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JRRCマガジン No.125  2018/1/16
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今年は発行7年目に突入いたします。
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さて、今回の「川瀬先生の著作権よもやま話」は、
「ダウンロードの違法化」です。
違法著作物であることを知りながら行うダウンロードについて、
罰則対象となってまもなく6年。
改正に至った経緯等についてお話しくださいました。

◆◇◆川瀬先生の著作権よもやま話━━━━━━━━

第21回「私的領域における著作物等の利用について(8)
            ダウンロードの違法化」

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1 はじめに
これまで何度も説明してきたように、現行著作権法の成立に当たって
「私的使用のための複製(30条)」が設けられたのは、家庭内等の
閉鎖的な場所で行われる複製について、権利者は権利行使が事実上
できないという背景がありました。
その後の複製機器の家庭内への普及は目を見張るものがあり家庭内で
著作物が大量に複製されていることを踏まえ、平成4(1992)年には
私的録音録画補償金制度の導入、平成11(1999)年と平成24(2012)年
には技術的保護手段を回避して行う複製の違法化のための法改正が行われ、
家庭内等で行われる複製に関する対応措置が図られました。
この改正のうち、私的録音録画補償金制度については、複製機器等の
製造等を行っているメーカー等の協力により、個々の利用者に直接
権利行使することなく円滑に補償金を徴収する制度が整っていました。
また、技術的保護手段の回避規制については、複製制限が施されている
仕組みを回避して複製を行う者だけを規制するものでいわゆる悪質な
利用者以外の者には関係ないものでした。
しかしながら、今回説明をするいわゆるダウンロードの違法化については、
ネットユーザーであれば誰もが行ったことがあるダウンロードに関する
改正であり世の中に対する影響は大きいものでした。
このダウンロード違法化に関する提言を行った文化審議会が報告書を
公表する前のパブリックコメントでもネットユーザーを中心に1万件近い
意見が提出され、そのほとんどが法改正に反対するものでした。
権利者の許諾を得ずに著作物をアップロードすることは当時でも違法
ですから、ダウンロードを規制しなくても問題ないのではないか、
違法な行為を行っているネットユーザーを事実上摘発できないのであれば
法改正により違法状態が常態化するだけではないか、との傾聴すべき
指摘もありマスコミでも大きく取り上げられました。
この法改正は、平成21(2009)年に成立したのですが、「違法に送信
された著作物をその事実を知って複製するのは違法である」という
分かりやすい論理や、違法状態を常態化させないため官民を挙げて
広報を徹底するという政府の方針に関係者の理解が得られたことなどから、
改正法案の作成過程や国会審議においても大きな反対はありませんでした。

2 ダウンロード違法化の経緯
私的録音録画補償金問題のところでも少し触れたように、ダウンロード
違法化の考えは,この問題に関する対応策について文化審議会で提案
されました。当時権利者側は、ネット上の違法アップロード対策に
力を入れていたところですが、違法アップロードはなかなか減少せず、
有効な手段が見つからない状況でした。一方で、仮にこの問題について
関係者の合意が成立し新しい補償金制度が導入されたとして、権利者側が
補償金を受領することにより、違法サイトからのダウンロードを
権利者側が事実上容認したことになるのは問題ではないかという指摘が
行われました。確かに30条では、複製の対象とされるものを単に
「著作物」としか規定しておらず適法要件は課されていません。
平成4(1992)年に導入された現行の補償金制度は、30条の仕組みを
そのまま適用していましたので、違法複製物を用いた録音録画も
補償金の対象となっていました。しかしながら、ネット上の違法アップ
ロードがこれだけ社会問題になっている状況の中で、制度導入時と
同じ考えでよいのかということは当然の指摘であったと考えます。
この点について,審議会でも時間をかけてましたが、一部反対意見は
あったものの、ネット上の違法対策問題はアップロードとダウンロードの
両面から対策を考えるべきだとの結論になり、違法アップロードを
助長するようなダウンロードについては30条の適用を除外するとの提言が
行われました。

3 ダウンロード違法化の内容
(1)平成21(2009)年の著作権法改正
上記の文化審議会の報告書の内容を踏まえ、ダウンロード違法化の
内容を盛り込んだ著作権法の改正が行われました。
改正の内容ですが、30条の1項に3号を追加し、「著作権を侵害する
自動公衆送信(国外で行われる自動公衆送信にあって、国内で行われる
としたならば著作権の侵害になるべきものを含む。)を受信して行う
デジタル方式の録音又は録画を、その事実を知りながら行う場合」
を30条の対象外としました。
少し条文の説明をしておきます。まず、自動公衆送信とはいわゆる
ネット送信のことを指し、リクエストがあればいつでも送信できる
状態である「送信可能化」を含みますので(23条1項)、簡単に言うと
違法サイトからの送信のことを指すと考えてください。また、括弧書ですが、
外国における利用行為には原則として日本の著作権法は適用できませんので、
「国内で行われるとしたならば」として著作権条約に加盟しているか
どうかにかかわらず外国における送信行為であったとしても、
それを受信して行うわが国における録音又は録画行為に日本の著作権法が
適用できるようにしています。さらに、適用対象を「デジタル方式の
録音又は録画」にしたのは、この改正はあくまで例外的な措置ですので、
30条の対象外にする範囲をできるだけ問題が生じているところに限定
するためです。
なお、違法サイトであっても、録音録画を伴わないストリーミング型の
視聴サービスが改正規定の適用外であることは言うまでもありませんが、
通信効率を高めるための技術的手段として一旦キャッシュに録音録画し
それを視聴する形式のものも利用者が意識的に録音録画をしている
わけではありませんので適用対象外です。なお、キャッシュのような
一時的複製については、別途権利制限の対象になっています(47条の8)。
また、罰則ですが、他の規定(30条1項1号、2号)と同様、個人の行為は
軽微であるとして罰則の適用は見送られました。

(2)平成24(2012)年の著作権法改正
平成24年の通常国会において著作権法の改正案が審議されている際に、
議員修正され成立したものです。
修正の内容ですが、平成21(2009)年の著作権法改正では見送られた
罰則の適用について、CDやDVD等で販売されている又はインターネットで
有料配信されている著作物等(これを有償著作物等といいます)が
ダウンロードされた場合は罰則が適用(2年以下の懲役又は200万円以下の
罰金(併科も可))されることになりました(119条3項)。なお、本件は
親告罪です(123条)。
ところで、この改正規定については、政府提案の著作権法改正案には
なかったものであり、議員修正により盛り込まれたものですが、ネット上の
違法流通に危機感を持った権利者側の要請により修正が行われたと思われます。
ただ、ダウンロード自体は家庭内という閉鎖的なところで行われているため、
現実問題としてはよほど悪質な利用者でないと罰則の適用は難しいと
考えられます。ただ、立法の趣旨としては、刑事罰導入の効果として、
ダウンロードを少しでも抑制しネット流通の健全化を図ろうとするもの
であると考えられ、改正法の附則では、国や地方公共団体に対し、
改正の趣旨の啓発やその他の必要な措置の徹底(改正法附則7条1項)や
未成年者への教育の充実(同条2項)を求めています。

4 おわりに
ダウンロード違法化については多くの国民に影響を与えることから、
改正法の施行後は官民一体となって改正法の内容の周知徹底が行われました。
例えば、文化庁では文化庁HP、政府広報、その他のメディアを活用しての
啓発事業に力を入れるとともに、関係の権利者団体でも同様の事業が展開
されました。特に日本レコード協会では、違法サイトと適法サイトが一目で
見分けがつくように、適法サイトの証である「エルマーク」を付ける事業を
展開されておられます(http://www.riaj.or.jp/leg/lmark/ を参照)。
また、この問題については改正前にマスコミで大きく取り上げられたこと
もあり、改正後も様々なメディアで取り上げられました。
このようなことから、改正法に関する国民の理解度は高まったと考えて
おります。私自身も大学の授業で学生にこの法改正の内容を知っているか
どうかについてよく質問しますが、思いのほか法改正の内容を知っている
学生が多いのに驚いています。

以上のとおり、現行著作権法の制定当時から今日に至るまでの
「私的使用のための複製」(30条)に関する一連の著作権法改正の経緯や
内容に関する解説は終わります。次回は、個人が行う著作物利用行為について、
あくまで個人の私的使用目的の利用か、個人の利用環境を整えている業者の利用か
で長く争われていた間接侵害の問題について解説をします。

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