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JRRCマガジン No.126  2018/1/26
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家路を急ぐ道すがら、
朝見掛けなかった雪だるまがひょっこり。
関東は月曜日大雪に見舞われました。
皆さまいかがお過ごしでしょうか?

今回の山本隆司弁護士のコラムは「引用の抗弁」です。
近年 引用の抗弁が認められるか否かの判断基準が揺れています。
山本先生のお考えをお話しくださいました。

◆◇◆山本隆司弁護士の著作権談義━━━━━━━━

第62回 「引用の抗弁」

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先日の著作権法学会判例研究会で、引用の抗弁が議論になりました。
引用に当たるかどうかは、パロディ・モンタージュ写真事件の
最高裁昭和55年3月28日判決以来、引用する側と引用される側の
主従関係と両者の明瞭区別性で判断されてきました。しかし、近年、
主従関係と明瞭区別性の基準を使わず、直接、著作権法32条の規定
する「引用の目的上正当な範囲内」にあたるか否かで判断する裁判例
(東京地判平成13年6月13日判決など)も多数、登場してきました。
この判断基準には、適用の基準として明確ではなく裁判官の恣意性が
入る余地が大きいとの批判があり、主従関係と明瞭区別性の基準を
適用する裁判例も続いています。
いずれにしても、規定上「引用」という文言があるので、引用する側と
引用される側の主従関係は必要だと考えられます。そこで次に問題に
なるのは、引用する側が著作物であることを要するか否かという点です。
現行法では、引用する側が著作物であることを要件とする文言は
ありません。
そこで、学説は、著作物要件説と著作物非要件説に分かれています。
引用する側と引用される側の主従関係が必要である以上、引用する側が
一つの思想を持った作品としてまとまっていることが前提になって
いると思われます。そこで、引用する側が著作物であることを要する
との解釈が生まれてきます。旧著作権法およびドイツの現行著作権法
51条が、引用する側が著作物であることを要件とすることも、
著作物要件説の背景にあります。
私は、著作物非要件説に立ちます。私も、引用する側が一つの思想を
表現するまとまりとして作品であることは引用として必要だと思います。
しかし、思想を表現する作品であっても、その表現に創作性がなければ、
著作物に該当しません。表現に創作性がなくても、引用する側が
一つの思想を表現した作品であることは可能であるので、引用する側が
著作物であることを要件とする必要はないと考えます。
この点はドイツ法と背景が異なるので、注意する必要があります。
ドイツ法では、そもそもアイデアと表現の二分法を採っていません。
形式と内容を区別する考え方がありましたが、1926年のアルト・
ハイデルベルグ判決以来、創作的な内容(この事件では登場人物や
情景設定)をも著作権で保護しています。したがって、創作性が
表現にあることは著作物の要件ではなく、表現された思想内容に
創作性があっても著作物に該当します。したがって、引用する側が
引用者の思想を表している作品であれば、容易に、創作性の要件を
満たし著作物に該当するでしょう。他方、日本法では、引用する側が
引用者の思想を表現する作品であっても、その表現方法に創作性が
なければ(平凡な表現方法であれば)、創作性の要件を満たさず
著作物に該当しません。
また、根本的な視点ですが、引用の抗弁の目的です。引用は、イギリスで
最初にフェア・ユースの法理が生まれたときから、表現の自由を
保障するために著作権を制限する必要のある使い方だと考えられて
いました。引用の抗弁を表現の自由を保障するという目的から考えれば、
引用する側に、引用者の思想があることは必要です。
しかし、思想の表現方法に創作性があることは必要ではありません。
したがって、表現の自由を保障するという目的から考えれば、
引用する側に創作性の要件を課すことは余計な要件なのです。
他方、ドイツ著作権法では、権利制限を認める主たる根拠として、
他人の著作物を足がかりにしてより豊かな著作物を創作する余地を
作るため、という基本的発想があるように思います。そのため、
引用の抗弁においても、他人の著作物を引用してより豊かな著作物を
創作できるようにする手段と考えており、それゆえに引用する側の
作品が著作物に該当することを要件にしているように思われます。

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