JRRCマガジン第105号(手紙と著作権)

半田正夫

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JRRCマガジン No.105 2017/7/7
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色とりどりの短冊が吊るされた七夕飾りが街中を優しく彩っています。
今夜は七夕ですね。
皆さまいかが過ごされますか。

さて、
今回の半田先生のコラムは、「手紙と著作権」です。
この頃では書くことが減ってしまった手紙。
その著作物性および派生する権利等、判例を交えてお話しいただきました。

◆◇◆半田正夫の著作権の泉━━━

第49回「手紙と著作権」

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 6月1日からはがき料金が62円に10円値上がりした。このニュースをみながら、
そういえば官製はがきに肉筆で手紙をしたためたことが、最近ほとんどないこ
とに気付いた。なんらかの会合の案内に返事として「出席」「欠席」のいずれか
にマル印をつけるだけの用にしか利用していないなあと思う。最近はパソコン
のメールソフトを利用したり、スマホでLINEなどのメールアプリを使用したりなど
手軽に情報のやり取りをすることができるところから、わざわざ水茎のあと麗し
からざる肉筆にこだわる必要はないという、悪筆の私にとっては好ましい時代
に入ったことを喜ばずにはいられないところである。
 
 ところで、手紙のなかでも、時候の挨拶、転居通知、出欠の問い合わせなど
の日常の通信文とか、品物の発注、代金の督促などの商用文は、型にはまっ
たものが多く創作性は認められないのがふつうであるから、著作物性はないと
考えてよい。しかし、ラブレターとか、人生の悩み相談のようななんらかの考え
や気持ちを表現した手紙は、表現の巧拙に関係なく、一般に著作物として著作
権法の保護を受けるものと考えて差し支えない。
手紙は発信することによって名宛人にその所有権は移転するが、著作者人格
権はもとよりのこと,著作権も当然に名宛人に移転するものではなく、差出人に
留まると考えなければならない。したがって、手紙を受け取った名宛人がそれ
をコピーして配布することは差出人の複製権を侵害するだけではなく譲渡権を
も侵害することになる。それだけではなく、手紙というものはある特定の名宛人
にのみ読んでもらうことを前提として送付されるもので、第三者への公表を予
定していないのがふつうであるから、差出人の同意なしにこれを知人に公表す
ることは、差出人の公表権をも侵害することになるので注意が肝要である。
 また同様に、友人たちから来た私信を集めて出版することも、複製権の侵害
となるだけでなく、公表権の侵害ともなる。したがって、どうしても出版したけれ
ば、差出人すべてから複製の許諾や公表についての同意を取り付けておくこ
とが必要となろう。
 このことは紙に書いた手紙ではなくメールを使用する場合も同様である。メー
ルソフトには転送機能が付いているので、受け取ったメールを簡単に転送する
ことができるが、メールの内容が著作物性を有するものであれば、発信人の承
諾を得ずに転送することは公衆送信権や公表権の侵害となることに注意しな
ければならない。
 なお、手紙についてその著作物性を認めた判例に次のようなものがある。
 三島由紀夫が生存中にある人物宛に送った手紙やはがき15通を、受取人が
執筆した小説「三島由紀夫―剣と寒紅」の中に取り込まれて公表されたので、
三島由紀夫の相続人が複製権と公表権の侵害を主張したという事件で、裁判
所は、「本件各手紙は、・・・特定の者に宛てられ、特定の者を読み手として書
かれたものであって、不特定多数の読者を想定した文芸作品とは性格を異に
する。しかし、本件各手紙には、単に時候の挨拶、返事、謝礼、依頼、指示など
の事務的な内容のみが記載されているのではなく、三島由紀夫の自己の作品
に対する感想、意見、折々の心情、人生観、世界観等が、文芸作品とは異なり、
飾らない言葉を用いて述べられている。」として、本件手紙が著作物性を有する
ことを明らかにしている(東京高裁平成12・5・23判時1725号165頁)。これは三
島由紀夫という一流の作家の手紙のケースであるが、われわれの書いた手紙
であってもまったく同様であることはいうまでもない。
 もっとも、手紙の著作物性が問題となるのは、紙に書かれた表現そのもので
あって、素材として用いられた紙それ自体ではないから、これで紙飛行機を作
って飛ばそうと、鍋敷きに使おうと、はたまたチリ紙として使用しようと所有者で
ある手紙の受取人の自由であることには変わりはない。

 話は変わるが、世界で一番短い手紙というのをご存じだろうか。
 文豪と言われたヴィクトル・ユーゴ―が「レ・ミゼラブル」を執筆して出版した際
、売れ行きを気にした彼は出版社宛に「?」の一字を記した手紙を送ったところ、
「!」という返事が出版社から寄せられたとのことである。これは、「売れている
か」という問いかけに、「爆発的に売れている」との返事を返したことを意味して
おり、これが世界で一番短い往復文書として世に語られているエピソードであ
る。たしかに当意即妙のやりとりで、思わず「うまい」とうなり、座布団3枚あげた
いところであるが、「!」も「?」も、当事者間ではそこに深い意味合いが込めら
れていたものであろうとも、表現自体は単なる記号に過ぎず、著作物性が認め
られないのは当然というべきであろう。

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編集責任者 JRRC副理事長 瀬尾 太一

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