JRRCマガジン第10号(企業の図書室等の著作権問題、頒布権の消尽)

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 JRRCマガジン
                                    2013/4/19配信 第10号
━━目次◆◇━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━

1.著作権百夜一夜話 第10話――――――企業の図書室・資料室等の著作権問題
2.山本隆司弁護士の著作権談義 第7回――頒布権の消尽
3.読者の声―――――――――――――――読者の声の投稿と掲載
4.プロムナード―――――――――――――海外出張エピソード
5.インフォメーション――――――――――ご意見・ご要望、各種手続き
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いい季節になりましたね~ ヽ(^。^)ノ 
皆様、こんにちは。日本複製権センター メールマガジン編集者です。
今回はこの場をお借りして、JRRCの無料サービス開始についてご案内いたします。

JRRCは4月より、ご契約者様、ご契約をお考え中のお客様を対象に
  
    ◆無料講習会講師派遣サービス

を開始いたしました。簡単に申し上げますと、
  貴社(法人、学校、公的機関等)にて、社員・職員を対象に
  著作権に関する社内研修を企画される場合、
  お申込み頂ければ、JRRCから無料にて講師(資料も)を派遣する
サービスです。

お客様の社員・職員の皆様への著作権啓発活動のお役に立てればとの想いで
開始致しました。国内であれば、場所は問いません。

詳しくは、こちらをご覧ください。

    ▼JRRCホームページ「お知らせ」   
     http://www.jrrc.or.jp/notices/20130401-koushuukai.pdf

ある程度お客様のご希望に合わせた講習会も可能でございますので、
まずは電話かメールで内容についてお問い合せください。

では第10号をお届け致します。

▼今後取り上げるテーマについてリクエストがございましたら、
   ご意見・ご要望など ⇒ https://fofa.jp/jrrc/a.p/112/
 にて、ご投稿をお願いいたします。

▼ご了解ください
 このメルマガは等倍フォントで作成していますので、MSPゴシックのよう
 なプロポーショナルフォントで表示すると改行の位置が不揃いになります。

▼メルマガ配信ご不要の方
  今後メルマガを受け取りたくない方は、お手数ですが
  5.インフォメーションで、「配信停止」のURLをクリックして
  配信停止の手続きをお願い申し上げます。

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 著作権百夜一夜話 第10話  
         企業の図書室、資料室等の著作権問題
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◆はじめに
前回は、図書館の資料の複製について採り上げましたが、今回は、企業に設置
されている図書室や資料室等における著作物の複製について採り上げます。

◆事象
多くの企業において、その設立目的に沿った事業を遂行するために、専門的な
或いは特殊な分野の資料を収集して、社員や従業員(以下、社員等)の日常的
な業務に資するといった施設が設置されています。

その名称は「図書室」、「図書館」、「資料室」等さまざまだと思われますが、
そのような施設が所蔵する資料を複製することについて、著作権法第31条が
適用されるかどうか「よく判らない」、「図書館と同じような機能だから、適
用範囲だろう」等、模糊たる解釈の下に運用されているケースがあるのではな
いかと思われます。

しかし、これらの施設は、著作権法第31条第1項における複製が認められる
施設には該当しないため、当該施設が所蔵する資料を複製する場合は、著作権
法の原則に従い、権利者の許諾が必要になります。

    ▼著作権法 下記URLから第31条が確認できます
     http://www.houko.com/00/01/S45/048.HTM

◆解説
著作権法第31条によって複製が認められる施設は、「記録その他の資料を
『公衆』の利用に供することを目的とする図書館その他の施設のうち、『政令
で定めるもの』」(同条第1項の条文より。『』は筆者加入)であることが要
件となります。
    ▼「政令」=「著作権法施行令」

政令第1条の3「図書館資料の複製が認められる図書館等」の規定を見ると、
その第1項に著作権法第31条が適用される図書館等の施設が列挙されていま
すが、第二号及び第三号の教育機関に設置される施設を除き、第一号と第四号
から第六号は、「一般公衆の利用に供する施設」である旨を規定しています。

    ▼著作権法施行令 下記URLから「第一条の三」が確認できます
     http://law.e-gov.go.jp/htmldata/S45/S45SE335.html

つまり、著作物の一部分の複製が認められる図書館等の施設について、第31
条では単に「公衆」としか規定していませんが、政令や図書館法では、教育機
関の施設を除き、一般公衆を対象とした「公共性の高いサービス」を提供する
ものであることが求められています。

従って、企業に設置された資料収集施設は、営利性があること、「公衆」であ
っても社員等「特定多数」の人たちを対象としていることにより、権利者の許
諾を得ない限り、当該複製は認めらないということになります。

◆権利者の許諾を得る方法
著作物の利用許諾を得るためには、原則、個々の権利者に申請をする必要があ
りますが、著作権については「著作権の集中管理機構」への申請によって、比
較的容易に許諾を得られる方途があります。

新聞、論文、専門書等のほかに音楽、文芸作品、写真、美術作品等についても
集中管理システムが採用されている分野があり、各分野の一覧が文化庁のホー
ムページで確認することができます。
これらの機構は、「著作権等管理事業法」という法律に基づいて設立され、文
化庁長官の登録を受けたことにより、この一覧に掲載されています。

    ▼著作権等管理事業者登録状況一覧(平成25年3月1日現在)
     http://www.bunka.go.jp/chosakuken/kanrijigyouhou/touroku_jyokyo/

    ▼著作権等管理事業者
     著作権等管理事業法に基づき、文化庁に登録し、著作権又は著作隣
     接権の集中管理事業を行っている事業者のことをさします。
     それぞれの著作権等管理事業者が管理している著作物等は、その著
     作権等管理事業者が窓口となって、利用の許諾を行います。
  

◆参考
民間の組織でも、一般社団法人や一般財団法人(以下、一般社団法人等)が設
置する図書館類似の施設でも著作権法第31条の複製が認められるものがあり
ますが、
(1)公共性が高いこと、
(2)図書館司書相当の職員が置かれているもの
である必要があります。

その他、法令の規定によって公共機関や一般社団法人等が設置する一般公衆の
利用に供する施設で、文化庁長官の指定を受けたものも当該複製が認められて
います。
現在、文化庁長官の指定を受けているのは29施設あります。

    ▼著作権法第31条関係の文化庁告示(CRICのホームページ)
     http://www.cric.or.jp/db/domestic/bu_index.html#h1715

■前月号(第31条 図書館等における複製等)の補足
CRIC(著作権情報センター)のホームページに「図書館と著作権」に関す
るQ&Aが掲載されていますのでご参考まで

     http://www.cric.or.jp/qa/cs03/index.html

◆2◆━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
 山本隆司弁護士の著作権談義 第7回
               頒布権の消尽
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◆はじめに
山本隆司先生の著作権談義の7回目です。
今回は、ある裁判における「頒布権の消尽」の見解に対する疑問と問題点につ
いて深掘りしています。

    ▼山本弁護士の経歴、著作物等
     ⇒ http://www.itlaw.jp/yamamoto.html

◆頒布権の消尽
判例時報に紹介された裁判例(東京地判H24.7.11判時2175-98)に違和感を
持ったものがありました。どこからも疑問の声が上がっていないようなので、
ここで問題の所在をご紹介したいと思います。

この判決の事案では、
映像著作物の著作権者XがMに独占的頒布を許諾する契約を締結し、
そのDVDをMに販売しました。
MはYに当該DVDを譲渡しましたが、
その後、Mの債務不履行を理由に、XがMとの契約を解除しました。

東京地裁は、
「当該著作物の頒布権は,いったん適法に譲渡(以下「第一譲渡」という。)
されるとその目的を達成したものとして消尽し,その後の再譲渡にはもはや
著作権の効力は及ばない」が、「本件販売契約が債務不履行により有効に解
除されたこと…から,適法な第一譲渡があったとはいえず,本件において消
尽を論ずる余地はない。」と判示しました。
そして、Yに当該複製物に対する所有権を認めたものの、なおもXの頒布権
がYに及ぶと認定しました。

中古ゲームソフト事件の最高裁判決(H14.4.25)は、
著作物の複製物を譲渡すれば、その後の譲渡に対しては頒布権が及ばなくな
ること(頒布権の「消尽」)を、認めました。

前記東京地裁判決は、
頒布権の消尽において重要なポイントは複製物の「譲渡」にあるのか、それ
とも譲渡による複製物に対する「所有権の移転」にあるのか、という問題を
提起しました(たとえば、解除や取消によって「譲渡」行為が無効になった
場合でも、転得者に「所有権」が移転することがあります)。
この判決は、複製物の譲渡によりそれに対する「所有権」が移転していても、
「譲渡」が有効でなければ、頒布権の「消尽」はないと判示しました。

この東京地裁判決によれば、Yが所有する当該DVDを公衆に販売することは著
作権(頒布権)侵害になります。
しかし、複製物の円滑な流通を保護するという頒布権の消尽を認める根拠(
前掲中古ソフト判例)からは、解除後の取得者とともに、本件のような解除前
の取得者を保護する必要性はさらに高いはずです(著作権法113条の2参照)。

    ▼著作権法第113条の2(善意者に係る譲渡権の特例)
     http://www.houko.com/00/01/S45/048.HTM#s7

複製物の円滑な流通を保護するには、「譲渡」を介して所有権が移転すれば、
頒布権の消尽を認めるべきでしょう。この東京地裁判決は、第一譲渡が必要だ
ということから、それが法的に有効であることが必要だという形式論理に走っ
てしまって、本来の目的を見失っているように思います。

さらに、私は、頒布権消尽のポイントは、適法に複製された複製物の「第一譲
渡」の法的有効性にあるのではなく、「適法に複製された複製物」の第一譲渡
にあるのではないかと考えています。

頒布権の消尽を「適法に複製された複製物」について考える理由は、複製権の
ほかに頒布権を認める目的にあります。著作権者に、複製権のほかに頒布権
(貸与権に相当する権利を除く)が認められるのは、無断複製物が堂々と流通
過程におかれていても、複製権ではもはやこれを規制することができないから
です(適法複製物については、対価回収手段としては複製権があれば十分で頒
布権を認める必要はありません)。

したがって、頒布権の消尽を考える場合には、「適法複製物」の譲渡であるこ
とが重要であって、その譲渡が法的形式において「有効性」であることが重要
な訳ではないと思います。(さらに、有効でない「譲渡」さえ必要ないかもし
れませんが、その議論は割愛します。)

なお、この東京地裁判決は、「第一譲渡」という言葉を使っていますが、米国
著作権法(109条(a))上の「ファースト・セール・ドクトリン(first sale
doctrine)」を意識しているようです。
ところが、109条(a)は、「本編【著作権法】に基づき適法に作成された特定の
コピーもしくはレコードの所有者またはかかる所有者の許諾を得た者は、著作
権者の許諾なく、当該コピーまたはレコードを売却しその他占有を処分するこ
とができる。」と規定しています。

このように、「ファースト・セール・ドクトリン」は、「適法複製物」であれ
ば、その所有権が移転した場合には、第一譲渡の「適法性」に関係なく、もは
や頒布権が及ばないとしています。

◆3◆━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
 読者の声
          『読者の声』の投稿と紹介
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このコーナーは、身近な話題について、読者の方に投稿していただき、その中
から選出して『読者の声』としてご紹介するコーナーです。

◆読者の声
 今回は該当がございませんでした。

 テーマは設定いたしません。著作権に関わることでも、最近気になること
 でも、プロムナードの感想でも結構です。自由にご投稿いただければ幸い
 です。お待ちしております!
   
     
◆投稿先はこちら
  ⇒ https://fofa.jp/jrrc/a.p/111/

掲載された方には粗品を進呈いたします。
なお記事として掲載する場合は、事前にご連絡しご了解を頂くように致します。

◆4◆━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
 プロムナード
       ♪ ♪    さ か さ ま    ∞ ∞
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ローマ~エルコラーノ(ヴェスヴィオ火山で埋まった町)~ナポリ(イタリア)

           絶景、絶品、絶句の旅

1997年4月、ローマで開催された国際会議に団体役員のお供として参加し
ましたが、その方は大変旅好きの人でした。
同氏は、若干ハードスケジュールと思われる「ローマ~エルコラーノ~ナポリ
~ローマ」という日帰り旅行を、ディナーが予定されている日に強行する計画
を予め立てており、朝早目にホテルを出発しました。

ローマ駅から列車を乗り継いで2時間半ぐらいで目的のエルコラーノ駅に着き、
そこから歩いてエルコラーノ遺跡に到着。
エルコラーノ遺跡は、ポンペイ同様、西暦79年のヴェスヴィオ火山の噴火に
よって消滅し、1700年代半ばに発掘が始まったとのこと。こぢんまりとし
た遺跡ではあるものの、発掘された街並みや建物、壁面に施された壁画やモザ
イク等に加え、石畳の街路に刻まれた轍の跡は、当時の生活を偲ばせる素晴ら
しいものでした。

   ▼エルコラーノ遺跡
    検索サイトで「世界遺産 エルコラーノ」検索→「エルコラーノ遺跡」

少し遅めの昼食をとるためにエルコラーノからナポリに列車で移動。
狭いところに駐車するため、バンパーや車体の下の方が傷だらけのボコボコ車が
行き交う街をタクシーで走り抜けてサンタルチアのヨットハーバーまで行き、シ
ーズンオフでも営業をしていた一軒のレストハウスに到着。

「本場のスパゲティ・ボンゴレを港町で食べるのが夢だった」役員は、早速オー
ダーをしようとしてメニューを見たものの見当たらず。そこで、同氏がマスター
を呼んで聞いたところ「当店のメニューにスパゲティ・ボンゴレはないが、ご要
望であれば特別に作りましょう」との弁。加えて、それに合う白ワインのオーダ
ーに対しては自家製の白ワインがあるゾとの回答。

ひと気のない港を見ながら待っていると、所謂、ボンゴレ・ビアンコとヴィーノ
・ビアンコ(白ワイン)がテーブルに置かれ、早速日本流の「乾杯」で昼食を開
始。そのスパゲティと自家製ワインは「絶品」で、至上の幸福感を味わうことが
できました。

  ~メニューにないものが出てきてさぞや美味しかったことでしょう (ー_ー#)

会議参加者によるディナーに間に合うようローマに帰るために、予定の列車に乗ろ
うとナポリ駅まで行くと、その列車の運行が取り止めになったことが判明。
途方に暮れながらも何とか探し出した列車でローマ駅に到着したものの、ホテルで
のディナーにはかなり遅れて参加する破目に。
噂には聞いていたものの、イタリアの鉄道のおおらかさには閉口しました。

  ~あるべき列車の運行がなくて遅れるとはさぞや悔しかったことでしょう(^○^)

≪教訓≫
  日本(とスイス)以外の国での時刻表に依る鉄道旅行は、くれぐれも慎重に!

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 インフォメーション
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とりあげたいテーマ等、皆様からのご意見、ご感想、ご希望などお聞かせ頂け
れば幸いです。次号もよろしくお願いいたします。

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■編集責任者
   JRRC副理事長 瀬尾 太一   

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