JRRCマガジン No.134 テーブルスピーチ

半田正夫

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JRRCマガジン No.134   2018/5/25
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道端の主役が紫陽花に変わりつつある時季となりましたが、
皆さまいかがお過ごしでしょうか?

さて、
今回の半田先生のコラムは、「テーブルスピーチ」です。
何かを話してほしい、とスピーチを頼まれて頭を悩ましたという経験をされた方も
いるのではないでしょうか。
半田先生よりスピーチに関する著作権法上の取り扱いをお話しいただきました。

◆◇◆半田正夫の著作権の泉━━━

第58回「テーブルスピーチ」

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ある結婚披露宴の席上のことである。
定刻になって恒例どおり媒酌人夫妻による新郎新婦の紹介のあと、主賓の挨拶に移った。
ところが、新郎の主賓が交通渋滞に巻き込まれ、まだ会場に到着していなかったので、
新婦の主賓の挨拶を先に行うことになった。
新婦の主賓は、新婦のエピソードなどを紹介したあと、
「ここでお二人に≪三つのフクロ≫を大事にしていただきたいとお願いします。
第一に胃ブクロです。お互いの健康、これが幸せな家庭を作る第一の条件だと思います。
胃袋を大事にして健康で明るい家庭を作ってください。第二はおフクロです。
新郎・新婦が今日あるのはお母様、さらにはお父様のおかげです。
どうかご両親を大事にしてあげてください。第三は堪忍ブクロです。
長い結婚生活の間には喧嘩することもありましょう。

しかし、お互いの立場を思いやって我慢することも時には必要で、
これが円満な夫婦関係を持続する秘訣といえます。
以上三つのフクロを大事にするようお願いして、
お二人が結婚するにあたってのはなむけの言葉といたします。」と述べて席に着いた。
やがて新郎の主賓がアタフタとやってきて挨拶に立った。
彼は新郎の人となりを紹介したあと、
「最後に、お二人にはなむけにコトバを贈りたいと思います。
それは三つのフクロを大事にしてほしいということです」といって、
先ほどと全く同じ話をしたのである。
この話がすでに語られていることを知らない本人は得々としゃべり、
参会者一堂に感動を与えたと思っていたようであったが、
会場は完全にシラケきっていたとのことである。

最近でこそなくなったが、
私も教え子の結婚披露宴に呼ばれてスピーチをする機会が多かった。
この場合にはなにか教訓めいたことをいうのが恒例のようであるが、
なかなか良い素材がみつからず、これが悩みの種となっていた。
この悩みはわたしだけではないようで、
「披露宴における挨拶の仕方」などと銘打ったテーブルスピーチ集などが
書店のコーナーの一角を占めていて、なかなかの売れ行きと聞く。
しかしそうなると、同じスピーチをあちこちで聞くハメとなる。
≪三つのフクロ≫の話は、私の経験でもいままで四度聞いている。

おそらくこの話は、市販のテーブルスピーチ集に載っているのではないかと想像される。
もしそうだとすれば、この話をスピーチすることは、
難しく考えると言語著作物の無断口述ということになろうか。
もっとも、スピーチをする本人にしてみれば、
そのスピーチは営利目的で行っているわけではないし、
スピーチをする報酬をもらっているわけでもないうえに、
聴衆はこれを聞くためにカネを払っているわけでもないところからすれば、
著作権法38条1項の「営利を目的としない上演等」に該当するとして著作権法に触れない
と考えたほうがよいように思われる。

しかし、この披露宴が営利目的で運営されている会館やホテルなどで行われている場合には、
例の「カラオケ法理」によって、店の経営者の営利目的内の出来事として、
経営者が著作権違反に問われることも考えられる。
テーブルスピーチ集の作者からすれば、スピーチ集に載せて市販するということは、
これの使用を購入者に許しているとみることもできるので、
口述権の侵害でトラブルが発生することはないと思われるが、
いささか気になるところではある。
いずれにせよ、人生の出発点に当たる結婚披露宴のスピーチは、
創作性のある心のこもった自分の言語著作物でありたいものである。

こう書いているうちに、
待てよ、冒頭に記した≪三つのフクロ≫は無断複製に当たるのではないか
との心配が出てきた。
もしこの話に著作者がいるのなら、引用、
しかも著作者不明のため出典省略として扱っていただけるならば幸いである。

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