JRRCマガジン No.166 訴訟費用回復請求権

山本隆司

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JRRCマガジン No.166  2019/5/23
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21日の米国での米国通商関係者の協議につづき、24日は日本で
米国通商関係者と会談が行われるようですね。日本にどのよう
な影響があるか気になるところです。
さて、今回の山本隆司弁護士のコラムは「訴訟費用回復請求権」
についてです。
◆◇◆山本隆司弁護士の著作権談義━━━━━━━━━━━

第75回「訴訟費用回復請求権」

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 米国での著作権侵害訴訟は、巨額の費用が掛かります。如何
に高額な判決が下されるのかを示す事例が、最近のアメリカ連
邦最高裁判所の判決にあったので紹介します。
 オラクルは、自社のソフトウェアの保守サービスを提供して
います。リミニ・ストリートは、オラクルソフトの保守サービ
スを提供し始めました。オラクルは、リミニ・ストリートを、
著作権の侵害ならびにカリフォルニア州およびネバダ州の不正
アクセス法違反で、ネバダ連邦地裁に訴えました。
連邦地裁は、その請求を認め、リミニ・ストリートに対して、
著作権侵害の損害賠償として35.6百万ドル(約39億円)、
州法違反の損害賠償として14.4百万ドル(約16億円)、弁護
士費用の賠償として28.5百万ドル(約31億円)、裁判費用の
回収として4.95百万ドル(約5億円)、訴訟経費の回収として
12.8百万ドル(約14億円)、合計96.25百万ドル(約106
億円)の支払いを命じました。
控訴を受けた第9巡回区連邦控訴裁判所は、裁判費用の回復額
を3.4百万ドル(約4億円)に減額したほかは、地裁の判決を
認めました。
 おそらく、敗訴したリミニ・ストリート自身も、同額程度の
費用を支出していると推測されますから、リミニ・ストリート
がこの裁判で負担する費用と賠償額は、総額で155億円程度
に達します。他人事ながら、その支払いに窮して倒産するので
はないかと心配してしまいます。
 さて、最高裁まで争われた論点は、勝訴当事者が、当事者申
請の鑑定証人の経費、電子証拠開示の経費および陪審コンサル
タントの経費といった訴訟経費を、敗訴当事者から回収するこ
とができるかというものでした。というのは、アメリカ著作権
法505条は、裁判所は勝訴当事者が相手方から「すべての費用
(costs)の回収」を与えることができると規定しているからです。
 アメリカ連邦法は、いろいろな法律で、勝訴当事者に同様の
裁判費用回収請求権を認めています。それを受けて、連邦民事
訴訟法1920条が、回収できる費用(costs)として6種類を挙げ
ています。しかし、当事者選任の鑑定証人の経費、電子証拠開
示の経費および陪審コンサルタントの経費は、その中に含まれ
ていません。なお、裁判所選任の鑑定証人の経費は、連邦民事
訴訟法1920条所定の回収できる費用に挙げられています。
 ところが、第9巡回区連邦控訴裁判所は、これを拡大解釈し
て、回収できる費用(costs)にこれらも含まれると解釈して
きました。今回の連邦最高裁判決は、この解釈を覆し、当事者
選任の鑑定証人の経費、電子証拠開示の経費および陪審コンサ
ルタントの経費は、連邦民事訴訟法1920条が、回収できる費用
(costs)6種類に該当しないから、勝訴当事者はその回収を
求めることができないと判示したものです。

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お詫びと訂正
「3月14日付メルマガ?160第73回「追求権」内に訂正がございます。
正:カリフォルニア州の追及権は、その施行(1977年1月1日)から
40年以上も運用されてきている
誤:カリフォルニア州の追及権は、その施行(1977年1月1日)から
50年以上も運用されてきている」
お詫びして訂正させていただきます。
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