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JRRCマガジン No.129 2018/3/13
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三寒四温の時季、梅の花も綻び、
早くも桜の開花が待ち遠しくなる今日この頃ですが、
皆さまいかがお過ごしでしょうか?
今回の山本隆司弁護士のコラムは「リンク・メディア」です。
リンク先URLを表示する行為は、著作権侵害になるのか?
いわゆる「リーチサイト」問題に関し、
日本と欧州の「公衆送信権」の概念の相違についてお話しくださいました。
◆◇◆山本隆司弁護士の著作権談義━━━━━━━━
第63回 「リンク・メディア」
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オランダで訴訟になっている事件に、
マルチメディア・プレーヤー「filmspeler」の販売が問題となっているものがあります。
filmspelerは、ネット上の動画や音楽のコンテンツをテレビで視聴できるようにした製品で、
視聴者が視聴したいコンテンツを指定すると、
ネット上のリンク先からコンテンツをストリーミング配信させ、これを再生するものです。
これまで提起された問題は、
被告が自分のサイトに、コンテンツサイトへのリンクを張ることが公衆伝達権
(Right of Communication to the Public)を侵害するかというものでした。
これについては、欧州司法裁判所(Court of Justice of the European Union)は、
以下のような枠組みを提示してきました。
第1に、リンク先が権利者から許諾を得ている適法配信である場合には、
リンク行為は、「新たなユーザー」へのリンクであるときにのみ、
公衆伝達権の侵害となる。
第2に、リンク先が権利者から許諾を得ていない違法配信である場合(「違法サイト」)には、
リンク行為は、行為者がリンク先の違法性について故意または過失がある限り、
「新たなユーザー」へのリンクか否かを問わず、公衆伝達権の侵害となる。
第3に、第2の場合において、リンク行為者が営利目的あるときは、
リンク先の違法性について故意または過失が推定される。
ところが、filmspelerが提起した問題は、
被告がリンク先を組み込んだ製品をユーザーに販売することが公衆伝達権を侵害するか
という新しい問題です。
filmspelerは、第三者の提供するアドオンソフトをそのまま取り込みましたが、
そのアドオンはリンク先を組み込んでおりその中には違法サイトが含まれていました。
欧州司法裁判所は、2017年4月26日に、
違法サイトへの接続を可能にするリンクがプリインストールされている場合には、
その「販売」は公衆伝達権の侵害に該当すると判示しました(Brein v. Wullems)。
日本では、違法サイト(権利者に無断でコンテンツを配信するサイト)へのリンクは、
公衆送信権侵害の幇助が成立しても、公衆送信権侵害の直接侵害は成立し得ません。
日欧の差は、WIPO著作権条約8条の「公衆伝達権」を
EUがそのまま権利内容とした(情報社会指令3条1項)のに対して、
日本はこれを「公衆送信権」に変えて権利化したことによります。
すなわち、WIPO著作権条約8条後段が規定する
「making available to the public of their works」する権利を、
日本法では、送信可能化権(著作物を送信サーバーにアップロードする行為に対する権利)
と構成し直しました。
したがって、自ら著作物を送信しない者は、公衆送信権の侵害主体にはなり得ません。
しかし、「making available to the public of their works」する権利は、
文字どおり、公衆に著作物を利用可能にする行為を意味するので、
著作物へのアクセスを可能にするリンク先情報を提供するだけの者も、
公衆伝達権の侵害主体になりうるのです。
また、情報社会指令2条は複製権を規定し、
5条1項が技術的処理における一時的複製に権利制限を定めています。
この権利制限の適用があるのは、第三者間の送信を媒介者として可能にする場合と、
適法な使用を可能にする場合に限られています。
filmspelerは、ストリーミング・コンテンツを再生し、
しかも違法サイトからのストリーミング・コンテンツなので、
欧州司法裁判所は、filmspeler上でのストリーミング「再生」には
5条1項の権利制限の適用はないと、判示しました。
したがって、被告によるfilmspelerの販売は、
公衆伝達権の直接侵害と複製権の間接侵害を構成することになります。
以上
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