JRRCマガジンNo.333 最新著作権裁判例解説10

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JRRCマガジン No.333    2023/8/24
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◆今回の内容
【1】濱口先生の最新著作権裁判例解説
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皆さま、こんにちは。

八月もなかばを過ぎ、暑さももうひと我慢です。
いかがお過ごしでしょうか。

さて今回は濱口先生の最新の著作権関係裁判例の解説です。

濱口先生の記事は下記からご覧いただけます。
https://jrrc.or.jp/category/hamaguchi/

◆◇◆━【1】濱口先生の最新著作権裁判例解説━━━
最新著作権裁判例解説(その10)
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               横浜国立大学大学院国際社会科学研究院教授 濱口太久未

 引き続き暑い夏ですが、連載回数が二桁の第10回に突入しました。また新たな気分で当方も取り組んでまいりたく存じておりますところ、今回は東京地判令和5年5月31日(令和3年(ワ)第13311号)〔ゲームソフト著作権帰属事件〕を取り上げます。

<事件の概要>
 本件は、原告(テレビゲームの開発業務を行う個人事業者であり、被告トーセの元契約社員)が、被告トーセが、原告が著作権を有する著作物である別紙著作物目録記載の動画(以下「本件各動画」という。)を使用して、Xとの名称のゲームソフト(以下「本件ソフト」という。)並びにその派生作品であるY及びZ(以下、順次、「本件派生ソフト1」、「本件派生ソフト2」といい、これらを併せて「本件各派生ソフト」という。)を開発又は製作し、これらのソフトに係る権利を被告バンダイナムコに譲渡して、被告バンダイナムコが本件ソフト及び本件各派生ソフトを販売したことにより、被告らが、共同して原告の本件各動画に係る頒布権を侵害した等と主張して、民法第709条に基づく損害賠償請求等を行った事案です。
(※)判決で認定されている主な前提事実は以下の通り。
〇原告は、平成14年頃、契約社員として被告トーセに入社し、被告トーセが開発又は製作するゲームソフトの開発又は製作に関与。
〇被告トーセは、平成19年10月25日、株式会社バンプレソフト(現在の商号は株式会社B.B.スタジオ。以下、商号変更の前後を問わず、「株式会社バンプレソフト」という。)から本件ソフトの開発又は製作を受注。
〇原告は、平成21年5月31日、被告トーセを退職し、同年6月1日、被告トーセとの間で、業務委託契約(以下「本件業務委託契約」という。)を締結。
〇原告は、本件業務委託契約締結後、被告トーセから委託を受けて、本件ソフトの開発又は製作に関与するようになり、その過程で本件各動画を製作。具体的な業務の委託は、「注文書」と題する書面の交付によってされ、同書面の「注文金額」欄記載の金額が作業委託料として支払われていた。
〇原告と被告トーセは、平成22年12月末頃、本件業務委託契約を合意により終了させることとし、以後、原告は、本件ソフトの開発又は製作に関与することはなくなった。
〇被告トーセは、本件ソフト及び本件各派生ソフトの開発又は製作をし、本件ソフトを株式会社バンプレソフトに、本件各派生ソフトを被告バンダイナムコにそれぞれ納品。
〇被告バンダイナムコ(被告バンダイナムコは、本件ソフトの納品の後、株式会社バンプレソフトからゲーム事業の譲渡を受けた。)は、平成24年11月29日から、本件ソフトの販売を開始し、平成26年4月17日から、本件派生ソフト1の販売を開始し、平成28年6月30日から、本件派生ソフト2の販売を開始。

<判旨>
 原告の請求を棄却。
「(1) 著作権法29条1項は、映画の著作物の著作権について、著作者が映画製作者に参加約束をすることにより、当該映画製作者に帰属する旨を規定しているところ、同項は、著作者の映画製作者に対する参加約束があれば、法律上当然に著作権が映画製作者に移転する効果が生じることを定めたものであり、意思表示により著作権が移転するとの効果を定めたものではない。そして、著作者が映画製作に参加する場合、必ずしも映画製作者との間で参加に係る契約を締結するとは限らず、著作者が所属する法人と映画製作者との間で契約が締結されたり、映画製作者と第三者との間で契約が締結され、更に当該第三者と著作者との間で契約が締結されたりして、著作者が映画の製作に参加するような場合もあり得ると考えられ、そのような場合に参加約束を認めなければ、同項が設けられた意味がなくなるというべきである。
したがって、同条における参加約束は、映画製作者に対して必ずしも直接される必要はなく、映画の製作に参加しているという認識の下、実際に映画の製作に参加して、その製作が行われれば、著作者が映画製作者に対して映画製作への参加意思を表示し、映画製作者もこれを承認したといえ、黙示の参加約束があったと認めることができるというべきである。
本件において、原告は、前提事実・・・のとおり、被告トーセが株式会社バンプレソフトから受注を受けた本件ソフトの製作又は開発業務につき、被告トーセから業務委託を受け、本件各動画の製作に携わり、被告トーセから業務委託の報酬の支払を受けていたのであるといえ、製作者を被告バンダイナムコ(事業譲渡前は株式会社バンプレソフト)とする本件ソフトの製作に携わるとの認識の下、本件ソフトの製作に参加し、その過程で本件各動画を製作したと認められる。
よって、原告は、被告バンダイナムコに対し、本件各動画の製作に係る参加約束をしたと認められる。
(2) これに対し、原告は、被告トーセとの間で本件追加業務につき相当額の報酬の支払を内容とする契約が締結されることを条件として参加約束をしていたから、同契約が締結されなかったことにより参加約束も条件不成就により存在しなくなったか、仮にそうでないとしても、原告が本件ソフトの製作に関与しなくなった時点において参加約束は撤回された旨主張する。
しかし、本件において、原告と被告トーセとの間に、原告が主張するような、「本来の業務」とは別途の本件追加業務に対して報酬を支払う旨の合意がされたことや、原告が本件ソフトの製作に参加した時点において、上記の報酬が支払われなければ参加約束を撤回するなどといった別段の定めがされたことを認めるに足りる証拠はない。
よって、原告の上記主張は、その前提を欠くものであって、採用することができない。」

<解説>
 今回の判決では判旨に掲載したもの以外の論点についても取り上げられてはいますが、本解説では映画の著作物の権利帰属の点にフィーチャーして進めることといたします。
 映画の著作物については、他の種類の著作物と異なり、著作権法上種々の点で特殊な取扱いがなされています。映画の著作物は固定性が要求されているものと解されており(注1)、さらに映画の著作物の拡張規定として「映画の効果に類似する視覚的又は視聴覚的効果を生じさせる方法で表現され、かつ、物に固定されている著作物を含むものとする。」(第2条第3項)とされています。
また、その著作者については職務著作の場合を除いて「その映画の著作物において翻案され、又は複製された小説、脚本、音楽その他の著作物の著作者を除き、制作、監督、演出、撮影、美術等を担当してその映画の著作物の全体的形成に創作的に寄与した者とする。」とする第16条が整備されています(注2)。また、著作財産権の帰属については一定の場合は第29条による映画製作者への帰属が法定されており、著作財産権の支分権においても映画の著作物(や映画の著作物に複製されている著作物)については第26条の頒布権(注3)が認められていますし、映画の著作物の保護期間については一律に公表後70年後まで(創作後70年後までの間に公表されなかった場合は創作後70年後まで)とされています(第54条第1項)。
さらに、著作財産権の制限規定においても、貸与権における非営利無料の貸与の場合の制限(第38条第4項)とは異なり、行為主体等がさらに限定された形での頒布権の制限が第38条第5項において課されています(注4)。また、著作者人格権についても、公表権の制限の一つとして、映画の著作物の著作財産権が第29条に基づいて映画製作者に帰属した場合には、当該映画の著作物をその著作財産権の行使により公衆に提供・提示することは公表権の同意推定効が与えられています(第18第2項第3号)。このほか、「映画の盗撮の防止に関する法律」(平成19年法律第65号)では、一定の映画の盗撮については第30条第1項の私的目的複製の対象外とすること等が法定されています(注5)。
 このように映画の著作物が種々の点で特殊な取扱いを受けているのは、元々、映画の著作物の創作過程に由来するところが大きく、具体的には、一般的に映画製作には巨額の費用がかかる点と多人数を要する点とがあり、そのようにして製作される映画について、関係者間の利益配分と利用の促進とをいかに適正な形で図るか、という観点から特殊な制度設計がなされているものと考えられます。実際、今回取り上げている第29条についても、その設計理由は、現行法制定以前も含めて映画の著作物の利用に関しては映画製作者と著作者との間の契約によって映画製作者の権利行為に委ねられている実態にあったことと、先に言及した映画の著作物の創作過程に係る2点の特徴との計3点にあるとされているところです(注6)。
 さて、本判決を理解するのにまず触れておかなければならないのは映画の著作物とゲームソフトの映像との関係についてです。上述した映画の著作物に係る第2条第3項の拡張規定は、もともと映画については立案担当者の説明(注7)によれば「(映画の著作物自体は)伝統的なフィルムによる劇場用映画を念頭においているわけでございます。しかし、その後になって開発されたビデオ・テープ、ビデオ・カセット、ビデオ・ディスクなどの連続影像収録物(ビデオ・ソフト)も、その支持物あるいは固定物が光学フィルムか磁気テープ・ディスクかの違いに過ぎず、内容的には映画との区別を認める必要がありませんので、(第2条第3項を整備して)映画の著作物としての概念に含ましめたということです。」とし、その際「(第2条第3項の文言である)「物に固定されている」といいますのは、例えばテレビの生放送番組のように、
放送と同時に消えていく性格のものは、映画の著作物としては保護しないということであります。」として、テレビ放送用の録画物なども現行著作権法制定時から映画の著作物として扱うこととされました。そして、この第2条第3項が整備されたことによってその後生じた課題がゲームソフトの映像における第2条第3項充足性の点でした。ゲームソフトの映像については「パックマン」に関する裁判例(注8)や最高裁判例(注9)などの多数の裁判例において第2条第3項の充足性が肯定されています(注10)。
 このことを前提とした上で、今回の判決では第29条第1項に関する論点が取り上げられていますが、同条同項では「映画の著作物・・・の著作権は、その著作者が映画製作者に対し当該映画の著作物の製作に参加することを約束しているときは、当該映画製作者に帰属する。」と規定されています。この「映画製作者」は「映画の著作物の製作に発意と責任を有する者をいう。」(第2条第1項第10号)とされていますが、「製作」自体は定義付けされておらず、その一方で映画の著作者を法定する第16条では「映画の著作物の著作者は、その映画の著作物において翻案され、又は複製された小説、脚本、音楽その他の著作物の著作者を除き、制作、監督、演出、撮影、美術等を担当してその映画の著作物の全体的形成に創作的に寄与した者とする。ただし、前条の規定の適用がある場合は、この限りでない。」と規定され、同条では「制作」の文言が使用されていますが、
これまた「制作」の定義がされていないので、両者の区別をつけておくことが必要です。「映画製作者」は「法律上の権利・義務が帰属する主体であって経済的な収入・支出の主体になる者」と解されており(注11)、そのような意図で用いられている「製作」については、裁判例(注12)上「著作権法2条1項10号は,映画製作者について,「映画の製作に発意と責任を有する者」と規定しているところ,同規定は,映画の製作には,通常,相当な製作費が必要となり,映画製作が企業活動として行われることが一般的であることを前提としているものと解されることから,映画製作者とは,自己の責任と危険において映画を製作する者を指すと解するのが相当である。
そして,映画の製作は,企画,資金調達,制作,スタッフ等の雇入れ,スケジュール管理,プロモーションや宣伝活動,配給等の複合的な活動から構成され,映画を製作しようとする者は,映画製作のために様々な契約を締結する必要が生じ,その契約により,多様な法律上の権利を取得し,また,法律上の義務を負担する。したがって,自己の責任と危険において製作する主体を判断するに当たっては,これらの活動を実施する際に締結された契約により生じた,法律上の権利,義務の主体が誰であるかが重要な要素となる。」と判示されており、いわば映画を自己の資金的リスクの下で商品として企画・完成させて流通に載せていく行為を意味するものと解されているのに対し、
「制作」については別の裁判例(注13)上「・・・前記認定のとおり,本件テレビアニメの制作に関与した主なスタッフは,プロデューサーのP,現場プロデューサーのQ,総監督のR,シリーズ構成者のT,キャラクターデザイナー兼キャラ作画監督のV,メカニックデザイナーのS・U,音響監督のW,メカ作画監督のZらであった。このうち,シナリオの作成からアフレコ,フィルム編集に至るまで本件テレビアニメの現場での制作作業全般に関わり,その出来映えについて最終的な責任を負い,実際にも,動画の作成,戦闘シーン等のカットに関する最終的な決定,撮影後のラッシュフィルムのチェック,フィルム編集等に関する最終的な決定を行っていたのは,総監督のRであるから,同人は,監督として本件テレビアニメの「全体的形成に創作的に寄与した者」に当たると認められる。
これに対して,プロデューサーであるP及び現場プロデューサーであるQは,主として,スポンサー,テレビ局,広告代理店との交渉等を担当しており,創作面での具体的な関与はなく,スタッフに対して指示を与えたこともなかった。・・・以上のとおり,P及びQは,本件テレビアニメの全体的な創作に寄与したものということができないから,原告の主張は,その前提を欠く。」とされ、映画の著作行為を意味するものと解されているところであり、映画をつくって興行にまわしていくという全体的なプロセスの中で製作と制作との分業的な体制が敷かれているということになります。
 第29条第1項ではこのことを反映したスキームが採用されている訳ですが、今回の判決は映画の著作物の著作財産権が映画製作者に帰属(注14)するための要件である「著作者が映画製作者に対し当該映画の著作物の製作に参加することを約束しているとき」に関する判断が示された事例となっています。この「参加約束」要件については従来、「つまり、著作者が映画製作に際し映画製作者との間に参加契約を結んでいれば、著作権は自動的に映画製作者に移転するということであります。」(注15)と説明されており、すーっとそのまま読み流してしまいそうになる説明ですが、学説上の指摘(注16)として「参加約束の法的性質については,法文上明確ではない。映画製作に当たっては,報酬契約や映画製作委託契約等の契約が製作者との間で締結されるのが通例であろうが,著作権法29条1項に規定する参加約束はこのような契約そのものではなく,
「約束」とはあるが法律行為ではない。」、「法律行為(契約)であるならば,当事者はこれによって生ずる法的効果を認識しており,これに沿って法的効果を生ずることになるが,参加約束にはそのような意味での効果意思は要求されていない。したがって,そのような効果が生ずるとの認識がなかったとか,あるいは契約不履行などを理由とする参加約束の解除などの問題は生ずる余地はない」とする見解があります。参加約束を巡る既存の裁判例(前掲注13の裁判例)においては、参加約束の法的性質についての直接的な言及はなされてはいませんが(注17)、「前記認定のとおり,本件テレビアニメの制作は,プロデューサーのP,現場プロデューサーのQ,総監督のR,シリーズ構成者のT,キャラクターデザイナー兼キャラ作画監督のV,メカニックデザイナーのS及びU,音響監督のW,メカ作画監督のZらが担当しているが,
本件テレビアニメの全体的形成に創作的に寄与したのは,総監督を担当したRであるというべきところ,Rは,原告(筆者注:アニメーション映画制作会社)が毎日放送との制作契約に基づいて本件テレビアニメを制作することを知った上で,総監督として本件テレビアニメの製作に参加しており,制作作業に対する報酬も原告からアニメフレンド(筆者注:原告の100%子会社)を通じて受け取っていたのであるから・・・,これらの事実によれば,Rは,映画製作者である原告に対し,本件テレビアニメの製作に参加することを約束していたものと認定するのが相当である。」として、黙示の形による参加契約が認定されたものがあります。
 このような中、今回の判決においては、まず、第29条第1項は意思表示による著作財産権の移転を定めたものではないという上述の通説的見解(注18)を踏襲している点に意義があり、その上で同条同項の参加約束については多様な者の間での契約形態があることから、映画製作に参加しているという認識の下で実際に映画の製作に参加してその製作が行われれば著作者が映画製作者に対して黙示の参加約束をしたものと評価できるとした点に意義があります。説示の仕方は同一ではないものの、今回の判決は上述の既存裁判例と同様の見解に属するものといえましょう。他方で、今回の判決の説示のように、映画製作に参加しているという認識の下で実際に映画の製作に参加してその製作が行われれば著作者が映画製作者に対して黙示の参加約束をしたものと評価できるとした場合、逆にこの参加約束に該当しない場合とはどのようなケースなのかという点は疑問の生じ得るところです。
劇場用映画のことを考えれば通常は参加約束をしているはずであり、参加約束をしていないケースを想定することは困難ですが、立案担当者が「映画の著作物を制作する行為に参加する意思があったかどうかにポイントがあり、少なくとも本条第2項の適用を受けるテレビドラマ固定物がパッケージ化され商品として販売されたからといって、そのパッケージ化された映画の著作物についての全権利が映画製作者に帰属するわけではありません。それは、著作者の意思としてそのような映画の著作物の製作に参加する約束はしていないと解すべきであるからであります。」と説明していること(注19)からすると、かなりレアなケースなのではないかと考えられます。
そうすると、上述の通りその法的性質が不明確だと指摘されている参加約束を法定要件化していることの意義がどの程度あるのかということになり、この点は「1967年のベルヌ条約ストックホルム改正条約14条の2などの経緯を踏まえ,当事者間調整の妥協の産物であろうが,文理が不明の感は否めない。」とする学説(注20)の指摘が妥当することになるのではないかと思われます(注21)。今回は第29条第1項に焦点化して解説しましたので、以上といたします。

(注1)映画自体には定義付けは行われてはいないが、映画の著作物とは「映像(動きのある影像や画像)により創作的に表現したものを物に固定したものという」と解されている。島並良=上野達弘=横山久芳『著作権法入門第3版』55頁[横山久芳]
(注2)第2条第1項第2号と第16条との関係性については、映画における部分的な創作行為を行った者に対する映画の著作者性の評価等をめぐって、第16条の確認規定説・創設規定説とが存在する。中山信弘『著作権法第3版』265~266頁。
(注3)「頒布」概念については、「有償であるか又は無償であるかを問わず、複製物を公衆に譲渡し、又は貸与することをいい、映画の著作物又は映画の著作物において複製されている著作物にあつては、これらの著作物を公衆に提示することを目的として当該映画の著作物の複製物を譲渡し、又は貸与することを含むものとする。」(第2条第1項第19号)として、後段の拡張が図られている。
(注4)第38条第5項は「映画フィルムその他の視聴覚資料を公衆の利用に供することを目的とする視聴覚教育施設その他の施設(営利を目的として設置されているものを除く。)で政令で定めるもの及び聴覚障害者等の福祉に関する事業を行う者で前条の政令で定めるもの(同条第二号に係るものに限り、営利を目的として当該事業を行うものを除く。)は、公表された映画の著作物を、その複製物の貸与を受ける者から料金を受けない場合には、その複製物の貸与により頒布することができる。この場合において、当該頒布を行う者は、当該映画の著作物又は当該映画の著作物において複製されている著作物につき第二十六条に規定する権利を有する者(第二十八条の規定により第二十六条に規定する権利と同一の権利を有する者を含む。)に相当な額の補償金を支払わなければならない。」として、頒布行為主体の限定や補償金の支払い義務等の加重要件を設けている。
(注5)いわゆる映画盗撮防止法第4条第1項では「映画の盗撮については、著作権法第三十条第一項の規定は、適用せず、映画の盗撮を行った者に対する同法第百十九条第一項の規定の適用については、同項中「第三十条第一項(第百二条第一項において準用する場合を含む。第三項において同じ。)に定める私的使用の目的をもつて自ら著作物若しくは実演等の複製を行つた者、第百十三条第二項」とあるのは、「第百十三条第二項」とする。」と、同条第2項では「前項の規定は、最初に日本国内の映画館等において観衆から料金を受けて上映が行われた日から起算して八月を経過した映画に係る映画の盗撮については、適用しない。」と各々規定されている。
(注6)加戸守行『著作権法逐条講義七訂新版』227頁
(注7)前掲注6・74~75頁
(注8)東京地判昭和59年9月28日判時1129号120頁〔パックマン事件〕
(注9)最判平成14年4月25日民集56巻4号808頁〔中古ゲームソフト事件〕
(注10)ゲームソフトの映像の場合は、従来の劇場用映画と異なり、プレーヤーの操作によって映像が様々に変化するという表現上の特徴がある。この点を強調すると、ゲームソフトの映像を映画の著作物として捉えることには違和感が伴いうるが、第2条第3項は映画に類似する視(聴)覚的効果を持っていて、何等かの媒体に固定されている著作物も映画の著作物に含める旨を規定しており、固定の方法等については特段の制約を設けておらず、個々の裁判例によってその説示の文言は異なるものの、言ってみれば「ゲームソフトの映像はプレーヤーの操作による変化が生じるが、その変化はプログラムの設定範囲内という有限の範囲内において生ずるものであり、予め定められた1億通りや1兆通りの変化があるものとして、そういう状態で固定されている」というような評価になっているものと解される。
(注11)前掲注6・45~46頁
(注12)東京地判平成18年12月27日判時2034号101頁〔宇宙戦艦ヤマト大フィーバー事件〕
(注13)東京地判平成15年1月20日判時1823号146頁〔超時空要塞マクロス事件〕
(注14)この「帰属」については、映画製作者への原始帰属なのか(小倉秀夫=金井重彦編『著作権法コンメンタール改訂版Ⅰ』594頁[小倉秀夫])、著作者から映画製作者への移転なのか(前掲注6・228頁)の点で議論がある。
(注15)前掲注6・228頁
(注16)高林龍『標準著作権法第5版』129頁
(注17)判決の説示からすれば、第29条第1項の解釈として、立案担当者の見解と同様に、映画製作者への著作財産権の帰属に関する効果意思を著作者が有している必要はないことが前提とされているものと解される。
(注18)反対説として、半田正夫=松田政行編『著作権法コンメンタール[第2版]』122~123頁[岡邦俊]
(注19)前掲注6・229頁
(注20)作花文雄『詳解著作権法[第6版]』208頁
(注21)この点につき、田村善之『著作権法概説 第2版』391頁は「その著作権を映画製作者が奪う形となったとしても,報酬その他により映画製作者から十分な見返りを期待することができる場合に,29条1項の適用場面は限定されているのである。」としており、参加約束要件の意義自体については、映画製作者に著作財産権の行使を一点集中させた上で、映画製作者のルートを通じて映画の著作物の著作者に経済的利益が還元されることを担保する点にあるという理解になろう。

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