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公立図書館での複製サービスで、閲覧室にコイン式複写機を設置し、利用者に自由に複製させている。

公立図書館の司書ですが、私が勤務する図書館では人員不足のため、閲覧室にコイン式複写機を置いて、利用者が本棚にある図書・雑誌を自由に複製させています。このような方式による複製サービスは適法ですか。(31条、30条)
公立図書館においては、利用者の求めに応じ、利用者の調査研究のために、公表された著作物の原則として一部分の複製物を、一人につき一部提供する場合に限り、著作権者の許諾なしに複製することができるとされています(著作権法31条1項1号)。
 この条件に該当するためには、まず、複製の主体が物的にも人的にも図書館であるといえなければなりません。すなわち、①図書館の管理下に置かれた機器で、②図書館職員が複製することが原則です。
 ①閲覧室に置いたコイン式複写機は、確かに図書館の管理下にあるといえます。
 しかし、②図書館職員による何らのチェックもなしに、利用者が本棚にある図書・雑誌を自由に複製する場合には、複製の主体が図書館とはいえません。したがって、本件では、31条の適用はありません。
 他方、図書館職員が、利用者からの申請書をチェックするほか、利用者を図書館職員の監督下でその手足として複製させる場合には、法的には、図書館職員による複製と評価することも可能と考えられます。
また、私的複製としての権利制限の適用も考えられます。すなわち、利用者が個人的な調べもの等のために自ら複製するのであれば、当該複製は私的使用目的の複製に該当します(30条1項)。コイン式複写機での複製は、私的複製の例外である自動複製機器(30条1項1号)での複製に該当しますが、文書・図画については「当分の間」適用除外とされている(附則5条の2)からです。しかし、この点については、①図書館内であっても私的複製の要件を満たせば30条が適用されるとする見解と、著作権侵害に対する措置1条が厳格な要件の下に複製を認めている趣旨からみて、30条は適用されないとの見解に分かれています。特に、利用者が本棚にある図書・雑誌を図書館の管理する複写機で自由に複製させる場合には、カラオケ法理の適用によって、複製主体が利用者ではなく図書館と評価されることもあるので、30条では正当化できない危険があると考えます。

回答者  山本隆司 弁護士 (インフォテック法律事務所)
※回答内容は本ケースにおける一例を掲載しています。
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