JRRCマガジン第112号(物権と債権の区別)

山本隆司

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JRRCマガジン No.112  2017/9/1
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八百屋の店先で栗や柿などを見掛ける時季となりました。
皆さまいかがお過ごしですか?

さて、今回の山本隆司弁護士のコラムは、「物権と債権の区別」です。
知的財産権である著作権とそのライセンス契約の性質等について、
アメリカにおける取扱いと比較してお話しくださいました。

◆◇◆山本隆司弁護士の著作権談義━━━━━━━━

第58回「物権と債権の区別」

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 日本法では、物権と債権とが整然と二分され、著作権と著作権契約の解釈もこ
の原理に従っています。しかし、物権と債権の区別がどこの国でも通用するわけ
ではありません。たとえば、アメリカ法では、物権と債権とが整然と区別されるわ
けではありません。その違いが著作権取引の局面でもいろいろな形で表れます。
 物権と債権の区別は、物権は全ての人に対して効力を持つので、法律の定め
がないと創設できないこととし(物権法定主義:民法175条)、また物権には取引
の安全のために登記という公示制度を完備することとされています。日本では、
古代の律令以来、政府が国民を規律する法令を定める伝統があります。また、
日本では、全ての土地が昔から利用されており、全ての土地について登記制度
を執ることが容易です。
しかし、アメリカでは、民法の規定事項を判例法が規律しており、物権法定主義
をとってはいません。また、アメリカでは、西部開拓時代を念頭に置けばたやす
く想像できるように、新たに手に入れた土地には道路もなければ地番もありませ
んので、登記制度を完備することなど不可能です。このように、アメリカ法には、
物権と債権の区別をとる前提条件を欠いています。
 その結果、たとえば栗の木を栽培するために土地を借りた場合、日本法では
物権と債権の区別により地上権と賃貸借契約に区別され、効果が異なります。
他方、アメリカ法では、その区別はなく、賃貸借契約としての効力を持ちます。し
かし、そもそも、物権と債権の区別がないので、物権が債権に優先する(「売買
は賃貸借を破る」)という原則もありません。
 では、アメリカ法では、売買と賃貸借が相反する場合どのように処理されるの
でしょうか。土地所有者AがBに土地を譲渡した後に、AがさらにCに譲渡した場
合、アメリカ法では、Bに譲渡した時点でAは無権利者なので、Cへの譲渡は無
効です。同様に、土地所有者AがBに土地を賃貸した後に、Aがその土地をCに
譲渡した場合、アメリカ法では、「売買は賃貸借を破る」という原則がないので、
Bに賃貸した時点でAは賃貸借契約付の土地所有権しか持っておらず、Cへ譲
渡できる権利は、賃貸借契約付の土地所有権にとどまります。
 著作権取引もこれと同じです。著作権者AがBにライセンスを与えた後に、Cに
著作権を譲渡した場合、アメリカ法では、Bにライセンスした時点でAはライセン
ス済みの著作権しか持っていないので、Cへ譲渡できる権利は、ライセンス済み
の著作権にとどまります。
 以上がアメリカ法における取引関係の原則です。しかし、その原則どおりでは、
後の譲受人(上記のC)が有償・善意無過失であっても保護されません。そこで、
取引の安全を図るために、一般に「Recording Act」と呼ばれる立法措置がとられ、
登録制度が設けられています。登録といっても、日本法のように物権法定主義を
とっていませんから、登記のように記載事項が法定事項に限られているわけで
はなく、契約書そのものが公示されます。
 アメリカでは、著作権の取引のためにも登録制度(Recordation of Transfer Documents)
が設けられ、著作権局に著作権の譲渡契約書やライセンス契約書を登録できる
こととされています。著作権者AがBに独占的ライセンスを与えた後に、Cに著作
権を譲渡した場合、Cが有償・善意無過失で自らの契約書を登録すればBに優先
して保護され、Bに対するライセンスのない著作権を取得できることとしています。
著作権局への譲渡契約書等の登録に、登録された契約の存在について第三者
に対する擬制告知の効果を与えていますので、Bが先に登録している限り、Cが
保護の要件である善意無過失を備えることはないのです。

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