JRRCマガジンNo.233 NYパブリシティ法改正

山本隆司

(お詫びと訂正)マガジン配信時、誤った原稿を配信しておりました。正しい原稿と差し替えいたします。読者の方にお詫び申し上げます。

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JRRCマガジン No.233  2021/3/11
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みなさま、こんにちは。

この一年は、国内同様に海外で開催される会議もオンライン会議となり、
無駄がなくなり効率的で良い面もある一方で、大事なコミュニケーションなど
何が失われているのではないかと感じています。皆さまはいかがお考えですか。

さて、今回の著作権談義のNYパブリシティ法改正です。NYなど海外の業務に
関係する方におかれては、より身近な最近の話題ではないでしょうか。

前回までのコラムはこちらから
https://jrrc.or.jp/category/yamamoto/

◆◇◆山本隆司弁護士の著作権談義(96)━━

  -NYパブリシティ法改正-

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米国ニューヨーク州は、昨年末に、死後のパブリシティ権を保護するよう法律改正を行いました(2021年5月29日施行)。
米国における肖像権の保護のあり方は日本法とは異なりますので、これを機会に注意点をご紹介したいと思います。
米国では、肖像権は州法によって保護されています。州ごとに保護の形式(判例法か法律か)も保護の内容も異なっています。
とりわけカリフォルニア州では広く保護されており、ニューヨーク州では狭く保護されているという一般的傾向があります。

もともと、プライバシー権の概念は、1890年に書かれた1本の論文(Warren & Brandeis, The Right to Privacy, 4 Harv. L.Rev. 193 (1890))で定立されたものです。
それは、コモンロー上、垣間見られるプライバシー保護ルールから、コモンロー上の一般的法理としてのプライバシー権があると主張しました。
この論文以降、プライバシー権の概念が判例法理としてあるいは立法によって定着していきました。

米国の法理論上、プライバシー権の侵害類型として、
①私的領域への侵入、
②私的事実の不当公表、
③私的事実の虚偽公表、
④肖像の商業的使用の4類型が認められています(Restatement (Second) of Torts (1977) §652A)。

④肖像の商業的使用から保護されるプライバシー権が、いわゆるパブリシティ権です。
ここで注意を要するのは、日本法と違い、第1に、いわゆるパブリシティ権もプライバシー権の一部として発展しています。
たとえば、ニューヨーク州で、素人女性の肖像を小麦粉の広告に使用したことの違法性が争われた事件において、原審はプライバシー権を認めて請求を認容しましたが、上告審はコモンローに根拠がないとして、これを否定しました(Roberson v. Rochester Folding Box Co., 171 N.Y. 538, 64 N.E. 442 (1902))。
しかし、この事件を巡って全米でプライバシー権の議論が巻き起こり、1903年にニューヨーク州議会は、全米で最も早くプライバシー権を認める法律を制定しました。
この事件には、判決を書いた裁判長が1904年に民主党の大統領候補に選出され、大統領選中に写真取材に悩まされた結果、その停止を要求する記事を新聞に掲載したので、判決原告から非難されたというエピソードも残しました。

第2に、パブリシティ権もプライバシー権の一部であるので、著名人だけではなく一般人にもパブリシティ権が認められています。
したがって、米国には肖像の利用に関して、一般的には、プライバシー権とパブリシティ権の区別はありません。
一般人の肖像にはあまり利用価値がないので侵害されることが少ないだけで、一般人の肖像も商業的に使用されることがあります。
パブリシティ権を認めるリーディングケースになったのは、素人の肖像が利用された事例でした。
たとえば、1905年のジョージア州の判決は、素人男性の肖像を保険の広告に使用した事例において、州の最高裁判所としては初めて、商業的使用から肖像を保護する権利としてプライバシー権を認めました。
かつては、かえって「著名人の法理」に基づき著名人の肖像を商業的に使用することは適法とされていました。
O’Brien v. Pabst Sales Co., 124 F.2d 167 (5th Cir. 1941)は、著名なフットボール選手の肖像をビールの広告に無断使用したことを適法と判断しました。

第3に、プライバシー権の侵害として商業的使用が違法とされる対象は、肖像のほか、各州法によって氏名、声に広げられています。さらに、カリフォルニア州では、署名もその対象に含められています。
つぎに、死後の肖像権の保護については、これを認める州と認めない州がありますが、認める州も保護期間が州ごとに異なります。保護期間の長い州では、死後100年間保護します。
ニューヨーク州は、市民権法(Civil Rights Law)の「第5章プライバシー権」(第50条~第52-C条)に、肖像権の保護を定めています。誰の肖像、氏名または声であれ、ニューヨーク州内で許諾なく商業的に使用された場合には、この法律による保護を受けることができます(51条)。
ニューヨーク州は、死後のプライバシー権の保護を認めていませんでした。
今回の法改正で初めて、死後のプライバシー権の保護を認める規定(第50-F条)を置きました。

この規定では、その権利の対象になるのは、
①死亡時にニューヨークに居住していた個人の、
②商業的価値のある肖像、氏名、声および署名です。
この権利は、譲渡可能な財産権とされています。
保護期間は、死後40年間に限られています。

 以上

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