JRRCマガジンNo.453 最新著作権裁判例解説37

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JRRCマガジン No.453   2026/1/22
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◆今回の内容
【1】濱口先生の最新著作権裁判例解説
【2】【1/28開催】 オンライン著作権講座開催のご案内(JRRC・大阪工業大学主催)
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皆さま、こんにちは。いかがお過ごしでしょうか。

本日1月22日は「飛行船の日 」
1916(大正5)年1月22日、日本ではじめて国産飛行船の飛行実験を
成功させた出来事にちなんで、記念日に制定されたそうです。

濱口先生の記事は下記からご覧いただけます。
https://jrrc.or.jp/category/hamaguchi/

◆◇◆━【1】濱口先生の最新著作権裁判例解説━━━
最新著作権裁判例解説(その37)
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                              横浜国立大学大学院国際社会科学研究院教授 濱口太久未

  今回は、知財高判令和7年8月28日(令和6年(ネ)第10085号)〔ホストクラブ体験投稿動画の同クラブ店頭モニター放映事件〕を取り上げます。

<事件の概要>
 本件は、インターネット上の動画サイト YouTubeで人気ユーチューバーとしてチャンネルを開設する被控訴人A(1審原告。YouTube で「Rちゃん」という名でチャンネルを開設して動画を配信するいわゆるユーチューバーであり、そのチャンネル登録者数は84万人を超えている)と、同人のタレント活動のマネジメント等を行う会社である被控訴人会社(1審原告)が、控訴人(1審被告。飲食店を経営している会社であり、東京都新宿区歌舞伎町において「AGENT」というホストクラブ(「本件ホストクラブ」)を運営している)により、別紙著作物目録記載1及び2の動画(以下、項番の順に「本件動画1」、「本件動画2」といい、併せて「本件動画」という。)を無断で使用されたとして、控訴人に対し、不法行為に基づき、損害賠償を求めた事案です。
 本件動画の各内容は以下の通りであり、控訴人による本件動画の無断使用とは本件ホストクラブの店頭設置モニターの映像として本件動画を一定期間使用した事実を指しています。
・本件動画1:令和3年11月2日から、YouTube 上の「ヘラヘラ三銃士」という名称のチャンネルに投稿されたものである。本件動画1は、Rちゃん及び「ヘラヘラ三銃士」の出演者 が出演し、本件ホストクラブを体験する中で、自身の体験や感想等を述べる内容の動画になっている。
・本件動画2:令和4年8月16日から、被控訴人Aが「Rちゃん」のチャンネル内に投稿した動画であり、本件ホストクラブを体験する中で、自身の感想等を述べているものであり、被控訴人Aは、被控訴人会社に対し、本件動画2の著作権を譲渡している。
 なお、控訴人においては、原審において、口頭弁論期日に出頭せず、答弁書その他の準備書面を提出しなかったため、控訴人において請求原因事実を争うことを明らかにしないものとして自白したものとみなされ、被控訴人らの請求が全部認容されたという経緯があります。

<判旨(被控訴人Aに係る著作者人格権関係部分のみ)>
 原判決を一部変更しつつ、被控訴人らの請求を一部認容。
(被控訴人Aに生じた損害につき、)「・・・によれば、控訴人は、本件ホストクラブの店頭モニターで、本件動画2の映像外の右側箇所に、縦書きで「【豪遊】Rちゃん」という文字を付し、左側箇所には、縦書きで2行にわたり「 B とホスト遊びしたらハマりそうでやばい wwwwww」という文を付して、本件動画2を放映していたことが認められる。そして、「豪遊」の文字が、一般に、金銭を惜しみなく使って派手に遊ぶことを意味するものであることを考慮すると、控訴人による上記の態様での本件動画2の使用は、本件動画2の題号(タイトル)を改変し、「Rちゃん」が「豪遊」していることを殊更に強調して、風俗店で派手に遊ぶような淫らな行為をする人物であることを知らしめるものであり、これは被控訴人Aの社会的信用を一定程度低下させ、また、その著作者人格権(同一性保持権)を侵害するものであるといえる。
もっとも、本件においては、本件動画2の映像内容が改変されたものではなく、本件動画2の元の題号にも「【豪遊】」の文字は入っていた・・・。また、本件動画2の映像自体によっても、被控訴人Aが本件ホストクラブで遊興していることが判明するのであり、映像自体の訴求力の強さからして、通行人等は、映像に大きな関心を寄せ、「【豪遊】」の文字にはさほど関心を寄せないであろうことも容易に推認される。そして、控訴人による本件動画2の具体的な使用期間も本件では不明である。
以上のほかに、本件に現れた諸般の事情を考慮し、上記の態様での本件動画2の使用により被控訴人Aに生じた精神的苦痛を慰謝するに足りる金額を20万円と認める。」

<解説>
 今回の事案においては、著名なユーチューバーを巡っての事件であることから、そのパブリシティ権侵害の有無が第一の争点になっているところ、パブリシティ権の問題については機会をみて別の回の解説に譲ることとし、今回はその対象となった動画の題号に係る同一性保持権について申し述べます。
 同一性保持権の保護客体は予て申しているように著作物だけでなくその題号にも拡張されており(著作権法第20条第1項)、今回の事案では動画本体ではなく題号の改変が問題となっています。
 抑々題号に関しては、旧著作権法(明治32年法律第39号)第18条の原始規定においても「著作權ヲ承繼シタル者ハ著作者ノ同意ナクシテ・・・其ノ題號ヲ改メ又ハ其ノ著作物ヲ改竄スルコトヲ得ス」として、当初から保護されていたところです(注1)。題号は一般的にいって著作物としての保護を受けない場合が多いと捉えられているところ(注2)、初期の時点で題号をも同一性保持権の保護客体に加えていた理由の詳細は明らかではありませんが、旧著作権法の起草者である水野錬太郎先生がこの第18条の解説として「凡ソ著作者ノ著作ヲ爲スヤ非常ニ心神ヲ勞スルモノナレハ他人ハ著作者の許諾ナケレハ一字一句ト雖モ之ヲ改竄ス可カラス」(注3)と述べておられることからすれば、少なくとも文字表現に係る同一性保持権の保護において、本文と題号とを区別して取り扱うべきとする意識はなかったものと思われます(注4)。

 さて、今回の事案において、本件動画2のタイトルが被告人側店頭モニターでどのように表示されていたのかについては、判決文と判決別紙とを照合すると以下のようなものであったとされています(判決文によれば、映像自体は変更されていません)。
〇動画2 チャンネル名「Rちゃん」のタイトルは「【豪遊】 B とホスト遊びしたらハマりそうでやばいwwwwww」とされている
〇動画2の控訴人側店頭モニター表示
 ・動画映像外右側・縦書き2行で「【豪遊】Rちゃん」と、
 ・動画映像の(やはり外か?)左側・縦書き2行で「B とホスト遊びしたらハマりそうでやばいwwwwww」と各々表示

 今回の被控訴人側による同一性保持権侵害の主張については、判決文の整理によると、被控訴人Aに生じた損害論について述べる中で「本件動画2については、控訴人により「【豪遊】Rちゃん」というテロップが付され、被控訴人らが予期しない形で公衆の面前で公開されていた・・・。控訴人は、勝手にテロップを加えて動画を放映するとともに、「豪遊」との文言を使用することで、被控訴人Aが、本件ホストクラブで過剰に金銭を支出し、派手に遊んでいるような印象を持たせ、被控訴人Aの社会的信用を低下させた。
また、本件動画2の著作者は被控訴人Aであるところ、上記のように動画を修正し、かつ、被控訴人Aの社会的信用を低下させたのであるから、控訴人は、被控訴人Aの著作者人格権(同一性保持権、名誉声望保持権)も侵害し、被控訴人Aは多大な精神的苦痛を受けた。」として、動画に対する予期せぬテロップ追加に起因する被控訴人Aの社会的信用の低下と、著作権法第20条第1項乃至同法第113条第11項に係る侵害行為による損害の発生といった混在的且つ多層的な状態での主張となっていました。
 これに対し裁判所においては、この被控訴人Aの被った損害論の判断において、上記の変更が題号の改変に該当するものとして、条項単位でみればこれは同一性保持権の侵害に当たるものであると明言しつつ(第113条第11項の著作者人格権みなし侵害については言及なし)、より詳しくは、1)このような変更が被控訴人Aの社会的信用を一定程度低下させるものであるとともに同一性保持権侵害である、2)とはいえ、(具体的な慰謝料の減額・算定につながる事情として、)元々の題号にも【豪遊】との記載があったし、本件動画2の映像を見れば被控訴人Aが本件ホストクラブで遊興していることは看取できる等々の判示をしています。
 即ち、裁判所においては、「確かに動画のタイトルは一定程度改変されていて、店頭モニター放映によって被控訴人Aの社会的信用は低下しているし、同一性保持権の侵害にも当たっているとはいえるが、改変の程度は映像内容の訴求力の強さや、タイトル+映像内容とで改変前後を全体的に評価してみると、実質的には然程大きな改変とはいえないものだ」と捉えているものと解されるところです。
 被控訴人Aの被った精神的苦痛に対する慰藉の金額については、本解説(その30)で言及したように諸般の事情を参酌して裁判所が裁量的に決定するとされていることから、この部分の裁判所の説示においては、上記のように被控訴人Aの社会的信用の低下と同一性保持権侵害行為の発生とが割とあっさりと連続的に認定されていますが、同一性保持権自体の侵害行為だけを切り出してみると、裁判所においては「今回の動画2に係る控訴人側店頭モニター表示は被控訴人Aの望まない題号変更の表示となっているのであるから、これは著作権法第20条第1項の「著作者の意に反する改変」に該当するものとして、同一性保持権の侵害行為になる」と評価しているものと思われます。
 尤も、このような捉え方は比較的ナチュラルなものであり、さして違和感のない理解であるとは思うものの、一方で動画2の控訴人店頭表示内容は動画2の題号をどのように変更したと言えるのかという点で少し別の見方も可能であるように思われます。
 今回の動画2の現物にはアクセスできておりませんが、現在ネットに上がっているRちゃんの動画例と対比する限り、元の「【豪遊】 B とホスト遊びしたらハマりそうでやばいwwwwww」は当に動画作品のタイトル表示がなされているものと思われるのですが、先に掲載した動画2の控訴人側店頭モニターにおける同様の表示は果たして動画2の題号を表示したものと言えるのか、という問題です。
 ここは評価・見方の分かれ得るところですが、今回の具体的な表示態様からすると、寧ろ右側表示は豪遊するRちゃんが動画の主人公として登場すること、左側表示はRちゃんのホストクラブ体験コメントの内容を各々指しているように見えるのではないでしょうか。即ち、題号に係る同一性保持権との関係では、題号を書き換えているのではなく、 私見的には、題号を切り落とした上で、動画の内容を説明すべく、当該題号の表現を部分的に借用して動画の左右外側に解説的に表示したと考える方がより実態に適合する捉え方なのではないかと解するところです。
実際、判決文における被控訴人側の主張は前掲の通り「勝手にテロップを加えて」とされているところであり、ここからは矢張り題号の文言を別の形で流用したという意識が読み取れます。尤も、仮に今回の行為が題号の切除であったとしても、同一性保持権との関係では、(こと題号に関しては、)「題号の・・・切除その他の改変」という改変行為に当たることには(改変に関する伝統的な考え方に立脚する限り)変わりないところでしょうし(注5)(注6)、付言するならば、このような現象は、文学作品等の場合とは事情を異にすることが多い、とりわけSNS動画に特徴的なタイトルに関して顕在化する問題であろうと考える次第です。今回は以上といたします。

(注1)旧著作権法第18条については、改正を経て最終形は以下の通りとなった(題号は引き続き同条で保護されている)。
 「他人ノ著作物ヲ発行又ハ興行スル場合ニ於テハ著作者ノ生存中ハ著作者ガ現ニ其ノ著作権ヲ有スルト否トニ拘ラズ其ノ同意ナクシテ著作者ノ氏名称号ヲ変更若ハ隠匿シ又ハ其ノ著作物ニ改竄其ノ他ノ変更ヲ加ヘ若ハ其ノ題号ヲ改ムルコトヲ得ス
 他人ノ著作物ヲ発行又ハ興行スル場合ニ於テハ著作者ノ死後ハ著作権ノ消滅シタル後ト雖モ其ノ著作物ニ改竄其ノ他ノ変更ヲ加ヘテ著作者ノ意ヲ害シ又ハ其ノ題号ヲ改メ若ハ著作者ノ氏名称号ヲ変更若ハ隠匿スルコトヲ得ス
 前二項ノ規定ハ第二十条、 第二十条ノ二、 第二十二条ノ五第二項、 第二十七条第一項第二項、 第三十条第一項第二号乃至第九号ノ場合ニ於テモ之ヲ適用ス」
(注2)茶園成樹編『著作権法 第3版』29頁[濱口太久未]
(注3)水野錬太郎『著作權法要義』76頁
(注4)外国法における題号保護の状況については、半田正夫=松田政行編『著作権法コンメンタール1 第2版』819頁[松田政行]を参照。
(注5)第20条第1項の「改変」に係る金子敏哉先生の新説については、本解説(その7-2)脚注18記載の金子論考を参照。
(注6)なお、改変行為のみならず、改変された題号等を提示する行為も同一性保持権侵害となるかどうかについては見解の相違があり得る。前掲注5記載の金子論考等を参照。

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【2】【1/28開催】 オンライン著作権講座開催のご案内(JRRC・大阪工業大学主催)
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ご好評につき今年度も大阪工業大学と共催で著作権講座をオンラインにて開催することとなりました。
本講座は、著作権法を学んだことの無い方や、企業・団体の研究者や学生の方で著作権に関する基礎的な知識をお持ちの方向けとなっております。
学生・企業・団体・個人どなたでも受講は可能ですので、ふるってご参加ください。
今回は著作権制度の概要に加えて、トピックスとして「AIと著作権 」と「コンテンツ産業と著作権(音楽の流通を中心にして)」について講演予定です。

★募集要項★
日 時:2026年1月28日(水) 10:00~15:10 (予定)
会 場:Zoom(オンライン開催)
参加費:無料
主 催:公益社団法人日本複製権センター・大阪工業大学

★講師紹介★
・川瀬 真 氏  公益社団法人日本複製権センターシニア著作権アドバイザー、元文化庁著作権課著作物流通推進室長
・甲野 正道 氏  大阪工業大学大学院 知的財産研究科 教授

★プログラム★(講義の進捗度合いにより時間は変更になる場合があります。)
10:00 ~ 10:05 講師紹介等
10:05 ~ 12:00 著作権制度の概要 【講師】川瀬 真 氏
12:00 ~ 13:00 休憩
13:00 ~ 14:00 トピックス「 AIと著作権 」 【講師】 甲野 正道 氏
14:00 ~ 14:10 休憩
14:10 ~ 15:10 トピックス「 コンテンツ産業と著作権(音楽の流通を中心にして) 」 【講師】川瀬 真 氏
15:10     終了予定

★お申込みサイト★
https://jrrc.or.jp/event/260108-2/

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