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JRRCマガジン No.446 2025/11/27
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◆今回の内容
【1】大和先生の「著作権に関する意識の普及啓発(著作権教育)について考えてみた」⑤
【2】【12/4開催】「オンライン著作権講座 初級」開催のお知らせ
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皆さま、こんにちは。いかがお過ごしでしょうか。
本日11月27日は「ノーベル賞制定記念日」
スウェーデンの化学者・発明家アルフレッド・ノーベルが1895年のこの日に遺言書を残し、
「自らの遺産を人類の発展に貢献した人々に授与する賞として使うように」と定めたことに由来しているそうです。
さて、今回は大和先生の著作権に関する意識の普及啓発(著作権教育)についてです。
大和先生の前回までの記事は下記からご覧いただけます。
https://jrrc.or.jp/category/yamato/
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【1】大和先生の「著作権に関する意識の普及啓発(著作権教育)について考えてみた」⑤
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千葉大学アカデミック・リンク・センター特任教授 大和 淳
【承前】
前回は初等中等教育段階における著作権教育の課題について,児童生徒に対する指導を考える場合の教員の意識の持ち方という視点から考えてみました。学習指導要領に一定の記述がありますが,実際の指導場面ではまだまだ悩みや迷いがあるというのが実情です。
【高等教育における著作権教育(教育課程の面から)】
高等教育とは一般的に,大学・短期大学・高等専門学校における教育を指し,専修学校高等課程における教育も高等教育に準じる教育といわれています。本稿では主として大学における教育を念頭に置き説明します。
大学における教育は,初等中等教育とは異なり,全国統一の教育課程の基準はありません。どのような授業科目を開設するか,その授業科目でどのような内容を取り扱うかなどについては,各大学・学部が定める卒業認定・学位授与の方針(ディプロマ・ポリシー),教育課程編成・実施の方針(カリキュラム・ポリシー)に基づいて決められます。それは大学の自治(自律性)や学問の自由(憲法第23条)の視点から導かれます(「国民における学問の自由」だけでなく「大学という教育機関における学問探求の自由」までをも含むことについては,東京大学ポポロ劇団事件(昭和38年5月22日最高裁小法廷判決)などが認めています。)。その結果,大学において著作権教育がどのように行われるかについては,大学によって様々であるということになります。
とはいえ,知識経済社会が拡大したり,知的財産に関する関心や意識が高まったりする中で,そのような社会の変化に大学も対応していかなければならないことから,著作権法などの知的財産権を専門として教育研究する人材を登用し,それに関連する授業科目を開設する大学が増えてきていることは事実です。ただ,筆者が問題意識を抱いているのは,法律系の学部が著作権法に関する教育(いわゆる専門教育)をどのように行っているかということではなく,それ以外の場面で大学として著作権教育をどのように展開していくかということです。
例えば,学部等の専門分野の違いに関わらず,大学生であればこの程度は知っておくべきという,高等教育としての共通的な基礎知識というものもあるはずです。かつての大学には教養部という課程があり,そこで高等教育レベルのジェネラルな教育が行われていましたが,その当時にはおそらく著作権への関心はほとんどありませんでしたので,高等教育レベルの著作権教育に関する指導実践や研究はほとんどなされていなかったように思われます。今日,改めて大学におけるリベラルアーツの重要性が注目されており,知的財産の尊重などはその有力なテーマとなるような気もしますが,少子化に伴う18歳人口の減少を受けてどの大学も組織運営に苦慮しており,なかなかそこまで手が回らないというところかもしれません。
また,工業デザインに関する学部,情報工学に関する学部,芸術に関する学部,教員養成に関する学部等では,それらの学部の卒業生の進路を考えると,今日の社会では一定程度の著作権に関する知識が必要になってきているだろうと思われます。おそらくそれは法学部で学修するような内容・程度までは要求されないものの,その領域(業界)で働こうとする以上,知っておかなければならないものでしょう。このような分野に対する著作権教育も徐々に広がりつつあるようには見えますが,前述のカリキュラム・ポリシーの中でどう整合性を図るかという点も考えねばならず,非常勤講師だよりではなかなか成果が見えにくいという部分があるのかもしれません。
筆者は,高等教育段階では,このような視点から著作権教育の開発が遅れているのではないかという問題意識をもっています。この問題についても初等中等教育と同様に,どのような内容を教えるかということと誰が教えるかという二つの側面から検討していかなければなりません。
【高等教育における著作権教育(教育内容の面から)】
まず内容に関して言えば,先述の「高等教育としての共通的な基礎知識」については,初等中等教育と高等教育との間の教育内容の接続が課題でしょう。前回,初等中等教育では学習指導要領において「著作権の重要性について扱うこと」と記述されているものの,それだけでは具体的内容が分かりにくいのではないかということを述べました。初等中等教育段階で学んでおくべき著作権に関する基礎的な内容が不明確であれば,それを受けて展開する高等教育段階での基礎的内容を定めようがありません。その結果,大学でも「やってはいけない」式の教育になってしまうおそれがあります。学生の方でも,そのような教条的な指導を受けても高をくくってこれくらいは問題ないと増長してしまうかもしれません。SNSが身近になった学生にとってはそのような増長は危険です。このような状況は著作権教育が本来的に目指している姿では決してないと考えています。
それでは高等教育段階で(学部を問わず共通に)必要な,著作権に関する最低限の内容は何かと問われれば,「作品や作者の尊重」「私権」「契約自由の原則」ではないかと考えています。この連載の以前の号で,小学校段階であれば「カギかっこを付けよう」という指導だけでも十分と述べましたが,大学であっても極端に幅を広げる必要はなく,必修内容としては「作品や作者の尊重」を軸としてスパイラル状に高めていけばよいのではないかということです。その上で「尊重」のための具体的手段として,大学生レベルであれば「私権」「契約自由の原則」が理解できればよいのではないでしょうか。
著作権法や制度の専門家はとかく定義や構成要件の解説をしがちですし,学修者の側もともすれば「どうすれば(無断で)利用できるか」ということに関心が向きがちです。もちろん,そのような内容について,本人に興味・関心があったり,職務遂行上の知識として必要であったりする場合に,適切な知識や情報が得られるようにしておくことは重要ですが,それは決して全員に共通して必要な内容ではないのではないかと思います。共通的・必修的内容と選択的・発展的内容を発達段階に応じて明確化しておくことがまず大切ではないでしょうか。伝統的な教科や学術分野であれば,長い歴史の過程で学習内容の体系が構築されてきていますが,著作権教育に関しては,その点が未発達ではないか,そのため,あれをやってはダメ,これは法で禁じられているといった誤解を含んだ指導になってしまう傾向があるのではないか,という気がします。
デジタル技術やネットワーク技術の急速な発展の一つの成果としてコンテンツの多様な利用方法が開発されてきており,新たな利用には著作権に関わる問題が生じることも少なくありません。その都度,「○○技術と著作権」というような見出しで社会の関心を集めますが,初学者にとっては「あれも著作権,これも著作権」「著作権って複雑」ということになってしまいます。新たな技術と著作権というようなテーマは先端的な課題であって,議論も分かれ,場合によっては着地点がまだ見えていないようなものもあります。筆者は個人的には,このようなテーマについて初学者が「これを知っておかなければならない」と慌てて食いついていく必要はないのではないか,「作品や作者の尊重」「私権」「契約自由の原則」を十分に理解し,かつそれを応用する見方や考え方を身に付けることが重要ではないかと考えていますが,いかがでしょうか。
次回は,高等教育における著作権教育について指導体制の面から考えてみます。また,授業による教育以外の普及啓発に関しても触れてみたいと思います。
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【2】 【12/4開催】「オンライン著作権講座 初級」開催のお知らせ
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今年度2回目となる著作権講座(初級)を12月4日(木)にオンライン で開催いたします。
本講座は著作権法を学んだことのない初心者向けの講座です。著作 権法の体系に沿って著作権制度の概要を分かり易く解説するととも に、理解を深めるために重要判例や最新の情報についてもお話いた します。
参加ご希望の方は、著作権講座受付サイトよりお申込みください。
★開催日時:2025年12月4日(木) 13:30~17:00★
プログラム予定
13:30~15:05 第1部 著作権制度の概要
15:05~15:15 休憩
15:15~15:30 JRRCの管理事業について
15:30~16:40 第2部 最近の著作権制度の課題等
16:40~17:00 質疑応答
17:00 終了予定
★ 受付サイト:https://jrrc.or.jp/event/251111-2/ ★
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