JRRCマガジン No.149 著作隣接権

山本隆司

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JRRCマガジン No.149  2018/11/7
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11月も一週間が過ぎました、街では、クリスマスツリーの飾りつ
けや忘年会の話題が多くなってきました。著作権関連としては
TPP11も話題の一つですね。

さて、
今回の山本隆司弁護士のコラムは「著作隣接権」です。

◆◇◆山本隆司弁護士の著作権談義━━━━━━━━━━━

第69回 「著作隣接権」

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 ご存じのとおり、アメリカ法やイギリス法には著作隣接権の制度
がありません。なぜないのでしょうか。見方を変えれば、日本法に
はなぜ著作隣接権の制度があるのでしょうか。そもそも著作隣接権
という制度はなぜ設けられているのでしょうか。ドイツ法を調べて
いて、何となく見えてきたような気がしますので、この「気」を共
有したいと思います。
 ドイツの著作権法の教科書に、つぎのような一文を見つけました。
「著作物および制作物【著作隣接権の対象物】の被複製可能性
【性質自体における非排他性】は、著作者との観念的結びつきから
解き放たれた英米法がなぜ著作権だけを認め『著作隣接権』を認め
ないのかを理解することを可能にする」(Manfred Rehbinderの著
作権法17版234頁)。つまり、ドイツでは、著作者の精神的創作物
であるものを著作物として著作権で保護します(著作者の精神的
創作物ではないものは、無断複製から保護される必要のあるもの
ついては、著作隣接権で保護します)。これに対して、英米法で
は、著作者の精神的創作物であるか否かを問わず、無断複製から
保護される必要のあるものを、著作物として著作権で保護します。
その結果、英米法では、無断複製から保護される必要のあるもの
一般を著作権の対象にしているので、著作隣接権の制度が存在し
ない、という趣旨です。
 というのは、ドイツやフランスなど大陸法系の国では、自然法
上、著作者にはその著作物に精神的所有権が認められるとの思想に
立っています。その精神的所有権を制定法化したものが著作権です。
したがって、著作物であるためには、著作者の精神性=個性が現
れていることが必要になります。ドイツでは、この個性の敷居が
日本法で考えるよりはかなり高いようです。そのために、著作物
に該当しないとして、実演やレコード製作や放送のほか、データ
ベース、写真、動画、学術的出版物など、10種類を著作隣接権で
保護しています。また、コンピュータ・プログラムも、通常の意
味での個性が認められないので、「個性」の要件に代えて「独自
の精神的創作物」であれば足りるとの例外を設けて、著作物とし
て保護しています。
 したがって、大陸法系の国の思想においては、著作物に該当す
るものには、著作者の精神的所有権が及ぶので、自然法上、フリ
ー・ライド禁止原則が及びます。しかし、著作隣接権の対象物に
は、フリー・ライド禁止原則が及びませんが、産業政策として、
複製から保護する制度が著作隣接権ということになります。
 他方、イギリスやアメリカなど英米法系の国は、自然法上、著
作者にはその著作物に精神的所有権が認められるとの思想には立
っていません。自然法上は、自由競争が認められ、コピー自由を
原則とします。したがって、産業政策として、複製から保護する
ための制度が著作権ということになります。
有体物はある人がそれを使用すれば、他の人はそれを使用できな
いので、その性質上排他的です。しかし、無体物は、ある人がそ
れを使用しても、他の人はそれを使用することができるので、そ
の性質において非排他的です。したがって、人が手間暇を掛けて
作り出した無体物であれば、一般的に、無断複製から保護する必
要性が認められることになります。そのため、英米法では、著作
者の精神性=個性が現れていることではなく、著作者が作ったと
いう事実=創作性(originality)さえあれば、著作物として保護
します。ここでの創作性の敷居はかなり低いものになります。
 そこで、日本法を見ると、かなり折衷的なように思います。創
作性の要件の基準として「個性」と言ったり、ローマ条約に従って
実演やレコード製作や放送を「著作隣接権」の対象にしたりと、大
陸法系の影響を受けています。しかし、ドイツで個性が認められ
ず著作隣接権の対象とされているデータベース、写真、動画、学
術的出版物なども、また、やはり個性の要件を満たさないと考え
られているコンピュータ・プログラムも、日本では、通常の「創作
性」の要件を満たすものとして、著作権で保護しています。したが
って、創作性の要件は、ドイツ法における「個性」とは異なり、ほ
とんどアメリカ法の創作性(originality)と変わりがないよう
です。そうすると、ドグマから脱すれば、現在著作隣接権でのみ
保護されている実演やレコード製作や放送も、創作性が認められ
うるものであり、著作物として保護されうることになろうか
と思われます。

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編集責任者 JRRC代表理事・副理事長 瀬尾 太一  

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