JRRCマガジン No.148 著作者の死後における著作物の保護

半田正夫

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JRRCマガジン No.148  2018/10/18
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最近JRRCの事務所のある表参道では、ブーツを履く人を見かける
ようになりました。ファッションは先取りが大事なのですね。

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さて、
今回の半田正夫弁護士の著作権の泉は
「著作者の死後における著作物の保護」についてです。

◆◇◆半田正夫弁護士の著作権の泉━━━━━━━━━━━

第61回 「著作者の死後における著作物の保護」

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      著作者の死後における著作物の保護(著作権の泉?62)
半田正夫

いやな言葉のひとつに「後期高齢者」がある。高齢者のうち75歳
以上の老人を指す言葉だそうだ。人生の黄昏期に達した老人をさ
らに先に追いやるような響きがして感じが悪い。75歳をはるか昔
に超えた私は、そうであるならいっそのこと、はっきりと末期高
齢者と呼んでくれといいたくなるほどだ。 
それはさておき、最近やたら「相続」、「お墓の選び方」、「葬
儀の仕方」などの文字が目についてたまらない。書店に行って本
棚に目をやると、この種のタイトルのついた本が非常に多いのに
気づく。
 いうまでもなく著作物も財産の一部をなすから、著作者が死亡
したときは遺産の一部として当然相続の対象になる。それは流行
作家の書いた市場価値の高い書籍についてであれ、われわれの書
くような市場価値のない作品についてであれ、異なることはない。
つまり著作権は相続の対象となるのである。
 問題なのは著作者人格権である。著作者人格権は一身専属権であ
るから(著作59条)譲渡も相続もできないはずである。したがっ
て、著作者の死亡とともに著作者人格権は消滅するのがふつうの
考え方である。だが、そうだとすると、公表権、氏名表示権、同
一性保持権は消滅してしまうので、著作者が生前、作品の公表を
頑なに拒んだ場合であっても公表が可能となり、著作者が無名また
は匿名で公表した場合であっても実名での利用が許されたり、
はなはだしきは勝手に手を加え、品格のある作品が猥雑で下品な
作品に仕立て上げられたりしても、誰もそれにクレームをつける
ことができず、後世の人はそれがその著作者の作品だと誤解して
しまいかねないという危険性が生ずることになる。
これでは優れた文化の伝承とそれを踏まえた今後の発展は到底考え
られなくなってしまうことになる。著作者の死後においてもなんら
かの形で著作者の人格的利益を保護しなければならないという理由
はここにある。
 旧著作権は著作者の死後に著作者人格権を行使しうる者として
「著作者ノ親族」を掲げていた(旧著作36条ノ2第2項)。著作者
の「相続人」とはせずに「親族」とした趣旨は、著作者人格権が一
身専属権であって著作者の死亡とともに消滅し相続の対象になるも
のではないが、著作者の人格的利益保護のためとくに親族に認めら
れたものである。そこで通説は、この規定を解して、著作者人格権
が親族に移転されることを意味するものではなく、著作物の公共性
にかんがみ、法律がとくに親族に固有の人格権を与えたものである
と説明していた。しかし、このような規定および解釈には、次の2
つの点で問題があった。
 まず第一点は、法は著作者人格権の行使者として著作者の親族と
いうだけで、その範囲を具体的に制限していないということである。
著作権法に規定がない以上、それは私法の一般法たる民法の規定に
拠らざるをえないことになる。そこで民法をみると、725条に親族
の定義が規定されており、それによると、①六親等内の血族、②配
偶者、③三親等内の姻族であることが明らかとなる。ここで親等と
は、親族間の親疎を表す尺度のことで、自分を中心にして、親との
間を一親等、祖父母との間を二親等、また子との間を一親等、孫と
の間を二親等という。兄弟など傍系家族との間については、自分と
共通の祖先(つまり親)に戻ってそこから計算するので二親等、お
じ・おばとの間は三親等、従兄弟との間は四親等となる。したがっ
て、民法にいう親族の範囲に属する者は膨大な数に及ぶことになる
が、これらすべての者が著作者人格権を有するということがいかに
不合理であるか、いまさら言うまでもない。
 第二点は、親族が有する著作者人格権が彼ら固有の権利であると
いう見方は、著作者ではない者に著作者のみが有するはずの権利を
創設するという、理論的に矛盾することを容認することになるばか
りか、もしかりにこれを認めるとすれば、固有の権利である以上、
著作者の著作者人格権と親族のそれとの間に関連性がまったく存在
しないのであるから、親族の著作者人格権の行使が結果的に著作者
の利益を侵害する場合においても、これを是認しなければならない
という不当な結論となる。
 以上の問題点を回避するため、現在の著作権法は一応の手当てを
施している。
まず第一点については、「親族」を「遺族」に変えたうえ、遺族の
範囲を、配偶者、子、父母、孫、祖父母又は兄弟姉妹とし
(著作116条1項)、しかも行使の順序をこの順序とする旨の規定を
置いたことにより(著作116条2項)、著作者人格権の行使者が大幅
に縮減されることになった。
 また第二点については、著作権法60条において、「著作物を公衆
に提供し、又は提示する者は、その著作物の著作者が存しなくなっ
た後においても、著作者が存しているとしたならばその著作者人格
権の侵害となるべき行為をしてはならない。ただし、その行為も性
質及び程度、社会的事情の変動その他によりその行為が当該著作者
の意を害しないと認められる場合は、この限りではない。」と規定
しているところから、間接的にではあるが、遺族による著作者人格
権の行使にも著作者の意に反することはできない、という歯止めが
かけられたとみることができる。
 だが、これでも十分とはいえないようである。遺族の範囲を限定
し、権利の行使の順位を明らかにしたとはいえ、肝心の行使の方法
について具体的な規定を欠いているからである。すなわち、①後順
位者は先順位者が著作者人格権を行使しない場合にのみ行使できる
とする趣旨か、あるいは先順位者の不行使も行使の一態様とみてこ
の場合に後順位者の行使を認めず、後順位者は先順位者の死亡また
は権利の放棄がある場合に限り著作者人格権を取得して、これを行
使できるにすぎないという趣旨か、②先順位者の著作者人格権の行
使がかえって著作者の意に反すると考えられるような場合、後順位
者はこれに対し異議を申し立てることができるか、③同順位者が複
数いる場合、これらの間で著作者人格権の行使はどのように行われ
るべきか、などについては明らかでなく、問題を後に残していると
いってよい。このような問題点については現行法が立法化されたと
きに筆者がすでに指摘したところではあるが、いまだにこの点につ
いて触れた判例はなく、論述した論稿もほとんどないのは残念の極
みであるといってよい。

 だが、このようなことをネチネチ考えるのも末期高齢者特有の悪
弊なのかもしれない。

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