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JRRCマガジン No.224 2020/12/10
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※マガジンは読者登録の方と契約者、関係者の方にお送りしています。
みなさまこんにちは。
マガジンの担当になって1年半ほど経ちますが、ネット上に記事を書くというのはとても勇気のいることだと感じています。
先日、とあるWEBマガジンで立て続けに2回ほど、著者の見識と配慮が足りずいわゆる炎上した記事があり、
掲載を取り下げて媒体側が謝罪するという事態がありました。
(権利侵害ではありません)
ひとつは人生相談でひとつは路上生活者のレポート、どちらも、書くことを生業としている「プロ」の方が書いたものではありませんでした。
誰もが全世界へ自分の作品を発信できる時代には、発信に責任を持つ者がリテラシーを持って判断していくことが必要となり、
ネット媒体でも紙媒体のようなプロ編集者の存在は不可欠で非常に重要だと思いました。
さて、今日の山本先生のコラムは米国DMCAのプロバイダ責任制限規定についての報告書のレポートです。
※これから出てくる用語解説※
・DMCA=米国のデジタルミレニアム著作権法
・ノーティス・アンド・テイクダウン=権利侵害を主張する者からの通知により、
プロバイダが権利侵害情報か否かの実態的な判断を待たずに、
当該情報の削除等の措置を行うことにより、当該削除に係る責任を負わないこととするもの。
前回までのコラムはこちらから
https://jrrc.or.jp/category/yamamoto/
◆◇◆山本隆司弁護士の著作権談義(93)━━
-米国DMCA報告書①-
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米国著作権局は、1998年制定のDMCAのプロバイダ責任制限規定(著作権法512条)について、
2020年5月、立法後の技術とビジネスの発展およびこれに対応した裁判例の動向を踏まえた上で、
問題点を検討し、改正点について勧告を報告しました。
論点は多岐にわたっていますので、何回かに分けてご紹介したいと思います。
まず今回は、米国著作権法512条が定めるプロバイダ責任制限規定の特徴をご紹介したいと思います。
この規定は、一方でオンラインサービスプロバイダ(OSP)が予期せぬ著作権侵害責任のためにその事業活動を萎縮してしまわないよう、
著作権侵害責任を負う場合について明確な基準(セイフハーバー)を設けること、
他方で、オンライン上で蔓延る安易な侵害から著作権者の正当な利益を保護することを、目的としています。
まず、セイフハーバーを定めるに当たって、OSPを4つの類型に分けています。
a.接続サービスを提供するOSP(512条(a))、
b.システムキャッシングを提供するOSP(512条(b))、
c.ホスティングサービスを提供するOSP(512条(c))と、
d.インデックスサービスを提供するOSP(512条(d))です。
ホスティングサービスを提供するOSPに対するセイフハーバーが最も問題のとなりますので、これを例にセイフハーバーのあり方を紹介します。
ホスティングサービスを提供するOSPに対するセイフハーバーは、「ユーザーの指示により素材を蓄積したことによって」生じた著作権侵害について、
以下の要件を満たす場合にその責任を免除するものです。
①侵害の存在を知りまたは知りうる状況を認識した場合には、直ちに削除またはアクセスを解除すること(512条(c) (1) (A))。
②侵害行為をコントロールする権利および能力を有する場合、かかる侵害行為に直接起因する経済的利益を受けないこと(512条(c) (1) (B)) 。
③いわゆる「ノーティス・アンド・テイクダウン手続」(512条(c)(3))をとること(512条(c) (1) (C))。
④著作権侵害主張の通知を受けるための代理人を指定し、その情報を当該OSPサービス上で公開しかつ著作権局長に届け出ること(512条(c)(2))。
⑤反復侵害者に対して契約解除する運営方針を採用し合理的に実行すること(512条(i)(1)(A))。
⑥著作物を保護する標準的な技術的手段を導入しかつこれを阻害しないこと(512条(i)(1)(B))。
他方、権利者の利益を保護するために、
①「ノーティス・アンド・テイクダウン手続」(512条(c)(3))として、
権利者がOSPに対して侵害物を特定する情報(URL)など所定の情報を記載した通知を送ると、
OSPは直ちに削除等する必要があります。日本の制度ではOSPが侵害の成否について判断したうえで削除等することが必要ですが、
DMCAではOSPが侵害の成否を判断する必要はなく、適法な通知があれば直ちに削除等することが求められています。
また、
②権利者が発信者に対して直接、訴訟を提起しうるよう、「発信者情報開示制度」を設けています(512条(h))。
権利者は、OSPに対する前記通知を連邦地方裁判所の書記官に提出して、OSPに対する発信者情報開示命令の発布を求めることができます。
侵害の成否を判断する証拠の提出は必要なく、書記官はその判断をすることなく、命令を発布します。
権利者は当該命令に基づいて、OSPから発信者情報の開示を受けることができます。
なお、日本の制度では、実際上、権利者は、OSPに対して発信者情報の開示を求める訴えを裁判所に提起して、
著作権侵害の成立を証明して初めて発信者情報の開示を受けることができ、
その上であらためて発信者に対して訴訟を提起して著作権侵害の成立を証明することとなります。
要するに、
DMCAでは、侵害の有無の判断および発信者情報の開示を求める訴えに応対する負担からOSPを解放しているのです。
次回は、OSPへの該当性をめぐる争点について、ご紹介したいと思います。
以上
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