JRRCマガジン第110号(式辞と歌詞の挿入)

半田正夫

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JRRCマガジン No.110 2017/8/18
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雨雲の絶え間に鳴り響く蝉時雨、
気持ちが和む今日この頃ですが、
皆さまいかがお過ごしでしょうか。

さて、
今回の半田先生のコラムは、「式辞と歌詞の挿入」です。
著作物利用時における注意点を、
先日話題となった「京都大学入学式の式辞」と
それにまつわる半田先生のエピソードを交えてお話しくださいました。

◆◇◆半田正夫の著作権の泉━━━

第50回「」

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 今年度の京都大学入学式にあたり、山極総長はその式辞の中にノーベル文学賞を受
賞して話題となったボブディランの「風に吹かれて」の歌詞を長々と引用し、これが同大
学のホームページに掲載されたことから、音楽著作権を管理するJASRACから使用料の
請求が行われたということが最近話題となった。
 これと似た話が実は私にもある。いまから15年前になるが、私が青山学院大学の大学
長であったころ、入学式において1万名にも及ぶ新入生とその父母を前に学長式辞とし
て私は次のような出だしで話を始めた。

 「皆さん、青山学院大学へのご入学おめでとうございます。私たちは皆さんの本学への
ご入学を心から歓迎いたします。
         (中略)      
 ところで皆さんは、ペギー葉山という歌手が歌う『学生時代』という歌をご存知でしょうか。
「蔦のからまるチャペルで祈りを捧げた日」というフレーズで始まる歌です。昭和39年に
作られ40年代に大ヒットして当時の若者に広く歌われた歌です。いまでも青春歌謡ベスト
100を選ぶとすれば必ず入っているという歌で、皆さんが知らなくても、皆さんのご両親あ
るいは祖父母の方々でこの歌を知らない人はまずいないものと思われます。この歌は本
学出身の平岡精二が作詞・作曲し、これもやはり本学出身のペギー葉山が歌ったという
ことでお分かりのように、本学をイメージして作られたもので、当時この歌は青山学院
大学の第二校歌とまで言われたものです。その頃、この青山キャンパスの校舎は蔦で
覆われていてまさにこの歌の通りであったのです。最近この歌は、やはり本学出身のサ
ザン・オールスターズの原由子さんが「東京タムレ」と題するCDの中で歌っています。
 この歌を私がはじめて聞いたのは、私がまだ北海道にいた頃でした。この歌の持つ都
会的なセンスと若者らしい情感に惹かれ、まだ見ぬ青山学院大学に憧れの気持ちを抱
いたものです。私が本学を訪れたのは本学で学会が行われたときのことです。ちょうどそ
の頃、東京オリンピックが開かれる直前で東京はいたるところで建設工事が進められて
おり、本学の前の青山通りを走っていた都電が撤去されているところだったと記憶してお
ります。騒がしい青山通りから離れて一歩本学のキャンパスに入ると、おもての喧噪はど
こへやら、静寂に包まれた校舎が蔦の葉に包まれて建っていて、まさに『学生時代』の歌
詞どおりの情景を目の当たりにしたのです。その時は非常に感動しました。傍らにいた他
大学の先生が『このような大学で勉強できる学生は幸せだなあ』とつぶやいているのを聞
き、私もまったく同感の思いでした。その大学に自分が赴任することになろうとは、当時
はまったく思いもよりませんでした。
 その後、いくつかの大学の教壇に立った後、縁あって1971年に本学に赴任し、以来30
年以上もの時間が経っております。赴任前あるいは赴任当時に抱いていた本学に対す
るイメージはいまも裏切られることなく続いております。
           (中略)
 最後になりますが、冒頭で掲げた『学生時代』の歌詞の最後は、次のようなフレーズで
締めくくられております。
    『テニスコート キャンプファイア
        懐かしい日々は帰らず
           素晴らしいあの頃 学生時代
              素晴らしいあの頃 学生時代』
 どうか皆さん、卒業して何年か経ったあとで過去を振り返り、青山学院大学で過ごした
学生時代が自分の人生のなかで一番素晴らしかったと懐かしく思い出すような時期を、
これからの4年間で過ごしてください。これをもって私の式辞といたします。ご入学ほんと
うにおめでとうございました。」

 公開の場における講演や挨拶などにおいて他人の著作物を利用することは多いが、そ
れが①営利を目的とするものではないこと、②聴衆・観衆から料金を受けないこと、③出
演者に報酬が支払われないこと、の3条件を満たしていれば、その上演、演奏、上映、口
述について著作権者の許諾を必要としない(著作権法38条1項)ので、入学式の式辞に
使用する際には著作権が関わることはないといってよい。だが、これがホームページに
載せたり、私の場合のように後日、「青山学報」という校友会機関誌に掲載される場合に
は許諾が必要になってくる。
 私の場合は、学院広報部から相談を受けた際に、いやしくも学問の府である大学が著
作権侵害をするのはまずいので、きちっと手続きを踏むべきだと主張し、それを受けて
事務局はJRRCと相談のうえ所定の使用料を支払ったとの報告を受けている。ところが、
新聞報道によると、京大の場合は「引用」ということで無償で決着がついたようである。
京大の式辞におけるボブディランの詩の利用はかなりの長さに亘っているのに対し、当
方は僅かであるのに使用料の支払いに及んだことから、正直者が損をするのではと、割
り切れない思いがするのは当方の僻みであろうか。

 なお、青山学院大学の青山キャンパスには、現在「学生時代」の歌碑が立っている。私
が学院の常務理事時代になかば強引に作らせたものであるが、親子連れでこの歌碑を
眺めている風景を見るとき、良いことをしたと自讃している昨今である。

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