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自大学の過去の入試問題を市販問題集に掲載するため教材会社から依頼を受けたので無条件で提供したい。入試問題には他人の著作物を利用している部分がある。

私はある大学の入試担当の教員ですが、教材会社から市販する問題集に掲載するため、本学の入学試験問題の提供依頼があります。入試問題には、他人の著作物の一部分が掲載されていることもあるのですが、無条件で提供してもいいのでしょうか。また、その場合、入試を作成した担当教員の許諾は必要でしょうか。
入学試験問題は、①複数の問題から構成されており、その問題の選択・配列に創作性があれば編集著作物が成立します。また、②個々の問題の作成に創作性があれば、③個々の問題中に掲載された他人の著作物とは別個に、言語著作物が成立します。
問題集に入学試験問題を掲載する場合、教材会社は、以上のそれぞれの権利者から複製許諾が必要です(著作権法21条)。③個々の問題に掲載された他人の著作物については、試験の「問題として」行う複製には権利制限が認められています(36条1項)が、教材会社が市販する問題集にこれを転載することはこれに該当しないので、問題集への掲載については、当該著作物の著作権者の許諾が必要です。
ここで、①編集著作物としての入試問題全体に対する著作権と②言語著作物としての個々の問題に対する著作権は、大学が保有していると思われます。②個々の問題についても、おそらく職務著作が成立して入試作成を担当した担当教員ではなく大学当局が著作権者となると考えられるからです。他方、③個々の問題に掲載された他人の著作物に対する著作権は、大学にはありません。大学が入試問題に他人の著作物を利用できたのは、著作権法36条の権利制限に基づくに過ぎないからです。そのため、当該問題集に当該他人の著作物を転載することに対する許諾権限は持っていません。
本件では、教材会社は入試問題を作成した大学に問題集への転載に対する許諾を求めていますが、単純に問題集への掲載を許諾すれば、大学が入試問題に引用された他人の著作物の転載についてまで権限があって許諾したと解釈される恐れがあります。したがって、大学は教材会社に対して、当該入試問題に引用された他人の著作物の転載については許諾しないこと、別途教材会社の責任にて権利者からその許諾を取得することを、明確にしておくことに注意する必要があります。

回答者  山本隆司 弁護士 (インフォテック法律事務所)
※回答内容は本ケースにおける一例を掲載しています。
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