JRRCマガジン第34号(映画俳優の保護、オンライン侵害の裁判管轄)

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   JRRCマガジン
                       2015/5/1配信 第34号
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◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆INDEX◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇

*半田正夫の著作権の泉         第22回   「映画俳優の保護」
*JRRC☆TIMES             「JRRCなうでしょ  第22回」
*山本隆司弁護士の著作権談義   第30回    「オンライン侵害の裁判管轄」 
*読者の声                 読者の声の投稿と掲載
*インフォメーション            ご意見・ご要望、各種手続きetc

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皆様、こんにちは。

JRRCメルマガ担当です。
初夏の陽気が続いていますね。
先日4月8日に雪が降ったとは思えぬほどです。
異常気象の影響でしょうか。
じつは、今季「春一番」がやってきていないらしいとのこと。
そんな年は、荒れた天候になる傾向とか。。。

それでは、メルマガ第34号をお届けいたします。

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   半田正夫の著作権の泉 第22回
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★「半田正夫の著作権の泉」の連載第22回目です。
第22回は、「映画俳優の保護」です。

著作権法では、著作権以外の権利、著作者人格権・著作隣接権についても規定されて
います。今回は、その一つ著作隣接権にまつわるお話です。

かつては名優として鳴らしたが現在はほとんど出演の機会のない老女優が確定申告で
税務署を訪れた。申告書を一読した事務官が、あきれたように、
「所得を隠さないで記載してくれなければ困りますね。」
「いえ、それだけですけど・・」
「嘘を言わないでください。あなたは毎晩のようにテレビの映画に出ているではないですか。
それなのにこのように少ない金額であるはずがないでしょう。」

このようなやりとりが実際にあったという話を聞いたことがある。しかし、彼女は嘘をついて
いたわけではなく、正真正銘、現在の実収入に基づいて申告をしていたのである。

テレビの画面には頻繁に顔を出している、しかし収入が少ないというのには、
次のようないきさつがあるからである。

映画俳優は実演家であるから、著作権法により、実演の録音・録画権、放送権、有線放送権、
送信可能化権、譲渡権を専有している。したがって、本来であれば、俳優の演技が収録されている
映画著作物が放送されたり、DVD化されて市販されたりする場合には、彼らの許諾が必要で、
その際、俳優は許諾と引き換えに報酬を請求することができるはずである。ところが実際には
そうなっていない。いったん実演家の許諾を得て映画著作物に録音・録画された実演については、
録音・録画権(録音物の作成を除く)、放送権、有線放送権、送信可能化権、譲渡権は働かない
ものと法が規定しているからである(著作91条2項、92条2項2号?、92条の2第2項2号、
95条の2第2項2号)。つまり、俳優が劇映画の製作の際に自分の演技が映画のなかに収録される
ことを許諾すると、あとは完成した映画の利用についてのいっさいの権利を失うというもので、
これは一般にワン・チャンス主義と呼ばれているものである。映画には多くの俳優が作成に関与
しており、これらの人たちが映画の利用の際にいちいち口を差し挟むと、映画の円滑な利用に
支障を来すというところから、実演家等保護条約がこの趣旨を定め、わが国もこれに即した形で
立法がなされているのである。したがって、上記の老女優のようなケースが出てくるわけである。
俳優がこのような事態を避けようとするのであれば、映画出演契約を結ぶ際に、映画作成後の録音・
録画物の利用についての諸場面を想定したうえで出演料の交渉に入り、気に入らなければ出演を断る
(つまり、実演の録音・録画の許諾を拒否する)という方法をとるしかないが、はたしてそのような
態度を採れる俳優がどれだけいるかは疑問である。

ところで、映画をとりまく環境は立法当時の状況からは一変している。かつては映画館における
上映しか利用方法が考えられなかったが、現在ではシネマ・コンプレックスの時代の到来により
映画の効率的な運用が可能となり、さらに映画館での上映だけでなく、多チャンネル時代を迎えて
急速に数の増えたテレビ局で映像ソフトが放映されるようになり、さらに一般向けのDVDによる
レンタルや販売など多岐にわたる方法によって、映画製作者側は利益を上げることができるように
なってきている。このような時代背景のもとにおいては、これまでのような力関係による
ワン・チャンス主義に固執するのは時代遅れも甚だしいといわざるをえないのではなかろうか。
さらにいえば、聴覚的実演家(歌手など)にはすでに放送事業者に対して商業用レコードの
二次使用料請求権と貸レコード対策として商業用レコードの貸与権(販売の日から1年間)と
貸与報酬請求権(販売の日から1年を経過したのち)が認められているが、映画俳優などの
視聴覚的実演家には同じような利用方法であるにもかかわらず認められていないという不均衡が
みられるところであり、その点の調整が図られていいのではないかと思われる。2012年に北京で
採択された視聴覚的実演条約がわが国における映画俳優の保護強化にひとつのはずみをつけることに
なればいいがと思う昨今である。

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   JRRC☆TIMES
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☆★☆JRRCなうでしょ☆★☆

第22回目となりました事務局長コラム。

今回は、JRRCからの大切なお知らせです。新メンバーの加入と「(仮称)小セミナー」
開設についてです。

こんにちは。
JRRC事務局長の稲田です。
今年は、せっかくのお花見を楽しみにしていた読者の皆さんには、無粋な天候不良でしたね。
やっと桜が咲いたと思ったら、毎日雨続きでいつの間にか花びらも散ってしまいました。
とは言え、これから花見シーズンを迎える東北・北海道の皆さんにとっては楽しみな季節に
なるのではないでしょうか。
それでは、4月号の最初のお知らせです。
このたび、JRRCに著作権業界では大変著名な方が加わりましたのでご紹介いたします。
前横浜国立大学大学院教授で2003年から2011年まで文化庁著作権課著作物流通推進室長を
勤めておりました川瀬真理事です。
川瀬理事は、文化庁勤務時代、著作権法の改正に直接携わった経歴の持ち主で、その後
横浜国大大学院で主に著作権あるいはコンテンツ・ビジネスに関する研究・指導をされていました。
JRRCでは、各種委員会に参加し、事務局運営全般に助言をいただく他、著作権のエキスパートとして
著作権セミナーあるいは講習会等で講師として参画していただく予定です。また、JRRCの実施する
著作権啓発活動の企画・運営にも参画していただく予定です。川瀬理事の加入により、
一段とパワーアップされたJRRCにぜひご期待ください。

次は、新規企画として「JRRC著作権基礎講座」(仮称)開設予定のお知らせです。
JRRCでは川瀬理事の加入を受けて、より積極的な著作権啓発活動の実施を検討しており、
今年度第1弾として2015年6月より「JRRC著作権基礎講座」(仮称)を隔月開催する予定でいます。
これまでJRRCでは、年2回JRRC著作権セミナーを開催してきましたが、参加者のアンケートによると、
少数参加でいいから回数を増やしてほしい、あるいは関西地区で開催して欲しい等の要望が強い
ことから、各回30-40名程度、年間6回(内関西地区2回)程度の著作権に関する基礎知識の習得を
目的とした小セミナーの実施を検討しています。詳細についてはホームページ及びメルマガ次号で
お知らせする予定です。
以上4月号JRRCなうでしょでした。

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   山本隆司弁護士の著作権談義  
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★「山本隆司弁護士の著作権談義」の連載第30回目です。
第30回は、「オンライン侵害の裁判管轄」です。

今回は、裁判管轄についてです。事件が生じた時、いったいどこの裁判所がその事件
について取り扱うのでしょう。特に、ネットが発達した現在いったいどのような取扱となっ
ているのでしょうか。その点について、お話しいただいてます。

EU司法裁判所は、1月22日に、著作権のオンライン侵害に対する裁判管轄について判決を
下しました(C-441/13)。オンライン侵害に対する裁判管轄については、各国ごとに対応が
異なるので、この判決をご紹介するとともに、日米における対応についても、まとめておきたい
と思います。
原告は、オーストリア在住の写真家です。被告はドイツの会社で、ドイツ所在のサイトに
原告の写真を無断で掲載し配信しました。原告は、オーストリアから当該サイトにアクセス
できるので、オーストリアで著作権侵害が発生していると主張して、オーストリアの裁判所に
被告を訴えました。EUは、裁判管轄権について、国内法の適用を排除して、各国に直接適用
のある規則を定めています。著作権侵害事件については、被告の住所地の裁判所
(ブリュッセル規則I(No. 44/2001)第2条)のほか、不法行為地の裁判所(同第5条(3))に
裁判管轄権を認めています。ここでいう「不法行為地」には、著作権侵害が生じた場所
(結果発生地といいます)のほか、これを生じさせる行為を被告が行った場所(加害行為地
といいます)も含まれると解されています。オンライン侵害の場合には、サイトの所在地が
加害行為地に当たり、配信先が結果発生地に当たります。インターネットサイトには世界中の
どこからでもアクセス可能であるので、世界中のどこでも結果発生地となり得ます。そこで、
結果発生地には何らかの限定がなくてもいいのか、結果発生地に向けた被告の行為がある場合に
限定するよう解釈すべきではないか、という問題が提起されることになります。この問題について、
EU司法裁判所は、かかる限定解釈を退け、結果発生地に向けた被告の行為がなくても、結果発生地に
著作権侵害事件に対する裁判管轄権を認めました。
なお、以上のブリュッセル規則Iは、被告がEU内に住所を持つ者である場合にのみ適用され、
それ以外の場合には各国の国内法が適用されます。したがって、たとえばフランス法は原告が
フランス国民であればフランスの裁判所に裁判管轄権を認めますので、以上の議論などと関係なく、
フランス人が日本に住む日本人を相手にフランスの裁判所に訴えを提起することも可能です。
他方、日本法では、オンライン侵害に対しては、ブリュッセル規則Iよりも狭く、日本の裁判所に
裁判管轄を認めています。日本の民事訴訟法は、不法行為地の裁判所に裁判管轄を認めています
(3条の3第8号)が、不法行為地には、結果発生地も加害行為地も含まれると解されています。
しかし、結果発生地について、「外国で行われた加害行為の結果が日本国内で発生した場合において、
日本国内におけるその結果の発生が通常予見することのできないものであったときを除く。」
と規定しています。したがって、日本に結果発生(ダウンロード)がある限り、結果発生地に
向けた被告の行為があるか否かを問わず、日本での結果発生が偶然に過ぎない場合を除いて、
日本の裁判所に裁判管轄権が認められます。
また、米国法では、不法行為地に基づく裁判管轄権については、加害行為地には裁判管轄権を
認めますが、結果発生地については結果発生地に向けた被告の行為がある場合に限って裁判管轄権を
認めます。したがって、オンライン侵害によって米国に著作権侵害という結果が発生したとしても、
米国向けの広告を載せたとか、米国銀行による決済方法をとったとか、何らかの米国に向けた
被告の行為がある場合でなければ、米国には裁判管轄権は認められません。

以上
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   読者の声
            『読者の声』の投稿と紹介
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このコーナーは、「JRRCマガジン」が皆さんにとって便利な、役に立つ情報収集ツール
としてご活用していただけるよう、ご意見・ご感想をお寄せいただき、その中から選出し
てご紹介するコーナーです。
                              
★メルマガへのご意見・ご感想をお待ちしています(*^_^*)

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掲載された方には粗品を進呈いたします。
なお記事として掲載する場合は、事前にご連絡しご了解を頂くように致します。

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   あとがき

4月18日は「発明の日」でした。この「発明の日」は、1885年4月18日に現行特許法の前
身である「専売特許条例」が制定された日であることに由来する。著作権の仲間である
知的財産権の一つである産業財産権は、特許権・実用新案権・意匠権・商標権からなり、
1884年現行商標法の前身である「商標条例」が制定されたのが始まり。以降、1885年に
「専売特許条例」、1888年意匠条例、1905年現行実用新案法、が制定等されている。
一方、著作権は、一説によれば1869年に「出版条例」が制定されたのが始まりらしい。
その後、1899年に旧著作権法が制定され、1970年に全面改正が行われ、現行著作権
法が制定されるに至っているとのこと。

この日に少し紐解いてみた小職でした。(A.U)

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■編集責任者
   JRRC副理事長 瀬尾 太一   
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