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JRRCマガジン No.104  2017/6/29
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雨粒の宝石を纏った紫陽花が見頃を迎えていますが、
皆さまいかがお過ごしでしょうか。

さて、今回の山本隆司弁護士のコラムは、
「米国における応用美術の保護」です。
従来、日本では物品のデザインの保護は意匠法によるとされてきましたが、
昨今 著作権法等による重畳的保護とする考え方の動向が注目されています。
これに関連する米国での判例についてお話しいただきました。

それでは、著作権談義第56回をお届けいたします。

◆◇◆山本隆司弁護士の著作権談義━━━━━━━━

第56回「米国における応用美術の保護」

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 今年の3月21日に、アメリカの連邦最高裁判所は、応用美術の保護について重要な
判決を下しました
(Star Athletica, L.L.C. v. Varsity Brands, Inc., 580 U.S. __(2017))。
 アメリカでは、実用品のデザインに対する著作権の保護について、その「実用性か
ら識別可能でありかつそれから独立している」絵画、図形または彫刻の著作物として
の特徴を有するものに著作物として保護を認めています(著作権法101条)。これまで、
「実用性から識別可能でありかつそれから独立している」という要件が、分離可能性の
問題として、下級審の裁判例と学説で解釈が区々となっていました。おおざっぱに言
えば、物理的に分離可能であることを要するとの説と、観念的に分離可能であれば足
りるとの説と、その折衷説に分かれていました。
 この判決は、「実用品のデザインの美的特徴が、(1)当該実用品から分離した二次
元的または三次元的美術著作物として看取されることが可能であり、かつ(2)当該実
用品から分離したとする場合に当該媒体またはその他の媒体上において絵画、図形
または彫刻の著作物に該当しうるものであるならば、当該美的特徴は著作権の保護
適格を有する」との判断基準を立てました。いいかえると、そのデザインがもともと当
該実用品ではない媒体にあったと仮定した場合に(観念的に分離可能であれば足りる
との前提に立って)、著作物として認められるならば、著作物性があるとしたものです。
なお、著作物性を認めるために、日本の裁判例のように「高度の芸術性」を要件とは
していません。
 この判決は、この基準を当てはめて、チアリーダーのユニフォームの色彩的デザイ
ンに著作物性を認めました。なお、その色彩的デザインをユニフォームではなく紙の
ような平面に落とした場合に、襟や脇の切り込みなどユニフォームの形状が残ってい
ますが、それはキャンバスの制約に過ぎないから、著作物性を失わせるものではない、
と判示しています。
 したがって、この判決の基準では、たとえば、自動車という実用品のデザインにおい
て、車体のフォルムは実用品自体のデザイン(分離不可能)であって著作物性はあり
ませんが、車体に付け加えられたエンブレムや描かれた模様には(創作性さえあれば)
著作物性があることになります。同様に、日本で問題になった幼児用イスのデザイン
において、横から見るとZ型であるという特徴に著作物性が認められましたが、アメリカ
法では、その特徴は実用品自体のデザイン(分離不可能)であって著作物性は認めら
れないと思います。また、ファッションショーに登場するドレスのデザインにおいても、
アメリカ法では、全体形状は実用品自体のデザイン(分離不可能)であって著作物性
は認められないと思います。しかし、ドレスであっても、アクセサリーとして取り付けら
れた人形やブローチは、分離可能であって、(創作性さえあれば)著作物性があること
になります。
 また、アメリカ法における「実用品」の概念も、日本法でのとらえ方と異なるので、注
意が必要です。アメリカ法では「実用品」は、「単に物品の外観を表しまたは情報を伝
えること以外に、本来的に実用的機能を有する物品をいう」と定義されています。人形
は子供のおもちゃとしての実用性を持っていますし、絵画は額に入れられれば壁の埋
め草としての実用性を持っています。日本では、子供のおもちゃ用の人形は実用品と
して扱われていますが、額に入れられた絵画は実用品として扱われてはいません。し
かし、アメリカ法の概念からは、子供用の人形も額に入れられた絵画も、それの持つ
実用性は「本来的」なものではないので、実用品とは考えられません。
 各国で、実用品に対する著作物性へのアプローチは異なりますが、実用品自体の
(分離不可能な)デザインを、著作権で保護する道を開くか(独仏、イス判決)否か(米、
日本の主流判決)が、法政策における重要な分岐点のように思います。
 この判決のアプローチは、今後日本にも少なからず影響を与えるものと予想されま
す。

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