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JRRCマガジン No.116 2017/9/29
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さっきまで夕焼けがきれいだったのに。。。
秋の日は釣瓶落とし、と感じる時節になりました。
皆さまいかがお過ごしですか?
今回の山本隆司弁護士のコラムは「著作物個数論の日米比較」です。
一つの著作物の範囲をどのように捉えるか、
日米間の法上における取扱いの差異についてお話し下さいました。
◆◇◆山本隆司弁護士の著作権談義━━━━━━━━
第59回 「著作物個数論の日米比較」
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この連載の初めのころに著作物の個数について書いたことがあります。
たとえば、一つの曲の歌詞と楽曲が一つの著作物を構成するとすれば、
歌詞だけの利用であっても、作曲家の承諾を必要とすることになります。
そのため、一つの著作物の範囲は、重要です。
厳密に見ると当てはまらない裁判例もありますが、著作物の個数は、
常識的な意味での「作品」単位で見るのだと思います。したがって、
一つの思想を表現した作品として完結し、かつ全体から独立した表現の
固まりを、著作物の単位として考えていいのだろうと思います。
しかし、日米の著作権法を比較してみていると、上記の考え方を修正
する必要が明らかになってきます。日本法では、共同著作物は、「二人
以上の者が共同して創作した著作物であって、その各人の寄与を分離して
個別的に利用することができないもの」(2条1項12号)と定義されて
います。他方、米国法では、共同著作物を「二以上の著作者が、各々の
寄与物を分離できないまたは相互に依存する部分からなる単一物に統合
する意図をもって、作成する著作物」(101条)と定義しています。
したがって、たとえば、作詞家と作曲家が一つのテーマの基に協議の
上それぞれ歌詞と楽曲を作成した場合、日本法では、歌詞と楽曲は別々
の著作物で著作者もそれぞれになります。他方、米国では、歌詞と楽曲
は両者の共同著作物となります。つまり、米国法では、歌詞と楽曲は一つ
の著作物を構成します。同様に、小説家とイラストータが協議して作成
された小説の挿絵も、日本法では小説と挿絵は別個の著作物ですが、
米国法では小説と挿絵は共同著作物になります。
以上の著作物の範囲の考えからは、共同著作物のみに止まりません。
たとえば、日本では同一人が一つの曲について歌詞と楽曲を作成した
場合も、歌詞と楽曲は一つの著作物とは考えられず、別個の著作物と
考えられます。同様に、同一人が小説と挿絵を作成した場合も、小説
と挿絵一つの著作物とは考えられず、別個の著作物と考えられます。
前述のとおり、作品単位が著作物単位の基準になります。したがって、
各表現が一つの思想を表現するために相互依存の関係にあれば一つの
著作物を構成する。米国法の著作物概念はこの考え方をそのまま適用
できます。他方、日本法では、各表現が一つの思想を表現するために
相互依存の関係にあったとしても、一つの著作物を構成するのではなく、
各表現が分離して個別的に利用することができない関係(以下「分離
可能性」ということにします)にあるものだけが一つの著作物を構成
することとなります。いいかえれば、日本法上は、常識的な意味での
一つの作品であっても、各パーツ間に分離可能性のない単位ごとに
別個の著作物になります。
その結果、分離可能性をどのように解釈するか、広く解釈するか、
狭く解釈するかによって著作物の個数・範囲が異なってくることに
なります。たとえば、5人が共同執筆した論文において、Aが各図表を、
B~Eが第1章から第4章を分担して作成した場合において、第1章の
図表1のみを誰かが無断使用した場合、分離可能性の解釈によっては、
Aに対する侵害のみが成立するとも、AとBに対する侵害のみが成立
するとも、A~Eの5人に対する侵害が成立するとも、考えられます。
このように、著作物の個数論は、著作物の利用に当たって重要な
問題ですが、あまり議論されてはいません。
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