JRRCマガジン第18号(条文表記についての疑念(2)、TPPと著作権法)

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   JRRCマガジン
                       2013/12/20配信 第18号
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◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆INDEX◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇

*半田正夫の著作権の泉        第6回    「条文表記についての疑念(2)」
*JRRC☆TIMES             「JRRCなうでしょ」
*山本隆司弁護士の著作権談義   第15回   「TPPと著作権法」
*読者の声                 読者の声の投稿と掲載
*インフォメーション            ご意見・ご要望、各種手続き

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皆様、こんにちは =*^-^*=
日本複製権センター メールマガジン担当者です。

いつもご愛読いただき、有難うございます。

お陰様で、創刊より1.5周年を迎えることが出来ました。
ありがとうございました。

ただ、一方通行の発信であるため、皆様の反応が読めず、ちょっぴり不安(´・ω・`)。
ご意見を頂けたら嬉しいです。お待ちしております。

それでは今年最後のメルマガ第18号をお届け致します。

●今後取り上げるテーマについてリクエストがございましたら、
   ご意見・ご要望など ⇒ https://fofa.jp/jrrc/a.p/112/
 にて、ご投稿をお願いいたします。
  お待ちしてます。

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   半田正夫の著作権の泉 第6回
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★はじめに
「半田正夫の著作権の泉」の連載第6回目です。
 

    ▼半田正夫の経歴、著作物等
     ⇒ http://www.jrrc.or.jp/jrrc/message.html

   
第6回は、「条文表記についての疑念(2)」です。

★周知のように、著作権法15条は職務著作の成立する要件の1つとして、「法人等が自
己の著作の名義の下に公表する」ことをあげている。
この点が問題となった事件が1つある。

N鉄工事件である。
事件の概要はこうである。
一部上場会社のN鉄工は、大型のコンピュータシステムの開発を計画し、その作業を同
社のエンジニア数名に命じて開発に従事させた。完成後、会社とエンジニアとの間に意
見の齟齬が生じ、エンジニアはいっせいに退社したが、その際、彼らの開発した資料を
コピーしそれを持ち出して、あらたにソフトハウスを設立するにいたった。その結果、N鉄
工が莫大な費用をかけて開発した極秘事項が社外に洩れるという結果になった。怒っ
た会社はエンジニアらを著作権侵害として刑事告訴したというものであった。

この事件の最大の争点は、本件資料のどこにもN鉄工が著作者である旨の表示が見当
たらないので、はたしてN鉄工が著作者であり、著作権者であるといえるのか、という点
にあった。

N鉄工側の弁護団から意見を求められた私は、15条は実際に創作した者が著作者であ
り、かつ著作権者であるという原則に対する例外を定めたものであるから、例外は厳格
に解釈すべきであるとの法解釈の原理に即して考えるならば、この要件を充たしている
とはいえない本件においては、N鉄工が著作者であるとみることは難しいのではないか
と述べた記憶がある。

やがて、この事件の判決が下りた。結論はN鉄工の勝訴であり、N鉄工が著作者であり
著作権者であることを認めていた。問題になった部分については、たしかに本件資料の
どこにもN鉄工が著作者である旨の表示はないが、これは極秘事項とし外部に公表され
ることを予定していなかったからであり、かりに公表しようと考えていたならば必ずN鉄工
が著作者である旨を付していたはずであるとし、このような場合も15条の要件を充たし
たものと考えてよい、という趣旨の判断を示していたのである。
だが、このような判断は疑問の多いものであった。この事件は刑事事件である。刑事事
件においては罪刑法定主義のもと法の解釈は厳格でなければならず、類推解釈が許さ
れないものであることは法を学んだ者ならば誰でも知っている常識である。そうであるな
らば、「もし・・・であるなら」という仮定のもとに推論することは厳に慎まなければならな
いところである。私はこのような観点から本判決に対して激しく批判の声を上げたのであ
る。

その後、プログラムを著作物として著作権法で保護する方向で著作権法の改正が行わ
れることになったが、その際、この15条が問題となり、産業界からこの要件の削除が強
く主張されたようである。しかし、昭和45年の立法時以来採られていたこの要件を不要
とすることは、これまでの行政指導の転換を迫ることになるうえ、改正前後で扱いがこと
なるという不均衡が生ずることになるなどの難点があり、窮余の一策として、新たに著作
物として認めるプログラム著作物についてのみこの要件を外すということで決着し、昭
和60年の法改正が行われたのである。

だが、このような中途半端な解決法はかえって多くの問題を生ずる結果となっているよ
うに思われる。プログラム著作物はそのすべてが公表を予定していないものではなく、
ゲームソフトのようにあらかじめ公表を予定して作られたものもある。改正法はプログラ
ム著作物について、公表を予定しているか否かに関係なく法人の著作名義の要件を不
要としているので、ゲームソフトについても、この要件はいらないということになるはずで
ある。
とすれば、メーカーから取次店、取次店から小売店という流通経路を取る点では書籍や
レコードと異なるところはないのに、書籍やレコードの場合には法人の著作名義の表示
がなければ法人の著作権帰属が認められないのに反し、ゲームソフトの場合にはその
表示がなくても法人の著作権帰属が認められるという不均衡が生ずることになろう。

また、一般にソフトウエアという場合に、プログラム著作物を中核としながらもそれを取
り巻くシステム設計書、フローチャート、マニュアルなども含まれるが、それらはプログラ
ム著作物ではないところから、法人に著作権を帰属させるためには法人名義の表記が
必要ということになり、それを不用とするプログラム本体とは不均衡が生ずることも指摘
されよう。

ところで、改正法によってもプログラム著作物以外の著作物については、従来どおり上
記の要件の存続が認められたが、現実にはあまりその重要性が意識されていないよう
である。それは職務著作として著作権の法人帰属がとくに必要だと思われる新聞にお
いてすら、紙面のどこにも「○○新聞社著作」の表示は見当たらず、かえって「○○新聞
社発行」の文字が見られるだけである。コピーライト記号を付して社名を表示しているケ
ースはあるが、これを著作名義の表示とみるのは法の解釈上無理である。

このように考えてくると、いっそのことすべての著作物について上記の要件を不要とした
ほうが、実態にも即し、規定形式上もすっきりするといえるのではなかろうか。

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   JRRC☆TIMES
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☆★☆JRRCなうでしょ☆★☆
 
★JRRC事務局長の稲田です。

気が付くともう師走なんですね。
夜町を歩くときれいにLEDのクリスマスの飾りつけをしたお宅を良く見かけるようになりま
した。
ここのところ東京も急に寒くなってきて、初雪になるかどうかといったところです。
お出かけの際は温かい服装を忘れずにどうぞ。

それでは今月号の最初の報告です。
JRRCでは今月初め、まだ契約をされていない官庁、地方自治体、私立大学等を対象に
DMを発送し、改めて契約のお願いをいたしました。既にご契約いただいている団体が多
数ある中で、まだ契約されていない団体へは著作権の重要性を認識していただき、日常
的に違法コピー状態が続けられることがないようJRRCとの契約締結をお願いしていま
す。
おかげさまで早速反響があり、毎日数件の契約に関するお問い合わせをいただいてお
ります。
JRRCとしては、今後も著作権の啓発活動あるいは契約促進活動の一環としてこれら未
契約の企業・団体に対し、著作権の重要性についてご理解頂けるよう努力を続けていく
所存です。

次は前回お約束しましたイスタンブール事情報告第1回目で、今回はタクシー事情につ
いての報告です。
10月下旬のイスタンブールは東京よりも暖かく、滞在中の1週間毎日晴天で快適に過
ごせました。私の滞在したホテルは新市街地のボスボラス海峡に近い高台にあり、7階
のレストランからはボスボラス海峡が目の前一面に広がり、大変眺めの良いホテルで
した。

-イスタンブール・タクシー事情その1-
ホテルから市街にはタクシーを利用しましたが、まず驚いたのは料金が安いということ
です。初乗りが2.9リラですので約150円! 旧市街地にあるブルーモスクまでは海峡大
橋を渡って20分ぐらいの距離ですが、料金は20リラ(1000円)程度でした。東京のタクシ
ーですと3~4000円くらいの感覚です。そのかわり、市街には大通りが少ないので、運
転手さんは各自自分の地理感覚を基に、車1台がやっと通れるようなわき道を猛スピー
ドで飛ばします。時にはあっと目をつぶるようなスリルも味わえますので毎回結構ドキド
キでした。一度前を走っているタクシーが狭い道を通る際に、駐車していた車の後部と
接触してぶつけられた車の運転手と口論しているのを目撃しました。するとタクシーの
運転手はポケットからお金を取り出して被害にあった車の運転手に差し出し、これで勘
弁なみたいな感じで一件落着でした。修理代になるほどの金額かどうかはわかりませ
んが、示談で解決が地元のタクシー運転手の間では普通なのかなと思えた一件でした。

以上今月のJRRCなうでしょでした。
次号ではイスタンブールタクシー事情その2をご紹介したいと思います。

以上

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   山本隆司弁護士の著作権談義  第15回
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★はじめに
山本弁護士の著作権談義の第15回目です。

    ▼山本弁護士の経歴、著作物等
     ⇒ http://www.itlaw.jp/yamamoto.html

今回は、「TPPと著作権法」です。

★TPPの締結交渉が山場を迎えているようですが、知的財産権分野、特に著作権法に
ついてどのような点が論議されているのかまだ公表されていません。来年1月の交渉で
整理することが見込まれる現状において、その内容について予測するのは無謀な気が
します。しかし、当該論点の背景事情に対する理解を事前に深めておくことは無益では
ないと思います。

TPPで、日本に対して著作権制度の変更を求められるとすれば、それは米国にあって
日本にない制度に限られると思います。
そこで、米国にあって日本にない制度を挙げると、
①著作権の保護期間、
②法定損害賠償制度、
③アクセス・コントロールの保護、
④著作権登録制度
が主なものです。
今回は、著作権の保護期間について米国の制度をご紹介したいと思います。

米国の最初の著作権法は1790年著作権法ですが、保護期間は発行後14年間とし、更
新登録によってさらに14年間更新できました。次の1831年著作権法では、保護期間は
発行後28年間とし、更新登録によってさらに28年間更新できました。現行の1976年著作
権法では、将来ベルヌ条約に加盟することを見越して、保護期間を、原則として著作者
の死後50年にするとともに、職務著作物や著作者不明の無名著作物・変名著作物につ
いては発行後75年(未発行の場合は創作から100年)としました。なお、現行法施行前に
創作された著作物に対しては複雑な経過措置が設けられています。

ところが、EUが1993年に著作権の保護期間を死後70年に延長する保護期間指令を制
定しました。保護期間指令は、保護期間について相互主義を採り(7条)、第三国を本国
とする著作物について本国での保護期間が死後70年よりも短ければEUにおいては死
後70年の保護を与えないとしています。元々米国は、連邦憲法1条8項8号の著作権条
項で産業振興政策として著作権の保護を与えるという著作権思想を持っていますので、
著作者の死後長期にわたるような保護期間に産業振興効果があるのか懐疑的です。
しかし、1998年、米国は国益に従って、著作権の保護期間を死後70年に延長しました
(ソニー・ボノ著作権保護期間延長法)。というのは、EUを本国とする著作物が米国で利
用されるよりも、米国を本国とする著作物がEUで利用されることの方が市場規模におい
て大きいので、EUで死後70年の保護期間の恩恵を受けられるよう米国の保護期間を延
長することが米国の国益に資するからです。

同様に、日本と米国との関係においても、日本を本国とする著作物が米国で利用され
るよりも、米国を本国とする著作物が日本で利用されることの方が市場規模において大
きいので、日本での著作権の保護期間が長い方が、すなわち日本法を死後70年の保
護期間に変更させることが、米国の国益上、有利となります。したがって、TPPにおいて
は、日本での著作権の保護期間を死後70年に延長させるよう、米国は、当然、日本の
著作権法の改正を求めてくると思われます。

 以上

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   読者の声
            『読者の声』の投稿と紹介
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このコーナーは、「JRRCマガジン」が皆さんにとって便利な、役に立つ情報収集ツール
としてご活用していただけるよう、ご意見・ご感想をお寄せいただき、その中から選出し
てご紹介するコーナーです。
                              
★前回よりテーマを設けてます。
「著作権はてな?」
です。
著作権の基礎的な疑問を受け付けています。

★投稿先はこちら
  ⇒ https://fofa.jp/jrrc/a.p/111/

掲載された方には粗品を進呈いたします。
なお記事として掲載する場合は、事前にご連絡しご了解を頂くように致します。

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   インフォメーション
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   あとがき
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師走に入り、気温がグンと下がり、街中を厚手のコートを身に纏った方々が足早に行き
交う様子を目にするようになりました。

かくいう小職もその一人であり、
思い掛けなく、地域役員、自治会役員、PTA役員選出の誉れ!?に預かり、引き継ぎ、
大掃除会、懇親会、忘年会、退団式、クリスマス会、と目白押し。。。

ん~家の大掃除はいつする~?
今でしょ!?
なれば!!!と重い腰を上げて今月第一週末より、換気扇、窓拭き、お風呂場と1つ1
つクリアしている次第です。
これが小職には結構合っているみたいです。

年内に大掃除を終え、清々しい気持ちで新年を迎え、皆様にお会いできるのを楽しみに
してます。

良いお年をお迎えくださいませ。(A.U)

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   公益社団法人日本複製権センター(JRRC)
     ホームページの「お問合せ」ページからアクセスしてください。
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■編集責任者
   JRRC副理事長 瀬尾 太一   
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