JRRCマガジン第93号(SMAPと著作権)

半田正夫

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   JRRCマガジン No.93 

半田正夫の著作権の泉   第45回「SMAPと著作権」

                                2017/3/10配信
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皆様、こんにちは。
JRRCメルマガ担当です。

卒業シーズンとなりました。
読者の皆様の中にも、新たな旅立ちをむかえる方が、いらっしゃるのではないでしょうか。
今回の半田先生のコラムは、昨年末グループを解散したSMAPの著作権にまつわるお話です。
個人的には『ビストロスマップ』で披露される、美味しそうな料理を見るのが楽しみでした。
その後、再出発を果たした各々メンバーは、相変わらずの人気振りでTV等で活躍されています。
前を見て頑張っている姿にエールを送りたいと思います。

それでは、JRRCマガジンNo.93は、
「半田正夫の著作権の泉 第45回~SMAPと著作権~」です。

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      半田正夫の著作権の泉 第45回 「SMAPと著作権」
                       
 中居正広、木村拓哉、稲垣吾郎、草彅剛、香取慎吾といえば、言わずと知れたSMAPのメン
バーである。「夜空ノムコウ」や「世界に一つだけの花」などが爆発的にヒットし、国民的グルー
プとまでいわれるほどの人気を博した。解散するとの報に接したNHKが昨年の紅白のオオトリ
を彼らに努めさせようと会長以下が懸命にアプローチしたようだが、結局それは叶わず、華や
かなこのグループにしてはさびしい解散劇となったことは今も記憶に新しいところである。

 全盛期には彼らの一挙手一投足がそれぞれ大きな話題の種になりマスコミを騒がせたが、
そのなかに著作権にからむ事件があり、彼らが訴訟の原告の立場に立ったことを知る人はあ
まりいないのではなかろうか。ここではこの事件を紹介しよう。
 事案は、SMAPのメンバー6人(当時は上記5名のほかに森且行も加入していた)と彼らのイン
タビュー記事を掲載した雑誌(JUNON、SPA、POTATO、anan)を発行している出版社4社が、
この雑誌記事をもとにして作成された書籍「SMAP大研究」を出版している会社に対して、著作
権および著作者人格権侵害を理由に損害賠償などを請求したというものである。この事件の
争点はいくつかあるが、その一つにインタビュー記事の著作者がSMAPのメンバーであるのか
、インタビュー記事を掲載した雑誌の出版社であるのかという点があった。
 この点について判決は、「インタビュー等の口述を基に作成された雑誌記事の文書について
は、文書作成への関与の態様及び程度により、口述者が、文書の執筆者とともに共同著作者
となる場合、当該文書を二次的著作物とする原著作物の著作者であると解すべき場合、文書
作成のための素材を提供したにすぎず著作者とは言えない場合などが考えられる。すなわち
、口述した言葉を逐語的にそのまま文書化した場合や、口述内容に基づいて作成された原稿
を口述者が閲読し表現を加除訂正して文書を完成させた場合など、文書としての表現の作成
に口述者が創作的に関与したといえる場合には、口述者が単独又は文書執筆者と共同で当
該文書の著作者になるものと解すべきである。」と述べたあと、本件にこの基準を当てはめ、
「原告個人ら(つまりSMAPメンバー)が、発言がそのまま文書化されることを予定してインタビ
ューに応じたり、記事の原稿を閲読してその内容、表現に加除訂正を加えたことをうかがわせ
る証拠はなく、かえって・・・原告記事の作成経過からすれば、原告個人らに対するインタビュー
は、原告出版社(つまり雑誌発行の出版社)らの企画に沿った原告記事を作成するに際して、
素材収集のために行われたにすぎないものと認められる。」と判示し、本件記事の著作者は
SMAPのメンバーではなく、雑誌の出版社である旨を認定している。
この判決は一見誤解を招きやすいが、当該事件の事実関係から、文書表現された記事それ自
体の著作者は執筆した記者(本件では法人著作の要件を充たしているので出版社が著作者と
なる)にあり、著作権もその者に帰属するということを述べているにすぎず、決して口述者であ
るSMAPのメンバーが著作権になんのかかわりをももたないことを述べているのではない点に
留意すべきである。口述者は口述の部分については演述著作物の著作者として保護される可
能性があり、本判決もこれを否定する趣旨と解することはできないからである。
 したがって、本件に即して考えるならば、口述者であるSMAPのメンバーの口述がきわめて
断片的であって著作物性を有しない場合は、その口述は記者が記事を作成する際の資料に
過ぎず、記事自体は原著作物であって、記者(法人著作の場合は出版社)のみが著作者とな
るのに対し、SMAPメンバーの口述が詳細を極めていて著作物性を有している場合は、それを
ベースとする記事は二次的著作物であって、出版社が著作者であることには変わりはないも
のの、SMAPメンバーの口述部分はメンバー自身が著作者ということになろう。もしも本件が後
者に属するのであれば、SMAPのメンバーは、二次的著作物である記事の利用について原著
作者たるわれわれの許諾を得ていないことを理由に著作権侵害を主張しうる余地はあったと
いうべきである。本件においてSMAPメンバーは、雑誌記事の著作権が自分たちにあるとして
著作権侵害を主張したにとどまり、それ以上の主張をしていなかったのであるから、本判決も
その他の点について触れる必要がなかったケースである、と理解するのが正しい見方である
といえるのではなかろうか。

 ところで、最近の歌手活動はSMAPにかぎらず、集団で行うケースがやたらと増えてきたよう
に思われる。昨年の紅白をみても、AKB48 をはじめ、乃木坂46、欅坂46など数人ではなく、二
桁の出演者による歌番組が多く、さながら高校の学芸会になってきた感が否めないようである
。これも時代の流れなのだろうか。歌唱力のある歌手がソロで静かに歌い上げるという番組に
郷愁を感ずるのは、私の老化現象によるものなのだろうか。

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