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公立図書館で市販の住宅地図の複写申込みがあった場合、見開き1枚のみ提供している。

公立図書館の司書ですが、私の館には時々営業マンと思われる方が市販の住宅地図の複写物の提供を申し込みに来られます。私の館では住宅地図については、見開き1枚しか複写物の提供を認めていないのですが何か問題はありますか。
公立図書館においては、利用者の求めに応じ、①利用者の調査研究のために、公表された②著作物の原則として一部分の複製物を、一人につき一部提供する場合に限り、著作権者の許諾なしに複製することができるとされています(著作権法31条1項1号)。
 まず、①利用者の調査研究には、営利目的の調査研究も含まれます。したがって、営業マンであっても、調査研究の目的で複写を希望するのであればこの要件には該当します。
 また、②著作物の一部分とは、各著作物の半分を超えない範囲と考えられています。ここで、地図帳の場合、一冊で一つの著作物となるのかが問題となります。たとえば、世界地図や日本地図では、一般的に、各ページまたは見開きページに掲載されたエリアごとの地図がそれぞれ一つの著作物で、地図帳は、その編集著作物ですので、著作物の一部分とは、各ページまたは見開きページに掲載されたエリアごとの地図の一部分をいうことになります。しかし、住宅地図では、たとえば関東圏の住宅地図が大図版で作られ、印刷物に冊子化される際には、それを細分化して各ページまたは見開きページにその一部分ずつを掲載しているにすぎません。このような場合、冊子の全体または一部分で構成する特定エリアの多数ページで1つ著作物を構成しており、著作物の一部分とは、その多数ページの半分を超えないページ数に掲載された地図です。
 以上のように考えると、図書館が、営業マンによる市販の住宅地図の複写物の提供を申し込みに応じて、見開き1枚しか複写物の提供していないことは、権利制限の範囲を超えるものではないので、違法ではないと考えます。
 なお、国立国会図書館では、冊子体の地図については一律で、見開きの片ページまでしか複写できないとする運用をしています。
 また、関係当事者間で作成された「複製物の写り込みに関するガイドライン」(平成18年1月1日)では、著作物の一部を複製しようとして同一紙面上に写り込んでしまう部分について、遮蔽等の手段により複製の範囲から除外することまでは要しないとされています。しかし、権利者の経済的利益を大きく侵害する恐れがあるとして、地図はその対象から除外されていますので、各ページまたは見開きページに掲載された地図が一つの著作物と考えられる場合には、写り込みを理由に見開き1枚の地図全体の複製をすることもできないと考えられます。

回答者  山本隆司 弁護士 (インフォテック法律事務所)
※回答内容は本ケースにおける一例を掲載しています。
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