JRRCマガジン第117号(小川寛興の楽曲)

半田正夫

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JRRCマガジン No.117 2017/10/6
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雲間より顔を覗かせた中秋の名月。
月を愛でる風習は縄文時代からとも。
いにしへより美しく輝く姿にうっとりしたひととき。
皆さまはいかが過ごされましたでしょうか?

さて、
今回の半田先生のコラムは、「小川寛興の楽曲」です。
音楽の著作物に関して、
半田先生の貴重なエピソードを交えてお話しくださいました。

◆◇◆半田正夫の著作権の泉━━━

第52回「小川寛興の楽曲」

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 作曲家の小川寛興氏は本年7月19日に92歳で逝去した。
彼の作曲した楽曲は膨大な数に上るが、なかでも、NHK朝の
連続テレビ小説「おはなはん」のテーマミュージックを作曲し
たのをはじめ、「月光仮面」、「快傑ハリマオ」、さらには
倍賞千恵子の歌う「さよならはダンスの後に」や中村晃子の
歌う「虹色の湖」などの作曲で世に知られている。
 今から20年ほど前、私はひょんなことから彼と知り合うこと
となった。当時、吉田正、石本美由紀、星野哲郎、三木たかし
など作詞・作曲家と著作権関係者とが、バーを借り切ってカラオケ
を楽しむという会が年に数回不定期に開催されており、歌好きな
私が誘われて参加したのがきっかけである。温和な彼は自発的
に歌うということは無かったが、指名されると、決まって
「さよならはダンスの後に」を歌うのを恒例としていた。私が
初めてこの会合に参加したとき、彼は歌い出したものの、途中
で歌詞を忘れて立ち往生していたので、彼がこの曲の作曲者で
あることを知らずに、見かねた私がマイクを取って彼と合唱し
たのである。それ以来、彼は私をカラオケの先生と呼ぶように
なり、懇意にお付き合いさせていただいたという経緯がある。
 この彼が、ある日突然、大学の私の研究室に訪ねてきた。
「さよならはダンスの後に」の曲に酷似した楽曲が今流行して
いるということを知人から教えられたので早速聴いてみたところ、
ほとんど同じで盗作と思われるので、どうしたらいいだろうか
というのが彼の来訪の理由であった。盗作ではないかと彼が
持ってきたテープは、テレビアニメ「美少女戦士セーラームーン」
シリーズのオープニング主題歌「ムーンライト伝説」であった。
両者を聴き比べてみると、確かに非常によく似ている。特に
「さよならはダンスの後に」の曲のもっとも特徴的な部分が
そっくりで、素人でもそれが分かるというほど似通っていた。
「ムーンライト伝説」のCDが爆発的に売れているというので、
私は彼に著作権侵害を理由に訴えたらと勧めたのである。
温和な彼は訴訟提起という方法には進みたくなかったようだが、
やはり納得しかねるようで、JASRACを間に立てて相手方と
交渉し、結局、一定の金額の支払を受けるということで和解が
成立したとの連絡を後日受けたのである。
 音楽の場合には表現が似てしまうということはよくあること
である。ドラスティックな言い方をすると、音楽はドレミファ
ソラシドという僅かな音階の順列と組み合わせによってできる
ものであり、その組み合わせの中においても人間の感性に触れる
聞き心地の良いものは限られてくるのであるから、文学など他の
ジャンルの著作物以上に類似のものが出てくる可能性は高いと
いえるようである。そしてさらに厄介なのは、著作権の成立に
無方式主義が取られているところから、相互にまったく無関係に
作られたものが、仮にまったく同一であったとしても、双方共に
著作権が成立してしまうということにある。したがって、著作権
侵害が成立するためには、①盗作したとされる者が元の楽曲を
知っていたという証明(接触機会の証明)、②盗作した者が、
元の楽曲に頼って作ったという証明(依拠性の証明)、
③2つの曲が似ていることの証明(同一性の証明)、の3点の
立証が不可欠ということになる。しかし、これらの立証はなか
なかに難しいところであり、実際に裁判にかけてみたところで、
勝つという保証はとりにくいといえよう。

 話は変わるが、1992年に私は日本レコード協会から寄付講座
を受けて青山学院大学で「レコードと法」と題する通年講義を
計画したことがある。当時はまだ企業などからの寄付講座が
ほとんどない時期であり、著作権関係では皆無であった。私は
この機会に外部から一流の専門家を招いて毎回読み切りの形で
講義してもらい、象牙の塔としての閉鎖的な大学の壁をぶち破って
新鮮な外部の風を入れ、これによって講義の活性化と受講生の
興味と関心を引き起こそうと考えた。毎週現れた講師の先生方は
予想に違わず熱心に講義をしていただき、予想以上の効果を
もたらしたのである。大方の好評を得たことで、この寄付講座
はテーマを変えながら5年間継続したのである。このシリーズの
初年度に、私は彼を講師に招き、作曲家としての創作の苦しみ
について話しをしてもらったのである。律儀な彼は詳細なレジュメ
を用意し、さらに音楽テープを間に挟みながら諄々と説くその
話し方に受講生は大いなる感銘を受けたのである。

 彼との接点はこれだけに止まらない。
 青山学院大学における私のゼミは結束力の固さで知られており、
私の青山学院大学在職20年記念パーティやホテルで開かれた還暦
祝賀パーティなどに来賓として前述の吉田正、石本美由紀、星野
哲郎、三木たかしらと共に彼をもお招きしたのであるが、その際に、
ゼミOB会の団結力と洗練された組織力を評価した同人のひとり
である夏目裕(当時、日本文芸家著作権保護同盟事務局長)の
発案で半田ゼミの歌を作ろうということになり、星野哲郎の作詞、
小川寛興の作曲でアレヨアレヨという間に出来上がったのである。
全国の大学数は779(平成28年現在)、教員数はおよそ167,000人
であるとのことなので、ゼミの数も10万以上はあるものと思われ
るが、ゼミの歌をもつゼミ、しかもそれが超一流の作詞家・
作曲家の手になるものは、おそらく我がゼミ以外には無いのでは
ないかと、密かに自讃しているところである。
 ゼミ歌が出来上がり、彼が歌唱指導に訪れたとき、学生が
すでに歌を覚えていたことに彼は驚き、歌う学生の姿を嬉しそうな
顔をして眺めていたことを、私は今でも忘れることができない
でいる。

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