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JRRCマガジン No.455 2026/2/5
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※マガジンは読者登録の方と契約者、 関係者の方にお送りしています。
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◆今回の内容
【1】方先生の中国におけるAIと知的財産制度・判例の動向1
【2】【2/26開催】「オンライン著作権講座 中級」開催のお知らせ
【3】日本行政書士会連合会主催「著作権普及啓発実践セミナー」開催のお知らせ
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皆さま、こんにちは。いかがお過ごしでしょうか。
2月5日は「プロ野球の日」
日本野球連盟の前身にあたる全日本職業野球連盟が1936年2月5日に結成されたことにちなんで記念日が設けられたそうです。
そのため職業野球連盟設立の日とも言われております。
さて、今回から方先生の連載は「中国におけるAIと知的財産制度・判例の動向」となります。
方先生の前回までの記事は下記からご覧いただけます。
https://jrrc.or.jp/category/fang/
◆◇◆【1】方先生の中国におけるAIと知的財産制度・判例の動向 ━━━━━
1 中国における人工知能関連法制度の最新動向
~2026年改正「サイバーセキュリティ法」が著作権およびコンテンツ管理に与える影響~
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中国弁護士・中国弁理士 方 喜玲
一、はじめに
生成系人工知能およびアルゴリズムによるコンテンツ推薦(以下「推薦アルゴリズム」ともいう)技術の普及により、コンテンツの創作、流通および管理の在り方は大きな変化を遂げています。文章、画像、音楽等の作品は、人工知能システムによって自動生成、加工または再構成されるようになり、従来の著作権管理体制は、権利の識別、使用状況のモニタリング、責任の所在の分配といった点において、新たな課題に直面しています。
このような背景の下、中国では近年、人工知能に関連する法制度の整備が段階的に進められてきました。2026年 1月1日に施行される改正「中華人民共和国サイバーセキュリティ法」は、国家レベルの基本法において初めて人工知能に言及し、関連技術の管理に対して原則的な法的根拠を示しています。同法は著作権を直接の対象とするものではありませんが、その中に示された制度的理念は、コンテンツ管理および著作権実務に対し、一定の間接的影響を及ぼすものと考えられます。
本稿では、制度分析の観点から、当該改正における人工知能関連条項の内容を整理した上で、著作権およびコンテンツ管理との関係性について検討します。
二、中国における人工知能関連法制度とコンテンツ管理との関係
(一)基本法によるコンテンツ利用への間接的規律
中国の現行法体系において、人工知能はなお独立した立法対象として明確に位置付けられているわけではありませんが、以下の法律は、一定の範囲で人工知能のコンテンツ分野における利用に影響を及ぼしています。
1.「民法典」
不法行為責任および人格権保護に関する規定を通じて、人工知能によって生成または流通するコンテンツが権利侵害を引き起こした場合の一般的な責任根拠を提供しています。
2.「データセキュリティ法」
データの収集、処理および利用に対して階層的管理を行い、大規模なコンテンツデータを用いたモデル訓練に関し、コンプライアンス上の影響を及ぼしています。
3.「個人情報保護法」
個人情報を含むコンテンツデータ、ユーザープロファイルおよび推薦アルゴリズムに対して厳格な制限を設け、コンテンツ配信メカニズムの設計に一定の制約を与えています。
これらの法律はいずれも著作権の帰属そのものを直接規律するものではありませんが、コンテンツの取得、処理および再利用に対して法的な境界を画する役割を果たしています。
(二)行政規則および部門規則
近年、中国では行政規則の形で、人工知能の特定の利用場面に対する規定が進められてきました。具体的には、生成系人工知能サービスにおけるコンテンツの適法性およびデータソースの要件、アルゴリズム推薦サービスにおける公平性・透明性および利用者の知る権利、人工知能によって生成または合成されたコンテンツの表示義務などが定められています。
主な規定としては、以下が挙げられます。
•「生成系人工知能サービス管理暫行弁法」(2023年8月15日施行)
•「インターネット情報サービス・アルゴリズム推薦管理規定」(2022年3月1日施行)
•「人工知能生成・合成コンテンツ表示弁法」(2025年9月1日施行)
これらの制度は、実務上、コンテンツプラットフォームやサービス提供者によるコンテンツ審査、配信制御およびリスク管理に用いられており、著作権集団管理団体が関心を有する使用状況のモニタリングの仕組みとも交錯しています。
三、改正「サイバーセキュリティ法」における人工知能条項の制度構造
改正後の「サイバーセキュリティ法」では、新たな条項が追加され、人工知能の発展およびガバナンスについて原則的な規定が設けられました。具体的な条文は以下のとおりです。
(新設条項)第20条
国は、人工知能の基礎理論研究およびアルゴリズム等の中核技術の研究開発を支援し、訓練データ資源および計算能力等の基盤整備を推進し、人工知能の倫理規範を整備し、リスクの監視・評価および安全監督管理を強化し、人工知能の応用および健全な発展を促進する。
国は、ネットワークセキュリティ管理方式の革新を支援し、人工知能等の新技術を活用し、ネットワークセキュリティ保護水準の向上を図る。
本条文の内容は、以下の点に整理することができます。
•人工知能の基礎研究および中核技術開発の支援
•訓練データ資源および計算基盤の整備推進
•人工知能倫理規範の整備
•人工知能に関するリスクの監視、評価および安全監督の強化
•人工知能技術の活用およびネットワークセキュリティ管理能力の向上
本条項は、著作権制度に直接言及するものではなく、具体的な義務を課すものでもありませんが、その示すガバナンスの方向性は、コンテンツ管理を取り巻く制度環境に一定の影響を及ぼすものと考えられます。
四、人工知能条項と著作権・コンテンツ管理との関係性の分析
(一)訓練データのガバナンスと著作権素材の利用
条文における「訓練データ資源」という表現は、人工知能の訓練に用いられる大規模データが、今後も制度上の重要な検討対象となることを示しています。コンテンツ分野においては、著作権で保護された作品が訓練データとして利用され得るのか、その条件は何か、データソースの適法性および追跡可能性、さらには権利者が異議を申し立て、または権利主張を行う制度的余地が存在するかといった点が、直接的な論点となります。
改正「サイバーセキュリティ法」は、これらについて具体的な規定を設けてはいませんが、原則的な文言により、将来的に専門立法または行政規則によって訓練データの適法基準が具体化される余地を残しています。
(二)人工知能倫理規範とコンテンツ配信の公平性
「人工知能倫理規範の整備」という表現は、コンテンツ管理および著作権実務において、アルゴリズム推薦の公平性および透明性と結び付く可能性があります。例えば、推薦アルゴリズムが異なる創作者や作品の可視性に与える影響、自動生成コンテンツが既存の創作者の経済的利益に及ぼし得る影響、またプラットフォームにおける順位付け、推薦および非表示に関する情報開示の在り方などが、倫理規範の具体的検討対象となり得ます。
(三)リスク監視メカニズムとコンテンツ識別技術の制度的背景
条文に示された「リスクの監視・評価および安全監督」は、人工知能の応用に対する継続的な管理を重視するものです。コンテンツ分野では、人工知能技術はすでに著作権コンテンツの識別、無許諾利用の監視、大規模配信におけるリスクスクリーニング等に広く活用されています。本条項は、制度上、管理および監督における人工知能技術の役割を肯定するものであり、将来的に著作権管理の分野において自動化ツールを一層導入するための政策的環境を提供するものと位置付けられます。
(四)コンテンツ表示制度と追跡可能性との制度的接続
人工知能によって生成されたコンテンツに対する表示義務は、すでに他の行政規則において制度化されています。改正「サイバーセキュリティ法」における原則規定は、これらの制度に対する上位法的な背景を与えるものであり、コンテンツ管理実務において、コンテンツの出所表示、生成方法の区別、権利紛争における事実認定の実効性を高めることに寄与すると考えられます。
五、著作権管理機関に対する制度的示唆
著作権集団管理およびコンテンツ・ガバナンスの観点から見ると、改正後の「サイバーセキュリティ法」は、著作権制度を直接の規制対象とするものではないものの、人工知能を巡る制度環境の変化として、いくつかの重要な示唆を含んでいると考えられます。
まず、人工知能の訓練において利用されるコンテンツの適法性については、今後、制度的検討が求められる論点として位置付けられる可能性があります。とりわけ、著作権で保護された作品が訓練データとして用いられる場合の法的評価や、データ利用の透明性、権利者の関与の在り方などは、今後の法制度や実務運用の中で整理が進むことが想定されます。
また、コンテンツ配信において用いられるアルゴリズムによる推薦については、その公平性および透明性が、段階的に規範的検討の対象となる可能性があります。アルゴリズムが作品の露出や流通に与える影響は、創作者や権利者の経済的利益とも密接に関係しており、今後、コンテンツ管理の観点からも、一定の関心を集める論点となることが考えられます。
さらに、人工知能を用いた自動化されたコンテンツ識別技術については、著作権の権利管理や利用状況の把握において、今後その役割が一層拡大していく可能性があります。こうした技術は、無許諾利用の検出や大規模なコンテンツ管理の効率化に資する一方で、その運用方法や精度に関する検討も併せて求められることになります。
これらの動向はいずれも、著作権法の規定から直接導かれるものではなく、人工知能ガバナンス体制の整備が進展する中で生じる制度構造上の影響として位置付けることができます。
六、おわりに
以上のとおり、2026 年に施行される改正「サイバーセキュリティ法」は、原則規定を通じて人工知能を基本法の枠組みに組み込みました。同法は著作権その他の知的財産制度を直接的に規制するものではありませんが、データ、倫理およびリスク管理に関する全体的な制度設計は、コンテンツ管理および著作権実務に対して新たな制度的背景を提供しています。生成系人工知能の発展が続く中、中国における関連法制度の今後の展開については、コンテンツ管理および著作権運用の実務レベルにおいて、引き続き注視していく必要があると考えられます。
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【2】【2/26開催】「オンライン著作権講座 中級」開催のお知らせ
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今年度2回目となるJRRC著作権講座中級を開催いたします。
本講座は知財法務部門などで実務に携わられている方、コンテンツビジネス業界の方や以前に著作権講座を受講された方など、著作権に興味のある方向けです。
講師により体系的な解説と、最新の動向も学べる講座内容となっております。
エリアや初級受講の有無やお立場にかかわらず、どなたでもお申込みいただけます。
参加ご希望の方は、著作権講座受付サイトよりお申込みください。
★日 時:2026年2月26日(木) 10:30~16:50★
プログラム予定
10:30 ~ 12:05 第1部 知的財産法の概要、著作権制度の概要1(体系、著作物)
特集①著作物について(境界領域)
12:05 ~ 13:00 休憩
13:00 ~ 13:15 JRRCの紹介
13:15 ~ 14:15 第2部 著作権制度の概要2(著作者、権利の取得、権利の内容、著作隣接権)
14:15 ~ 14:25 休憩
14:25 ~ 15:25 第3部 著作権制度の概要3(保護期間、著作物の利用、権利制限、権利侵害)
15:25 ~ 15:35 休憩
15:35 ~ 16:20 第4部 特集②出版社の権利について
16:20 ~ 16:50 質疑応答
16:50 終了予定
★ 受付サイト:https://jrrc.or.jp/event/260128-2/ ★
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【3】日本行政書士会連合会主催「著作権普及啓発実践セミナー」開催のお知らせ
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2月25日(水)に日本行政書士会連合会主催の著作権普及啓発実践セミナーが開催されます。
下記URLより詳細をご確認のうえ、是非ご参加ください。
★ https://www.gyosei.or.jp/news/20251225 ★
【セミナー概要】
日 時:令和8年2月25日(水)12:30 開場 13:00 開始(16:30 終了予定)
場 所:イイノホール
(東京都千代田区内幸町2-1-1 飯野ビルディング 霞ヶ関駅C4番出口直結)
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