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JRRCマガジン No.123 2017/12/19
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12月は半ばを過ぎ、
街はイルミネーションを身に纏い、
私たちを楽しませてくれています。
皆さまはいかがお過ごしでしょうか?
今回の山本隆司弁護士のコラムは「AI著作物の保護」です。
「AI」の言葉をニュースで見ない、聞かない日はないといった昨今。
私たちが大きな期待を寄せる「AI」の著作権法上での取り扱いについて、
これまでの考え方や今後の行方など、海外での動向も交えて、
お話しいただきました。
◆◇◆山本隆司弁護士の著作権談義━━━━━━━━
第61回 「AI著作物の保護」
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10月23日から26日まで、WIPOのアジア・太平洋地域会合が
東京で開催されました。私も、講演を依頼され、参加しました。
「AI著作物の保護とAI時代の著作権」という題でお話ししま
したので、そのポイントをご紹介したいと思います。
かつて、コンピュータが登場し、コンピュータが(で)
作った著作物に対する著作権の保護が議論されたことがあり
ます(1993年11月文化庁公表の「著作権審議会第9小委員会
(コンピュータ著作物関係)報告書」参照)。しかし、当時は、
コンピュータは人の使う道具にすぎませんでした。コンピュ
ータが作った著作物はじつは人の作った著作物として対応すれ
ば足りました。
ところが、2010年以降、コンピュータによる人工知能は
飛躍的な発展を遂げました。深層学習などの情報処理の技術の
発展と、ビッグ・データの登場がその背景にあります。人工
知能は、チェスや将棋や囲碁の世界でも名人に勝つことがある
状況が生まれました。人は、過去の経験で得た限られた範囲の
データと自分のインスピレーションで勝負します。コンピュータは、
過去の網羅的なデータで勝負します。コンピュータには、
インスピレーションがありませんが、過去の網羅的なデータ
には、先人のインスピレーションが詰まっています。したがって、
そこでは、新たなインスピレーションを生み出す天才でなければ、
コンピュータに勝つことは難しいことになります。まさに
人の知能に匹敵する人工知能が登場しつつあります。
人の営みにネット環境が浸透し、人の性向・嗜好に関する
ビッグ・データが集められています。このような人の営みに
関するビッグ・データを集めれば、コンピュータは、人が何を
好み、何が嫌いか、何を美しいと思い、何を醜いと思うのか
をビッグ・データの統計的処理によって判断できます。さらに、
コンピュータは、ビッグ・データの統計的処理によって判断
した人の感性に従って、表現要素を組み合わせて、人の需要
を満たす絵を描き、音楽を作り、物語を作成することも可能
になります。
このような人工知能が作り出す著作物は、天才の作り出す
著作物には及ばないかもしれませんが、平凡な著作者の作品
よりはいい物ができるかもしれません。したがって、このよ
うなAI著作物は、人の作った著作物と同様に、人々の需要を
満たします。いいかえれば、人々が求めるものです。人の求める
ものの創作を著作権は促進します。したがって、AI著作物を
著作権で保護してその創作を促進することは、公共の利益に
適います。
ところが、現在、多くの国の法律では、人の知性が作り出した
著作物のみを保護しており、機械の作り出した著作物に対する
保護は認めていません(イギリスは認めています)。そこで、
未来の課題として、AI著作物を著作権で保護しなくていいのか
という問題が登場します。
この問題は、世界の著作権理論の見直しを迫ります。とくに、
これまで国際著作権法の枠組みをリードしてきたのは、欧州で
あり、欧州での枠組みをリードしてきたのはドイツ・フランス
です。ドイツ・フランスの著作権理論は、著作物保護の根拠を
著作物に含まれる著作者の高い精神性に求めます。この理論
では決してAI著作物を認めることはできないからです。
では、どのような著作権理論が妥当するのか。その結論も
講演ではお話ししましたが、ここでは紙幅の関係上、後日の
テーマとさせていただきたいと思います。
以上
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