JRRCマガジン第28号 連載記事

半田正夫の著作権の泉 

~第16回 サルと著作権~

今年の8月11日、NHKは興味あるニュースを流した。それは、サルが自分を撮った写真を巡ってカメラの所有者であるイギリスの写真家とこの写真をインターネット上に掲載しているアメリカの財団との間で、著作権の論争が起こっていて、各メディアも大きく取り上げて話題になっているというものである。

事件の内容はこうだ。インドネシアの森林でイギリスの写真家の男性が持っていたカメラを野生のサルが奪い、自分の姿を撮ったいわゆる「自撮り」の写真がインターネットに掲載されたが、この写真にはサルが歯をむき出しにして正面を向いたユーモラスなポーズが大写しされており、これが評判を呼んで大量のアクセスが記録された。このことを知った当の写真家は自分に無断で掲載されたことに怒り、写真を掲載しているアメリカの財団に対して掲載を止めることと、写真によって見込まれた100万円以上の収益損に対しての損害賠償を求めたとのことである。
写真家側はカメラの所有権が写真家にあるのだから写された写真の著作権も自分にあると主張しているようであるが、カメラの所有権の帰属いかんは著作権の帰属とは無関係で、要は誰が写真を創作したといえるかにかかっているとみるべきである。かりに本件の事実関係が、光量の調節や被写体のポーズ、さらにはカメラアングルなどを写真家自身が決め、ただシャッターを押したのがサルであったのいうのであれば、セルフタイマーによる撮影と同様にとらえ、当の写真家の著作物として彼に著作権が帰属すると考えても差し支えないと思われる。だが、カメラのセットをしたあとであっても、サルがそれを取り上げてしまえば、セット自体がご破算となってしまうのであるから、写真家の創作性はそこで失われてしまい、彼に著作権が帰属する余地はなくなってしまったとみるべきではなかろうか。

NHKで報じられたこの写真はきわめてユーモラスで、人間が写したのであればそこに創作性が認められ著作権が成立することは間違いないといってよいようである。ただ写したのがサルであるだけに、サルに創作性が問えるのかが問題となり、かりに創作性を認めるとしても、人間ではないサルに著作権の帰属を認めてもいいのかが問題となろう。
著作権法によると、著作物を創作する者を著作者といい(著作2条1項2号)、職務著作の要件を備えた法人をも著作者とし(著作15条)、これらの著作者に17条以下の権利を与えているが、人間以外の動物がこれらの権利を取得できる資格があるのかについては一言も触れていない。
ところで、権利を取得できる能力または資格を権利能力という。この権利能力を有する者が人間に限られるということは著作権法のみならず、私法のなかで最も典型的な法律である民法においてもそのことは明示されていない。民法3条1項には「私権の享有は出生に始まる。」と規定しており、これが権利能力の始期を定めた規定であると解されているが、動物はすべて出生するので、文字通りに読めば、人間に限らず、動物すべては生まれると同時に権利能力を持ち、私法で承認されている権利をもつことができるといえそうである。だがだれもそのようには考えない。民法3条以下の規定は「第3章 人」のタイトルの下に包括されているから、権利能力は人についてのみ認められたものであることが間接的ながらうかがえるだけでなく、そもそも権利というものは人についてのみ認められるということは当然の事柄として一般に理解されているからである。してみれば、サルには権利能力はなく、したがって当然に著作権は発生しないといわなければならない。本件の写真は著作権は成立せず、だれでも自由に利用できる公有の著作物だと解するべきであろう。

余談であるが、戦前の司法試験の口述試験において、試験官が、「人には2種類あるが、それはなにとなにか」と訊ねたのに対し、「男性と女性です」と答えた者は不合格、「自然人と法人です」と答えた者は合格したとのことである。なにをかいわんやである。

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山本隆司弁護士の著作権談義

~第25回 公聴会~

前回に引き続き、米国議会下院司法委員会の「裁判所、知的財産及びインターネットに関する小委員会」における公聴会での議論をご紹介します。2013年9月18日に開かれた「米国知財制度における任意協定の役割」をテーマとする公聴会での議論です。
2013年9月18日の公聴会は、デジタル環境において海賊行為を減殺するために民間団体の取り組みがどのようなものであるか、その限界はどこにあるのか、立法がどのようにこれを支援できるか、立法的対応がどこに必要か、という意図を持って、行われました。任意協定による海賊行為の撲滅活動を行う民間団体の代表者5人が証人として招かれました。
最初の証人Jill Lesser氏は、著作権情報センター(Center for Copyright Information:CCI)の代表役員です。CCIは、①著作権警告システム(CAS)の創設と②消費者への啓蒙教育機関の創設を目標とする、インターネット・サービス・プロバイダ主要5社と映画産業・音楽産業との任意協定に基づいて、設立されました。CCIの運用するCASは、著作権侵害の排除と消費者の啓蒙を意図した指針であり、これに従って権利者とプロバイダはユーザーに警告します。すなわち、権利者が侵害を見つけてこれをプロバイダに通告すると、プロバイダは侵害物をダウンロードするユーザーに警告を送ります。是正の猶予期間を7日とする警告が上限6回ユーザーに送られます。各警告には、適法にダウンロードできるサービスの情報を提供します。また、警告に誤りがあると考えるユーザーのために、米国仲裁協会の仲裁で争う方法を提供しています。
2番目の証人Cary H. Sherman氏は、米国レコード協会(RIAA)の会長です。RIAAが支援する任意的取り組みとして、第1に、CCIを通じてCASを運営しています。第2に、クレジットカード会社などネット決済機関は、違法製品の販売業者をネット決済から排除しています。第3に、広告代理店は、違法サイトへの広告出稿を排除しています。第4に、ICANNは、違法目的のドメインネームの取得を排除しています。第5に、主要な著作権者と共同で、侵害物の掲載の防止および侵害サイトへのリンク排除を目的とするコンテンツ特定技術の開発に取り組んでいます。そして、Sherman氏は、DMCAのノーティス・アンド・テイクダウンによる削除制度の限界を改善するなどの一方措置を議会に求めました。
3番目の証人Randall Rothenberg氏は、インタラクティブ広告協議会(IAB)の会長です。IABは、知財の海賊行為に広告出稿することは信用を損なうことになるので、これを回避することを目的に、知財の侵害に対する苦情申立制度なども含むガイドラインを会員各社向けに定めています。IABは、知財保護の強化と広告産業がこれに果たす役割の理解を求めました。
4番目の証人Gabriel Levitt氏は、PharmacyChecker.comの副社長です。同社は、オンライン薬局の信用性を確認し価格比較情報を提供する会社です。同氏は、民間団体の任意協定が反競争的に働くことがある点に、議会の注意喚起を求めました。インターネット薬局とクレジットカード会社が任意協定によって設立した「the Center For Safe Internet Pharmacies」(CSIP)は、違法薬局を排除する機能を持っていますが、米国外の薬局であればたとえ真正薬を提供するものでも、違法薬局に分類してしまうので、米国民が価格の安い海外薬局から購入する機会を奪っています。同氏は、議会が任意協定の持つこのような反競争的効果を排除するよう必要な措置を執ることを求めました。
最後の証人Robert C. Barchiesi氏は、多国籍ブランドを会員に持つ国際反模倣連合(IACC)の会長です。IACCは、海外における模倣品のインターネット取引を撲滅することを目的とする取り組みをしています。すなわち、金融会社は、違法取引をする業者には金融サービスを提供しません。そこで、IACCは、金融会社に違法取引業者の情報を提供して、金融会社に当該業者への金融サービス停止を求めるという手続を、主要な金融企業と協力して、創設しています。
今回の公聴会は、各関係団体が任意的手段によってどのような海賊行為対策を行っているのかを知ることができ、興味深いものでした。

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JRRCなうでしょ 第16回

こんにちは。
JRRC事務局長の稲田です。
台風19号が過ぎ、やっと天気も秋らしくなってきましたね。
これから紅葉のシーズンに入り、紅葉の名所巡りにお出かけの方も大勢いらっしゃると思います。北海道ではもう初雪の知らせがあってもいい頃かもしれませんね。
観光だけでなく天高く馬肥ゆる秋でもありますので、おいしいものをいっぱい食べられる季節でもあります。
たまにはおいしいものの食べ歩き旅行でも行ってみたいですね。
それでは10月号の最初のお知らせです。
前回の「JRRCなうでしょ」でもお知らせいたしましたが、JRRCでは現在、今年度使用料請求のお知らせを発信し、WEBからのお支払い手続きについてお願いをしています。(実学方式は除きます)
おかげさまで多くの契約者の皆様のご協力をいただき、一部のご契約者様を除いて請求手続きも順調に推移しています。
その一方で、担当者交代等で未だログインされていないご契約者様も、少数ではありますがいらっしゃいます。
もし、読者の方でまだ手続きがお済でないご契約者様がいらっしゃいましたら、ご面倒でもJRRC WEB SITEからのお手続きをどうぞよろしくお願いいたします。
JRRCからのお知らせでした。
次は7月号から開始いたしましたJRRCを構成している4つの権利者団体のご紹介です。
今月はその4として最後になりますが、新聞著作権協議会についてご紹介いたします。
新聞著作権協議会は、JRRCの4つの構成団体の中でも、最も新しく平成14年に加盟した権利者団体です。
全国紙、地方紙、3つの通信社を含む68社94紙が加盟しており、JRRCは、少部数(20部以内)、社内利用の範囲で管理を委託されています。
もし、大量コピー(21部以上)、社外への頒布、クリッピング・サービスに該当するコピーをご希望の場合は、JRRCでは許諾することができません。
ご面倒でもそれぞれの新聞社へ、直接お問い合わせ下さいますようお願いいたします。
以上が新聞著作権協議会のご紹介でした。
現在JRRCでは、これら4つの権利者団体が積極的に連携し、より利用者の立場に立ったサービスを行うための検討を、4つの権利者団体と共に行っています。
近々、具体策がまとまった時点で改めてご紹介する予定でいますのでよろしくお願いいたします。
以上

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