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JRRCマガジン No.99
半田正夫の著作権の泉
第47回「日記と著作権」
2017/5/10配信
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皆さま、こんにちは。
JRRCメルマガ担当です。
風薫る五月、いかがお過ごしでしょうか。
四季折々、公園や道端などを彩る花々は私たちを楽しませてくれますが、
この時季、ツツジが満開を迎えています。子供の頃、学校の帰り道などで
ツツジの蜜を吸ったなんて思い出がある方も多いのではないでしょうか。
さて、今回の半田先生のコラムは、昨年、著作権保護期間が満了したか否
かが話題となった「アンネの日記」に関するお話です。
それでは、
半田正夫の著作権の泉
第47回「日記と著作権」
をお送りいたします。
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半田正夫の著作権の泉 第47回 「日記と著作権」
日記を始めてつけたのは学生時代である。大学ノートを用意して元旦に
なると、「今年こそは」と書き始めるが、はずかしながら長く続いたためしが
なかった。わずかに大学1年のときの昭和28(1953)年と翌昭和29(1954)年
の日記が残っているのみで、しかも飛び飛びに書かれているに過ぎない。
内容は、やたらと気取った文章が目に付く。たとえば、成人の日の記述では、
「今日は成人の日。僕も満20歳となって祝福される日である。講和発効後
初の成人の日に僕が成人したのは、誠に意義深く感無量である。公に大人
として扱ってもらえることを思うと、さすがに喜びを禁じ得ない。学識を深め、
人格の陶冶に勤しみ、ぜひとも有為の人物になることを誓う。」
など、歯の浮いた言葉が羅列してあり、面映ゆい感じがする。驚いたことに、
当時は電力事情が悪く週2日も日中に停電があったようで、その旨の記載
もある。
日記を間断なく続けるようになったのは、平成12(2000)年からである。そ
の前年の12月15日に大学長に就任し、多くの人に接したり、会議が頻繁に
開かれるようになったりして、これまでの教授生活とはガラリと一変したこと
から、備忘録の意味を兼ねて書き始めたのがきっかけである。それ以来一
日も欠かさずにつけている。もちろん多忙であったり、つい筆不精したりし
て1週間分まとめてつけることもあるが、その際は手帳に記してあることをも
とに記憶を蘇らせるので、点け落としがない。私が日記を書くといっても、そ
れは手書きではなく、パソコンに入力するという方式を採用している。そし
てそれをA4の用紙に40字×30行でコピーし、年別にファイルしており、すで
に20冊となっている。書棚に並ぶこの背表紙を眺めながら、これも拙劣な文
ではあるが私の著作物のひとつかなと思ったりもしている昨今である。
日記の著作権が問題となったケースは我が国ではまだ存在していないよ
うであるが、オランダでは昨年1件あったようである。それはアンネ・フランク
の「アンネの日記」に関ししてのものである。事件の内容はこうだ。
アンネは1945年にドイツの強制収容所で亡くなっており、オランダの著作
権法では著作者の死後70年が保護期間であることから、「アンネの日記」
の著作権はすでに消滅しているとして、フランス人の研究者と国会議員が
ネット上にその内容を公開したところ、アンネ・フランク財団からクレームが
ついたというものだ。財団によると、アンネの日記は1947年にアンネの父親
が一部を削除してオランダで出版したものであり、オランダの著作権法の
特例には、遺著(著作者の死後出版された著作物)については出版から50
年保護するとあり、オランダ戦争資料研究所による1986年版の場合、少な
くとも2037年まで保護されると主張しているとのことである。
この結末がどうついたのかは知らない。ただ、この問題が我が国で起こっ
た場合にどうなるかについて考えてみると、我が国にはオランダのような特
例は認められていないから、アンネの死後50年の経過によって著作権は消
滅し、だれでも自由に利用できることになろう。ただここで若干気になるの
は、アンネはドイツ生まれで、後にオランダに亡命しているが、国籍はどこ
かで扱いが異なる点である。というのは、対日平和条約との関連で連合国
民の著作権について戦時加算特例法が適用されるからである。いうまでも
なくアンネがドイツ国籍を有していれば、ドイツは第二次大戦中は我が国
と同様、枢軸国に属し連合国に含まれないから保護期間は死後50年という
ことになるが、オランダ国籍を有しているとすれば、オランダは連合国に属
し、したがって戦時加算の特例を受けて、約10年間保護期間が延長される
からである。もっとも、アンネの日記に関する限り、かりに10年プラスしても、
我が国においてはすでに著作権フリーになっているといわなければならな
いであろう。
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