JRRCマガジン第121号(作品の公募と著作権)

半田正夫

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JRRCマガジン No.121   2017/11/24
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雪便りが届くようになり、冬も間近と感じる時季となりました。
皆さまいかがお過ごしでしょうか?

今回の半田先生のコラムは、「作品の公募と著作権」です。
近年 地方自治体の一般公募等による「ゆるキャラ」が
日本各地で生まれ、「ゆるキャラグランプリ」なるものも
毎年のように行われているようです。
「ゆるキャラ」など主に公募された作品について、
著作権法上の観点からお話しくださいました。

◆◇◆半田正夫の著作権の泉━━━

第53回「作品の公募と著作権」

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 東京2020五輪大会マスコットデザインの募集が締め切られ、
応募総数は2,042件(個人1,774件、グループ268件)があった
とのことである。この中から最終候補3~4案に絞られ、小学校
のクラス単位での投票などを経て、最終決定が行われるとの
ことである。大会エンブレムの公募のときは14,599件の応募が
あったということであるから、大幅な減少であるが、マスコッ
トデザインのほうは6図面の提出が義務づけられるなど難度が
高いのでやむを得ないというべきであろうか。いずれにしても
多数の応募が行われるものだということを知って驚いている
しだいである。また、上野動物園の赤ちゃんパンダの名前を
公募したところ、32万2,581件の応募があったと報告されている。
世はまさに公募ブームの時代に入ったと言ってもよいようである。
 
 公募で思い出すのは、昭和39(1964)年の朝日新聞社による
1,000万円懸賞小説の当選発表である。プロ、アマを問わず応募
可能ということで、多くの作品が集まり、中にはかなり名の
通った作家の応募もあったという話であるが、当選したのは
大方の予想を裏切って北海道旭川市に住む無名の主婦、三浦
綾子の作になる「氷点」であった。一介の無名の主婦が当選
したということ、それに賞金が破格の1,000万円であったという
ことで、当時大きな評判を呼んだものである。当時の1,000万円
は現在の価額に直すと6,000~7,000万円ほどに達すると思われ
る高額であり、そのころ私は、いかに新聞の宣伝のためとはいえ、
これで採算が取れるのかと訝ったものである。ところがこれは
杞憂であった。確かなことは朝日新聞社に聞いてみないとわから
ないが、おそらく応募要項に当選作の著作権は新聞社に帰属する
と書かれていたのではないかと思われる。当選者が発表になると
その意外性と当選金額が高額であることなどから反響が大きく、
いわゆる「氷点」ブームが沸き起こり、新聞に連載されるや
新聞の購読者が激増し、連載終了後にこれが単行本として出版
されると、大ベストセラーとなった。反響はそれだけに留まらない。
その後、内藤洋子主演で映画化され、さらにはテレビドラマ化
されて42パーセントの視聴率を稼いだ。映画はビデオ化されて
市販され、単行本は文庫本化されている。このような現象からして、
朝日新聞社はおそらく賞金をはるかに上回る収益を得たのでは
ないかと推測される。

 作品を創作すると、完成と同時にその作品の著作権は創作した
著作者に帰属する。これは公募の場合といえども異なるところは
ない。ただこれでは公募主催者としては意味がないので、必ず
入選作の作品については「著作権は主催者に帰属する」旨の1項目
が記載されており、主催者はその作品の複製権、公衆送信権、
演奏権、上演権などの諸権利を独り占めできるようになっている。
独り占めできるといってもその例外があり、著作権法27条に規定
する翻訳権、編曲権、映画化権、翻案権などのいわゆる原作に
手を加えて別の形で利用する権利(改作利用権)と28条に規定する
二次的著作物の利用に関する原著作者の権利は、譲渡の際に特別の
取り決めが無い限り、著作者に留保されたものとして扱われること
になっている(著作権法61条2項)。また著作者人格権は一身専属的
な権利だから、これまた著作者に留まっているのは当然である。
冒頭に掲げた東京五輪のマスコットデザインの応募要項を見ると、
「応募者は、その応募作品が最終審査候補作品に決定した場合、
当該作品に関する著作権(著作権法第27条および第28条に規定する
権利を含みます。)、商標権、意匠権その他の財産権・・(中略)
・・所有権等一切の全世界における権利を組織委員会に無償で譲渡
していただきます。また、当該作品に関する著作者人格権その他
一切の人格権を組織委員会およびその指定する者に対して行使しない
旨をご了解いただきます。」との記述がみられる。主催者である
東京オリンピック組織委員会が作者の側からクレームがつけられ
ないよう万全の手を打っていることがこれで明らかとなろう。
さすが組織委員会、用意周到である。

 ところで、公募に応じることを趣味や仕事としている人も多い
とみえ、これら愛好者を対象とした雑誌まで市販されているのが
現状である。それらをみると、公募の対象となる作品は小説や論文、
マスコットデザインだけに留まらず、ポスター、標語、マンガ、
短歌、俳句、川柳、写真、絵画、果ては子供の綴り方まで多種多様
である。それに伴って、応募要項も千差万別である。これらを
見ていて、専門家として気づくのは、「入選者の著作権と所有権は
主催者に帰属します」という表現ではなく、「応募者の著作権と
所有権は主催者に帰属します」という表現になっているものも
あるという事実である。これは応募者全員の著作権と所有権が
主催者に帰属してしまうので、いったん応募した以上は、落選
しても作品を返却してもらえないばかりか、この作品を別の公募に
再度使ったり、自ら使ったりすることも、一切出来なくなること
を意味している。仄聞するところによると、悪質な業者の中には、
あえてこのような表現の公募をしたうえ、応募者全員の作品を
無償で独り占めし、商売のタネに使っている場合もあるとのこと
なので注意が肝要である。

 応募要項の中には、「当選者の発表は賞品の発送をもって代え
させていただきます。」との表記のものが時折見かけるが、
ほんとに賞品を発送しているのか、そもそも当選者がいるのか、
疑わしいように思えるが、いかがなものであろうか。下衆の勘繰り
にすぎなければよいがと思う昨今である。

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