JRRCマガジン No.146 著作物等の公衆送信に関する諸問題について(2-2)

川瀬真

━━━━━━━━━━━━━━━━━━
JRRCマガジン No.146  2018/9/26
━━━━━━━━━━━━━━━━━━

寒暖の差が激しいこの季節、体調管理には気をつけたいですね。
本日のメルマガは、「川瀬先生の著作権よもやま話」前回の続きと
本日19時開催予定の「コンテンツビジネス研究会」のご案内です。
     テーマ:「広告実務と著作権の最新事情」
開催概要詳細はこちらです →https://jrrc.or.jp/contentsbiz/

◆◇◆川瀬先生の著作権よもやま話 ━━━━━━━━━━━━━

第26回 「著作物等公衆送信に関する諸問題について(2)」

━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━◆◇◆
 著作物等の公衆送信に関する諸問題について(2)
(通信と放送の融合<アナログ放送の終了に関連して>
(その2))

4 2006(平成18)年の著作権法改正の内容
(1)放送の同時再送信に係る実演及びレコードに関する権利の見
直し
①改正の概要
 前回の「その1」で記述したように、放送の同時再送信に関し有
線放送で行うか、入力型自動公衆送信(IPマルチキャスト放送)
で行うかにより、実演及びレコードに係る権利の働き方が異なって
いました。そのため著作権契約の手続方法に関し事業者間で不公平
が起こることから、できるだけ権利の働き方を平準化するための改
正が行われました。
 具体的な改正内容は後述するとして、おおざっぱにまとめます
と、有線放送による同時再送信については、法改正前は実演家及び
レコード製作者の権利が働かなかったのですが、法改正後は新たに
報酬請求権が付与されることになりました。また、入力型自動公衆
送信による同時再送信については、法改正前は原則として送信可能
化権(許諾権)が働いたのですが、法改正後は一定の条件付きでは
ありますが、実演家等の許諾権は補償金請求権に変更されました
(報酬請求権と同じ性質です)。
 この改正により、放送の同時再送信については、有線放送か入力
型自動公衆送信かにかかわらず実演家及びレコード製作者の許諾権
は働かないが、報酬又は補償金の支払いが必要となりました。

②実演家の権利について
ア 有線放送の方法による放送の同時再送信に関する権利
(ア)法改正前の状況
 法改正前の実演家の権利ですが、実演家は、その実演を放送し、
又は有線放送する権利(92条1号)を有していました。しかしなが
ら、この権利は、放送される実演を有線放送する場合(同条2項
1号)や実演家の許諾を得て録音・録画されている録音物・録画物
を用いて放送・有線放送する場合(同条2項2号イ)等については
適用しないとされ、実演の二次的な利用については原則として許諾
権は働かないようになっていました(92条2項)。
一方で、市販用の音楽CD等の商業用レコードを使用して放送又
は有線放送をしたときは、許諾権ではありませんが、当該レコード
に実演が録音されている実演家には商業用レコードの二次使用料請求
権(報酬請求権)(95条1項)が別途付与されていました。ただ
し、この請求権は、商業用レコードを用いて直接に放送又は有線放
送する事業者に対して請求できるものであり、放送の同時再送信に
ついては権利が働かないことになっていました
(改正前の95条1項括弧書)。
このように、法改正前の著作権法では、実演家は有線放送権又は
商業用レコードの二次使用料請求権を有しているものの、放送の同
時再送信には権利は働かないことになっており、再送信事業者は、
著作権者の許諾は必要ですが、実演家及びレコード製作者について
は許諾も報酬・補償金の支払いも必要なかったということになります。

(イ)法改正の内容
 (ア)で記述したように実演家の有線放送権等(92条1項)に
ついては、放送される実演の有線放送には適用がなかったのですが
(92条2項1号)、別途規定を新設し、放送される実演を有線放送
する場合は、原則として実演家に相当な額の報酬を支払わなければ
ならないとしました(94条の2)。
 また、商業用レコードの二次使用料請求権については、放送の同
時再送信についても原則として二次使用料請求権が及ぶことになり
ました(95条1項括弧書)。
 このように、この改正により、生実演か録音物による実演の送信
かにかかわらず、原則として放送の同時再送信については、実演家
の報酬請求権が働くことになりました。

イ 入力型自動公衆送信の方法による放送の同時再送信に関する権利
(ア)法改正前の状況
 実演家は、原則としてその実演を送信可能化する権利(92条の
2)を有しています。この送信可能化権とは、利用者からのリクエ
ストがあれば自動的に公衆送信できる状態にすることで、実演をネ
ット上にアップロードする際に働く権利と考えてください
(2条1項9号の4、同項9号の5)。
 この権利は、生実演か録音物による実演の送信かにかかわらず、
放送の同時再送信についても原則として実演家の許諾権が働くこと
になっていました。

(イ)法改正の内容
 このように放送の同時再送信については、原則として実演家の許
諾権が働くので、権利制限のための規定を新設し、放送される実演
の同時再送信が放送対象地域(放送法に定める放送対象地域(放送
法91条2項2号)又は当該放送対象地域の定めがない放送にあっ
ては電波法に定める放送区域(電波法14条3項2号))において受
信されることを目的として送信可能化する場合は、許諾権が働かな
いとされました(102条5項)。その一方で、この場合、原則とし
て実演家に相当の額の補償金を支払わなければならないとされまし
た(102条6項)。

(注)放送対象地域の定義規定については、34条1項を参照

 この放送対象地域ですが、例えば、地上波放送の放送事業者は、
放送対象地域ごとに免許が与えられています(一般に都道府県レベ
ル)。この地域は、放送の直接受信が想定されている区域であるの
で、これを権利制限の基準にしました。すなわち、放送対象地域内
の受信を目的とした放送の同時再送信であれば、そもそも放送の直
接受信想定地域を超えるわけではないので、許諾権を二重に働かす
必要はないとの判断があったわけです。また、IPマルチキャスト
放送の場合は、IP局内装置から次のIP局内装置に中継する際に
放送対象地域を超えて送信できなくすることが物理的に可能ですの
で、放送対象地域という基準には合理性がありました。

(注)例えば地上波放送を受信してインターネットで再送信(入力型
自動公衆送信)することは技術的には可能ですが、インターネットの
場合、再送信の範囲を放送対象地域に限定することは事実上不可能な
ので権利制限の対象にはならないことになります。 

このように、この改正により、生実演か録音物による実演の送信
かにかかわらず、原則として放送の放送対象地域内における同時再
送信(入力型自動公衆送信)については、実演家の送信可能化権が
制限され、補償金請求権が働くことになりました。

③レコード製作者の権利
ア 法改正前の状況
 レコード製作者の権利については、実演家の場合と異なり、かな
り単純な構成です。レコード製作者は、商業用レコードの二次使用
料請求権(97条1項)及び送信可能化権(96条の2)を有してお
り、実演家と異なり、レコードに係る放送・有線放送する権利はあ
りませんでした。また、法改正前の二次使用料請求権については、
実演家の場合と同様、商業用レコードを使用した放送の同時再送信
については権利が働きませんでした(改正前の97条1項括弧書)。

イ 法改正の内容
 改正の内容も実演家の場合と同様です。商業用レコードを使用し
た放送の同時再送信については二次使用料を請求できることになり
ました(97条1項括弧書)。また、送信可能化権については、権利
制限が適用され、放送対象地域内の放送の同時再送信(入力型自動
公衆送信)については権利制限の対象になり許諾権は働きません
が、補償金の支払いが必要となりました(102条7項)。

(2)非営利かつ無料で行われる放送の同時再送信に係る著作物、
実演及びレコードに関する権利の見直し

 法改正前においては、放送される著作物を非営利・無料で有線放
送する場合は、著作権が働かないようになっていました(改正前の
38条2項)。また、この措置は、著作隣接権についても準用されて
いました(改正前の102条1項)。これは、景観や美観を維持する
ためや、地形やビル影等の立地条件により直接受信が困難な地域
(難視聴地域)の解消等のために行われる小規模な有線放送につい
て、その実施を円滑に行えるようにしたものです。
 本改正では、この無許諾・無償で行うことができる権利制限の範
囲を、放送対象地域内で行われる入力型自動公衆送信に拡大すると
ともに(38条2項、102条1項)、実演及びレコードについては、
二次使用料(報酬)又は補償金の支払いを要しないこととされまし
た(二次使用料―95条1項括弧書、97条1項括弧書、補償金―
102条6項、同条7項))。

 放送の同時再送信に係る主な法改正の内容は以上のとおりです。
次回は国際条約や自主放送に係る問題について解説します。
  

━┯━━━━━━━┯━
┌┴──────────-──┴┐
│インフォメーション│ 
└─────────┘           
■読者の声
 『読者の声』の投稿と紹介
 「JRRCマガジン」が皆さんにとって便利な、役に立つ情報収集ツールとして
 ご活用していただけますよう、ご意見・ご感想をお寄せいただき、その中から選出
 してご紹介いたします。

           ♪メルマガへのご意見・ご感想をお待ちしています。♪

★投稿先はこちら↓↓↓
https://reg31.smp.ne.jp/regist/is?SMPFORM=ljsi-ofoco-4c31de2478a11854bae2604a361ea26e

★掲載された方には粗品を進呈!
 記事として掲載する場合は、事前にご連絡しご了解を頂くように致します。

■各種お手続き
 【読者登録】  
  https://reg31.smp.ne.jp/regist/is?SMPFORM=ljsi-ofsfn-7d3cae9f41a39fd12329bb7d1810716d  
 【配信停止】
  https://reg31.smp.ne.jp/regist/is?SMPFORM=ljsi-ofogr-f24b073f7fe3b1b59f0963e9cf0179d2 
 【ご意見・ご要望など】
  https://reg31.smp.ne.jp/regist/is?SMPFORM=ljsi-ofmjl-24d6432d923fce555c895cdfe4e84fd9

※ご了解ください
 このメルマガは等倍フォントで作成していますので、MSPゴシック
 プロポーショナルフォントで表示すると改行の位置が不揃いになります。
※このメルマガにお心あたりがない場合は、お手数ですが、文末のお問い合せ窓口まで
 ご連絡下さいますようお願いいたします。
※メルマガ配信の停止をご希望の方は下記の「配信停止」からお手続き下さい。
※JRRCマガジンを、お知り合いの方、同僚の方などに是非ご紹介下さい。
下記の「読者登録」からお手続き頂けます。

★JRRCマガジンバックナンバーはこちらから
⇒https://jrrc.or.jp/jrrcmagazin/
 
━┯━━━━━━┯━
┌┴───────────┴┐
│お問い合わせ窓口│
└─────────────┘           
公益社団法人日本複製権センター(JRRC)
⇒https://jrrc.or.jp/contact/
編集責任者 JRRC代表理事・副理事長 瀬尾 太一  

関連記事

  1. 川瀬真
  2. 川瀬真
  3. 川瀬真
  4. 川瀬真
  5. 川瀬真
  6. 川瀬真
PAGE TOP