JRRCマガジン第133号(エンベッドと展示権)

山本隆司

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JRRCマガジン No.133  2018/5/9
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GWも終わり、忙しい日常が戻って参りました。
皆さまいかがお過ごしでしょうか?

今回の山本隆司弁護士のコラムは「エンベッドと展示権」です。
主に、ユーザーがページ移動を経ることなく
動画等を見ることができる技術「エンベッド」。
著作権法での取り扱いについて、
山本先生のお考えをお話しくださいました。

◆◇◆山本隆司弁護士の著作権談義━━━━━━━━

第64回 「エンベッドと展示権」

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リンクに似た技術でエンベッドという技術があります。
2018年2月15日、ニューヨーク南部地区連邦地方裁判所は、
自己のウェブページに他人の写真のリンク先を埋め込み、
その写真を公衆に見せた行為が、展示権の侵害に該当する
との判決を初めて下しました
(Goldman v. Breitbart News Network, LLC, (SDNY 2018))。

まず、リンクでは、ウェブページAにリンク先のURLを表示し、
ユーザーが当該リンク先をクリックすると、
リンク先のウェブページBに飛ぶことができるというものです。
リンクの場合には、表示されるウェブページがAからBにかわるので、
ユーザーはウェブページの移動に気がつきます。

しかし、エンベッドでは、ウェブページAの一角に、
別のウェブページB上のコンテンツXへのリンク先を埋め込みます。
ユーザーはウェブページA上にコンテンツXが表示されているように
見えます。
しかし、コンテンツXの信号は、ウェブページAのあるウェブサイトに
あるわけではありません。
コンテンツXの信号は、ウェブページAのコード信号(プログラム信号)に従って、
ウェブページBから直接ユーザーのPCに送られ、
そのモニターに表示されます。
この点で、エンベッドはリンクと同じ仕組みです。

つぎに、展示権は、日本では、
美術著作物および未発行の写真著作物の原作品の展示にのみ及びます。
他方、米国では、展示権は、
録音物および建築著作物以外のすべての著作物を
原作品または複製物によって展示することに及びます。
ただし、ファースト・セール・ドクトリンの適用があり、
適法に取得した原作品または複製物によって展示することには
展示権に対する権利制限があります。
したがって、
たとえば、他人の写真を無断で自分のウェブページに掲載すれば、
米国では、複製権、頒布権(日本の公衆送信権に相当)の侵害のほか、
展示権の侵害も成立することになります。

他方、違法に写真を掲載するウェブページへのリンクを張ることは、
頒布権の間接侵害を生ずる可能性がありますが、
適法に写真を掲載するウェブページへのリンクを張ることには、
頒布権の間接侵害を生ずる可能性はありません。
問題は展示権の侵害を生ずるかです。

その先例として、パーフェクト10事件
(Perfect 10, Inc. v. Amazon.com, Inc., 508 F3d 1146 (9th Cir. 2007))があります。
第9巡回区連邦控訴裁判所は、行為者のサーバーに、
展示されるコンテンツが蓄積されるのでなければ展示権の侵害は成立しない
(「サーバー・テスト」)として、リンクによる展示権の侵害を否定しました。
その後、サーバー・テストを踏襲する裁判例が続いていました。
ところが、本件判決は、条文の解釈としてサーバー・テストは誤っているとして、
サーバー・テストの適用を排除し、
ユーザーのモニターにコンテンツが表示されれば展示権の侵害に当たる
と判断しました。

これまでも、エンベッドの場合には、
ユーザーにはウェブページA上にコンテンツXが表示されているように見えますので、
エンベッドには展示権の侵害を認める意見もありました。
しかし、この判決の論旨に従えば、エンベッド技術のみならず、
通常のリンクにも展示権の侵害が生ずると思われるので、
この判決は、大きな論争を引き起こしそうです。

私が見るところ、
この判決がサーバー・テストの限界を指摘したのは正しいのですが、
リンクやエンベッドによる展示権の侵害を認めるのは誤りだと思います。
条文を見ると、
展示権は、「著作権のある著作物を公に展示すること」(106条5号)に及びます。
「公」の展示は、
「(1)公衆に開かれた場所または家族および知人の通常の集まりの範囲を超えた
相当多数の者が集まる場所において、著作物を…展示すること。
(2)著作物の…展示を、何らかの装置またはプロセスを用いて、
第(1)節に定める場所または公衆に送信しまたは伝達すること(…)。」
と定義されています。

この判決は、上記の(1)ではコンテンツが送信者のサーバーに
蓄積されていることは必ずしも必要ない
(たとえばブラウン管での展示ではサーバーへの蓄積は存在しない)ので、
上記の(2)でもコンテンツが送信者のサーバーに蓄積されていることは
要件とはならないところ、エンベッドによる展示は(2)に該当すると解釈しています。
この解釈の前半は正しいと思います。
しかし、(2)の文言上は、「展示」を送信者が受信者に送信することが必要です。
「展示」の送信は、展示データの送信が必要であって、
その所在情報の送信で足りるとは、条文上読めません。
したがって、私は、上記の(2)の適用においては、
送信者のサーバーにコンテンツが蓄積されていることが必要だというサーバー・テストは
正しいと思います。

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