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知恵袋

予備校の模擬試験問題で文芸評論の一部を利用したい。在学生は無料、在学生以外も有料で試験を受けられる。

私は予備校の教員ですが、私の予備校では、大学入試の直前対策として、在学生に模擬試験を実施しています。在学生は無料で受験できますが、在学生以外の方も1科目2000円の受験料を支払えば試験を受けることができます。この試験の問題として、文芸評論の一部を利用したいのですが、権利者の許諾は必要ですか。
文芸評論を模擬試験に複製する行為は、権利者の複製権(著作権法21条)に抵触します。
しかし、公表された著作物は、人の学識技能に関する試験において、その目的上必要と認められる限度において、複製することができます(36条1項)。「学識技能に関する試験」とは、試験の公正な実施のため、複製について予め著作権者の許諾を得ることが困難な性質のものをいいますので(東京高裁平成12年9月11日決定参照)、予備校における模擬試験もこれに該当します。よって、当該試験に利用する目的で複製する場合には、同条の要件を満たし、権利者の許諾なくして、文芸評論を複製することができます。
もっとも、同項を満たす複製であっても、営利を目的として当該複製を行う場合には、複製を行った者は、通常の使用料の額に相当する額の補償金を、権利者に支払う必要があります(36条2項)。本件の予備校は、在学生以外の者から有償の受験料を徴収しています。よって、予備校は、営利を目的として当該複製を行っているといえるので、権利者に対して使用料相当額の補償金を支払う必要があります。なお、在学生に対する無償の試験のみを提供する場合であっても、在籍費用等から実質的に試験の対価を得ている場合には、やはり営利を目的として複製を行っている場合に該当します。

回答者  山本隆司 弁護士 (インフォテック法律事務所)
※回答内容は本ケースにおける一例を掲載しています。
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