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大学の入試問題作成で、小説の一部を利用したい。ただし入試問題の性格上、難しい用語等を平易に修正したり、文章の一部を削除することがある。

私は大学の教員ですが、来年度の入学試験の国語の問題として、ある現代作家の小説の一部を利用したいと思っています。この場合、試験問題の作成に当たっては、権利者の許諾は必要ですか。なお、試験問題の性格上、難しい用字・用語を分かりやすいように修正したり、文章の一部を削除して利用することも考えていますが、これも何か問題があるでしょうか。(36条)
小説を複製する行為は、権利者の複製権(著作権法21条)に抵触します。しかし、公表された著作物は、入学試験において、その目的上必要と認められる限度において、複製することができます(36条1項)。よって、本件でも、入学試験において必要な一部分について、権利者の許諾なくして、小説を複製することができます。
ただし、著作物の一部の改変を伴う態様で複製をする場合には、それが「やむを得ないと認められる改変」(20条2項4号)である場合を除き、著作者の同一性保持権(20条1項)を侵害しますので、改変には著作者の許諾が必要となります。用字・用語の修正については、難解な単語を平易な単語に置き換える等の行為は、「やむを得ないと認められる改変」に該当しない場合がありますが、旧漢字を当用漢字に置き換える等の範囲であれば、「やむを得ないと認められる改変」に該当します(半田正夫『著作権法コンメンタール〔第2版〕』311頁)。また、文章の一部の削除も、試験問題の作成上必要であれば、試験問題の性質上「やむを得ないと認められる改変」に該当すると考えられます。
したがって、試験問題としての利用において、必要な用字・用語の修正や文書の一部の削除をすることも権利者の許諾なく行うことができると思われます。

回答者  山本隆司 弁護士 (インフォテック法律事務所)
※回答内容は本ケースにおける一例を掲載しています。
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