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JRRCマガジン No.375 2024/6/27
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※マガジンは読者登録の方と契約者、関係者の方にお送りしています
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◆今回の内容
【1】JRRC特別執筆 怪医秦博士~中国の海賊版
【2】本日受付開始! 無料オンライン著作権セミナー
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皆さま、こんにちは。いかがお過ごしでしょうか。
今日6月27日は「ちらし寿司の日」
岡山県のちらし寿司である「ばら寿司」が生まれるきっかけとなった備前岡山藩主・池田光政の命日にちなんで制定されたそうです。
さて今回は4月に引き続き、番外編として当センター事務局長 林の「怪医秦博士~中国の海賊版」をお届けいたします。
また、本日より無料オンライン著作権セミナーの受付を開始いたします。官公庁向けセミナーの第6回【南関東・北海道地方向け】となりますが、これまでの内容を一部変更し一般的な著作権(初級レベル)の解説や著作物の正しい利用方法などについてより詳しくご説明する予定ですので全国の企業や学生の方もぜひご参加ください!
参加申し込みは下記URLから↓
https://jrrc.or.jp/seminar/
※詳細は本メルマガ【2】へ
◆◇◆━【1】JRRC特別執筆━━━━━━━━━━━━━
怪医秦博士~中国の海賊版
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JRRC事務局 林宏之
皆さんこんにちは。谷間のローテーションで再び登板することになりましたJRRC事務局長の林です。4月はイラク駐在時代について書きましたが、今回はさらに遡って1990年代前半からの中国北京駐在時代の話にお付き合い願います。
【怪医秦博士とは?】
「怪医秦博士」と聞いて何を思い浮かべますか?ヒントは日本のマンガの中国語のタイトルで、現在では「怪医黒傑克」と改題されています。
答えは手塚治虫先生の不朽の名作ブラックジャックです。なぜ、「ジャック」を「秦博士」と翻訳したのか皆目見当がつきません。
現在の「黒傑克」(中国語では「黑杰克」)はそのまま黒=ブラックと傑克=ジャックです。「傑克」は音からとっていてピンインは「Jie-Ke」となります。
ちなみに中国では日本人などの漢字表記の人名以外は音で漢字を当てていくため、マイケルジャクソンは「麦克・杰克逊(Mai-Ke Jie-Ke-Sun)」になります。
【1990年代から2010年頃の中国】
1993年に前々職で初めて北京に駐在した際、中国語を覚えるためにテキスト以外にもヒット曲のカセットテープ(もはや死語ですが)を再生しながら歌詞カードを見て口ずさんだり、マンガを読んだりして口語を覚えて街中で使ってみるということを繰り返していました。それが当時の中国語の学習者の勉強法のひとつでした。
その中でもお気に入りだったのが「怪医秦博士」で、書店で当時出版されていたものを買い揃え、日本語のセリフがこんな風になるのだなと思いながら読み進め、気になるフレーズはノートに書き留めていたりしましたので、とても助かったことを覚えています。
???と思ったのは、第1話の最後のセリフが「彼は中国人ということ以外の詳細は不明である。」となっていたことで、いやいやそこの元のセリフは日本人でしょうと。仮に日本で外国のマンガの訳を付けることがあっても、こうゆうことはしないだろうなぁと思ったことを鮮明に覚えています。
今回この原稿を書くために中国語版のウィキペディアをチェックしてみたところ、こんな内容の記載がありました(日本語版のウィキペディアにはこの記載はありません)。
「『怪医黒傑克』は日本の漫画家である手塚治虫氏の作品で(中略)、全部で242話。台湾と香港の盗版(=海賊版)時代には『怪医秦博士』と翻訳されていたが、香港とシンガポール版ではなおこの名称が使用されている。」
…ということは、皆さんのご想像どおり、当時私が買ったブラックジャックはすべて海賊版だったということになります。もう手元にはありませんが、記憶ではA5サイズ程度で厚さは1cmに満たないものでした。出版社名も表紙や奥付に中国○○出版社と記載あり、さらに奥付には住所や電話番号の記載もありました。
手元にはないので、ネット検索してみたところ、台湾の正規版の写真が載っているブログがありました (https://formosadays.net/formosa-days/formosa-life/blackjack-tw3/)。台湾版なので、繁体字になっています。
そのようなマンガが中国の当時まだほとんど国営であった本屋で堂々と売られていたり、どうみてもファミコンのパクリ製品のパッケージに「仿冒必究」(=偽物は必ず突き止める)と堂々と書いてあったりする。それが1993~1994年頃の中国でした。
図らずも海賊版(もしくは台湾や香港の海賊版の海賊版?)を買ってしまった私ですが、帰国後にブラックジャックの文庫版を全巻揃え、子供たちもそれを読んで育ちましたので、関係者の皆様におかれましてはご容赦いただければ幸いです。
北京にはその後も1998~1999年、2007~2010年と合計3回駐在しました。
1998~1999年には海賊版が大きな問題になっていましたので、そうしたマンガを買うことはしなくなりましたが、巷には世界のアーティストの音楽CDやテレビドラマや映画、日本のアニメのDVDが店頭に溢れかえっているのが日常的な光景で、中央電視台(CCTV:中国の国営放送)では、海賊版を摘発というニュースでブルドーザーでCDやDVDを踏み潰す光景が放送されていました。
特にこの時期は、中国政府が世界貿易機関(WTO)への正式加盟に向けて躍起になっていたこともあり、こうしたプロパガンダ的な報道を毎日のように目にしていたことを覚えています。結果として中国は2001年12月にWTO正式加盟となったわけですが、それでも街中では依然としてこうした著作権侵害のコンテンツが売られている状況は変わらず、「版权」(=著作権)の侵害に根本的な是正がなされたとは思えない状況でした。
この時代、市場やその周辺では、外国の音楽や映画の海賊版も一見して分かるようなパッケージのものを袋から出して物陰でこっそり売ろうとする物売りもたくさんいました。新作映画を映画館で盗撮したと思われるDVDを海賊版の例として見せてもらったことがあったのですが、人が横切ったり、頭が映っていたりとそれはひどいものでした。それでも買い求める人がいることの問題の根深さも実感しました。
他にも市場には有名ブランドの服が大量に売られており、偽物なのか、横流し品なのかまったくわからないカオスな状況でしたが、ロサンゼルスオリンピックの対象種目で金メダルを獲得した李寧選手が立ち上げた「李宁」(Li-Ning)などの国産ブランドもこの頃から流通が始まっていました。
さらに時は進み、2007~2010年の駐在時には、紙、CD、DVDベースのコンテンツの海賊版に加え、MP3などの違法コピーも溢れかえっていましたが、この頃は1990年代後半から続く圧倒的な成長を背景に、自らの知的財産権を強く主張する空気感も醸成されつつありました。2010年には名目GDPで日本が中国に抜かれた年ですが、この空気感の醸成はその時期とリンクしています。
胡錦涛国家主席がその座を降り、習近平国家主席が就任したのが2013年のことであり、習主席は「中華民族の偉大な復興」と「一帯一路」を打ち出し、それを「中国梦」(=中国の夢:アメリカン・ドリームを模したものと言われる)として推し進めたのはご承知のとおりです。
【今後に向けて】
そして現在、中国国内でも知的財産権の侵害を巡っての訴訟や紛争が当たり前となり、日本や欧米各国が中国に向ける目もますます厳しくなってきています。
世界の二大強国を自負し、あらゆる分野で存在感を増している中国は、自国のコンテンツ産業の育成も当然のごとく進めており、権利を主張する声はますます大きくなってきていますが、同時に他国の権利の保護も国際的なルールに則って適切かつ迅速に、そして一時的でなく継続的に取り組むことが強く求められます。
近年は、漫画BANKやB9GOODといった中国のサイトに行政処分が下されるようになってきていますが、こうした海賊版サイトによる日本企業の損害は行政罰だけでは到底許されるものではなく、中国政府として「やった者勝ち」を許すような姿勢は認められないことは言うまでもありません。
二大強国を自負するのであれば、自国の法律や制度を盾にしたダブルスタンダードに陥ることなく、そのプライドをもって、国際的に受け入れられる権利保護の取り組みがなされなければならないですし、私の知る限り外国企業にとっては対応が難しい中国の裁判制度も改善されるべきと考えます。
学生の頃から中国の歴史が好きで三国志、項羽と劉邦、水滸伝などを読み漁り、人生初の海外旅行はバックパッカーでの中国一人旅という私にとって、中国は私にとっては海外に目を向けさせてくれた存在でもあります。
有史以来様々な民族が中原で覇を競い、栄枯盛衰を繰り返してアジア、世界に大きな影響を与えてきた中国が、この先どのように振る舞い、日本を含むアジア諸国及び世界各国とどのように付き合っていこうとするのか、これからは著作権の視点でその動向をウォッチしていきたいと思います。
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【2】本日受付開始! 無料オンライン著作権セミナー
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この度、日本複製権センターは主に官公庁の方を対象とした、「官公庁向け著作権セミナー」を開催いたします。第6回開催のテーマは『新聞等の著作権保護と著作物の適法利用』です。
著作権のより一層の保護を図るために、著作権の基礎知識の普及と複製を行う際に必要となる契約についてご案内させていただきます。
なお、本セミナーは官公庁の方に限らずどなた様でもご参加いただけますので、多くの皆様のご応募をお待ちしております。
※第5回開催の官公庁向け著作権セミナー(北関東・甲信越地方)の内容と一部重複いたしますので、予めご了承ください。
★開催要項★
日 時 :2024年7月19日(金) 14:00~16:00
会 場 :オンライン (Zoom)
参加費 :無料
主 催 :公益社団法人日本複製権センター
参加協力:朝日新聞社、毎日新聞社、読売新聞社、産経新聞社、北海道新聞社、室蘭民報社、十勝毎日新聞社、苫小牧民報社、埼玉新聞社、神奈川新聞社、千葉日報社、中日新聞社(東京新聞)、日本経済新聞社
~~プログラム~~
14:00 ~ 14:05 開会・諸連絡
14:05 ~ 14:40 【1】新聞等の著作権保護と著作物の適法利用
14:40 ~ 15:00 【2】著作権担当者のひとりごと ~神奈川新聞社の許諾手続きについて~
15:00 ~ 15:05 休憩
15:05 ~ 15:25 【3】新聞記事を巡る著作権侵害の事例
15:25 ~ 15:40 【4】JRRからのご案内
15:40 ~ 15:55 質疑応答
15:55 ~ 16:00 閉会
※進行状況により時間が変更になる場合がございます。ご了承ください。
★ 詳しくはこちらから ★
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