/奈良新聞社

~~プログラム~~

トピックス1 新聞等の著作権保護と著作物の適法利用
トピックス2 写真取材の現場から
トピックス3 新聞記事を巡る著作権侵害の事例
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